カーボンニュートラル実行戦略:電化と水素、アンモニア の商品レビュー

戸田直樹(著者),矢田部隆志(著者),塩沢文朗(著者)

2022/11/10

執筆者は東電関連を中心とした企業家。そのためもあり、実務的で専門性も高いが、論旨が明確で分かりやすい。日本の再生エネルギーは国際的には割高。そのため再生エネルギーが安価な海外で水素キャリアを製造し、輸入することが経済性を発揮する。その水素キャリアとしてはアンモニアが有望である。この点を考察しようというのが本著。

日本にとっての水素エネルギー導入の最大の意義は、再エネ資源に豊富に恵まれた地域から再エネを大量に導入する手段となること、だと。

水素は体積エネルギー密度が小さい気体であり、マイナス−253度と言う極低温まで冷却しないと液化しないことから輸送や貯蔵が容易ではない。そのため水素エネルギーキャリアを利用して導入することがポイント。水素エネルギーキャリアはメチルシクロヘキサン、アンモニア、メタンなどが候補だが、アンモニアの体積あたりの水素密度は比較的大きく、また常圧下でマイナス33度で液化。流通規模としても化学品の中では最大規模で、液化条件が液化石油ガスLPGとほぼ同じなので輸送や貯蔵にLPGのインフラを利用することも可能。また水素を取り出すことなくそのままアンモニア燃料としても使える。デメリットとしては毒性や可燃性、NOXの排出があるが、極めて期待が高い。

東電の執筆者だからこそ、原子力への記載の有無、記載のされ方が気になった。最後に少しだけ記載がある。自然に頼ったエネルギーに依存するならば、レジリエンスの確保と言う意味でも原発の検討が必要だと思う。