あしたの官僚 の商品レビュー
過重な労働を強いられる若手官僚の現場をリアルに描き出し、起伏に富むストーリーに仕立てた官僚小説。 主人公・松瀬尊は30歳の厚労省キャリア技官。小説「官僚たちの夏」に憧れ念願の官僚となったが、その実態は深夜までの残業に追われるブラック企業顔負けの現場だった。 ゆとり世代で無責任、能...
過重な労働を強いられる若手官僚の現場をリアルに描き出し、起伏に富むストーリーに仕立てた官僚小説。 主人公・松瀬尊は30歳の厚労省キャリア技官。小説「官僚たちの夏」に憧れ念願の官僚となったが、その実態は深夜までの残業に追われるブラック企業顔負けの現場だった。 ゆとり世代で無責任、能力不足なノンキャリの後輩、パワハラすれすれの女性直属上司、キャリアだが、定年間近のヤル気なし先輩に囲まれ、仕事が集中、孤軍奮闘の毎日。 国会議員からの突き上げ、関係省庁との板挟み、国民からの苦情電話に忙殺され苦悶する日が続いていた。 そんな松瀬に降りかかったのは新潟県で発生した謎の公害病への対処という厄介な問題。地元選出国会議員や地元自治体のトップとの調整、住民の苦情やマスコミ対応に孤立無援で対処し、松瀬は肉体的にも精神的にもぼろぼろになり、付き合っていた恋人にも振られてしまう。精神的に危なくなり、もうろうとする場面では、自分もその立場にいれば絶対そうなるだろうと思うほどのリアリティを感じた。同時に、近年、官僚志望者が減ってきている背景が理解できた気がした。 反面、松瀬が所属する調査課の職員たちの身勝手さがあまりにも現実離れしているのに加え、物語の終盤で彼らが突然豹変する場面は唐突さを感じた。起承転結がわかりやすく、どんでん返しの面白さもあるのだが、「転」の部分に持っていくのが拙速でやや強引であり、設定の薄っぺらさを露呈した感があった。
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