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白鯨 MOBY-DICK の商品レビュー

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2021/05/05

ジョン万次郎が、白鯨のピークオッド号に乗り込んでいた、という風呂敷広げる物語。 万次郎が少年の頃に見た鯨との戦い。半九郎から語られた鯨との戦い。エイハブ船長をはじめとして、鯨に心を奪われた人たちとの日々。 己の心の内にある、抑えきれない何かが沸騰してゆく様が、夢枕獏の小説の肝...

ジョン万次郎が、白鯨のピークオッド号に乗り込んでいた、という風呂敷広げる物語。 万次郎が少年の頃に見た鯨との戦い。半九郎から語られた鯨との戦い。エイハブ船長をはじめとして、鯨に心を奪われた人たちとの日々。 己の心の内にある、抑えきれない何かが沸騰してゆく様が、夢枕獏の小説の肝。 恋と同列かそれ以上に、人を狂わせるものとしてぐつぐつと煮えたぎってゆきます。同列というよりも、他者に対して、手に入れたい同化したいという気持ちが混ざり合ってゆく様か。 「餓狼伝」も「獅子の門」も、その精神世界を内包した人間は、狂気を薄皮一枚で隠し日々を過ごしている。狂気と正気の均衡がとれている、とれているかのように見せている。狂気が上回ってしまうと、半九郎やエイハブ船長のようになってしまうのか。ピークオッド号最後の時、彼らの精神が昇華せずに残されてしまったことが苦しい。 半九郎もエイハブ船長も、煮えたぎったものを昇華できずに終えてしまった人生。 読後に解放感がなかった、少なかったかな。ただ、白鯨倒して終わりという展開だと、淡白と感じたと思う。 この解放できない感情を抱えて生きてしまったのが半九郎。 最期に解放寸前まで漕ぎ着けたけど、新たに抱え込んでしまったのがエイハブ船長か。

Posted byブクログ