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ミランダ語が生まれたとき の商品レビュー

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2022/10/31

ミランダ語とはスペインと国境を接するポルトガル辺境のごく限られた一地域で話されることば。著者は外語大卒業後にスペイン、ポルトガルの民間企業で勤めたのち、研究者となったそうな。 本書は単に言語学だけでなく、歴史・地理・民俗などの側面からもこのことばを捉えようとしているので、研究書...

ミランダ語とはスペインと国境を接するポルトガル辺境のごく限られた一地域で話されることば。著者は外語大卒業後にスペイン、ポルトガルの民間企業で勤めたのち、研究者となったそうな。 本書は単に言語学だけでなく、歴史・地理・民俗などの側面からもこのことばを捉えようとしているので、研究書としても勿論だけど、サブ・タイトルの示すとおり歴史を主軸とした読み物としても十分楽しめる。言語学素人にはチンプンカンプンな用語(語頭流音の口蓋化とか無声摩擦前部硬口蓋音音素とか ^^;) )によるミランダ語の言語学的特徴が巻末にまとめてあって、本文にまったく入っていないのが大変有難い(研究者は物足りないかもしれないけど)。本文中の言語学用語で分からなかったのは「クレオール」くらいか(以前読んだD・ロングの本に分かりやすい解説があったはずだけど忘れた)。 この日本では名もなきことばが、ポルトガル語の「方言」から「言語」になったのは、一種の歴史的・社会的なタイミングの妙で、ある意味ドラマティックと言ってもいいような気がする。奇しくも、この言語が「広域的な言語的特徴の重なり合い」であるという性質とシンクロしているかのような…。 意外だったのは、このミランダ語は話者が民族独立を目指すナショナリズムと結合していない分、まさに話されているその地域に後継話者がいない、それは経済的な理由による都市への人口流出や移民、ひいてはコミュニティ崩壊が言語保全における大きな課題である、ということ。未開の地の言語もそうなのかもしれないけど、もはや言語学的云々、だけでは解決しない学際的なアプローチが必要なんですね。

Posted byブクログ