こじらせ竜騎士王子の溺愛指南 の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
『きまじめ竜騎士』は未読だったが、この作品だけでも独立していたので特に問題なく読めた。 それにしても、これで丸くなったと言われる王太子さま、以前のシリーズではどれだけ拗らせまくっていたのだろうか。 拗らせているというか、それが彼の処世術だったのが哀しいところ。 万年次点と蔑まれ、不出来な王太子として見られ続けたら、そりゃ性格も矯正されると思う。 (なまじ前作を読んでいないから、きまじめな竜騎士さまより、王太子さまの方を贔屓してしまう) それでも、根の優しさが失われていなかったことはよかったと心底思う。 その彼の本来の良さを引き出したというか、思い出させたのが、ファリスだったのは運命だったのだろう。 彼女は年齢の割りに泣き虫で、よく泣いてばかりいる。 ただ、さもありなん、彼女の父親は王太子を陥れた(他にも罪状はあるが、ともかく)罪人。 彼女はその娘。 よりによって王太子さまの宿敵の娘という、結ばれる筈のない立場。 だから、例え王太子さまの隠れていた優しさに触れて好意を持ったとしても、素直に好きと言える立場ではないことを分かっていた(その現実でまた泣いてしまうという悪循環) でも彼女にとっても王太子さまは、罪人の娘としてではなく、一人の女性として扱ってくれる唯一の相手。 王太子さまにとっても、彼の肩書を抜きにして、一人の男性として彼のことを心配し慕ってくれるのはファリスだけだった。 この二人が互いに結ばれずして、お互いの幸せはきっと掴めなかったと思う。 素直に祝福してもらうには難しい二人かもしれないが、和解が成立した竜騎士さまも味方だし、国王夫妻も何だかんだで受け入れてくれた。 他人の気持ちをより理解できるようになった王太子さまが最愛の人と一緒になれたのだから、きっとこれから先の困難も乗り越えていけるだろう。 それでも文句を言う奴らは、その実力を持って黙らせればいい。 きっと今の彼ならいい王様になれるだろう。 そう信じている。
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