一私小説書きの日乗 堅忍の章 の商品レビュー
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今年はずっと西村賢太の日記を読んでいるが、既刊の日記としてはラストの1冊をついに読み終えた。2022年に亡くなっているので、死が近づいていると思うとなんともやるせない気持ちになりつつ、この時点ではいつもと変わりない日乗がそこにあった。 過去の日記作品と基本的には同じでひたすら原稿進捗、飲み食いの記録となっている。ただ本著から神経痛の影響で原稿を落とす量が増えており身体にガタがきている様子が伺える。病院自体はそこまで好きではないようだし無頼漢で健康に頓着していないイメージがとなんとなくあった。しかし舌の具合が悪くなったときにいろんな病院を巡っているので「太く短く生きればいい」というタイプではなさそう。ゆえに急死という結末は辛いものがある。 コロナ禍の序盤の2020年の様子が収められているのも貴重で、スマホを持たずネットを積極的に使わない50代独身男性がどのようにコロナと向き合っていたのかが垣間見える。自身でも書いているが決して傍若無人ではなくエチケットを大切にする人であり、コロナを「ただの風邪」などと嘯くことなく恐れながら生活している様子がこれまた意外だった。またマスク入手が難しかったころ、友人がおらずマスクを誰にも譲ってもらうことができないと嘆いている描写が切なかった。日記を読んでいる限りは友人がいないわけではないが、困ったときに助けを求められる深い付き合いの存在がいないのかもしれない。とはいえ仕事周りの人達とは過去の作品と同様に非常に濃い関係を構築している。今の作家でこういったタイプの人はいるのだろうか。この世にいないと思うと寂しい気持ちになるが、亡くなるまでの残りの日記がリリースされて欲しい。
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昼夜逆転した生活で、暴飲暴食、執筆、雑誌編集者と会食、時々風俗、時々古本屋巡り。ただこれだけなのだが面白い本だった。卒読。
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シリーズ第7弾ともなると、この「日乗」を読んで著者の生活を定期観察していないといけない気にも何故だかなってくる。 舌に痛みが起こり通院している時期にも買淫をし、「要心の為に、舌は使わず。」(令和元年十二月二十一日)との記載に大笑い。これだから読むのを止められないし、この「日乗」はずっと続いてもらいたい。
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