システム思考で地理を学ぶ の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
地理学にシステム思考 という ジャンルとツールの組み合わせに興味を持ち購読。 結果、あまり革新的でもなく、 システム思考の根幹には触れていない、 「それっぽくやってみた」という感じの書だ。 だが、今後の教育に大事な視点ではあると思う。 以下の点で、改善の余地があると思う。 ●”推測された因果関係図”の域を出ていない。 つまり、因果関係が必ずしも検証されているわけではなく、 学生が、刷りこまれた情報や印象をもとに 「何となくそれっぽい」という推測で 物事の因果関係を結んでいる。 本当にその因果関係が正しいと科学的に検証されているのであればよいが、 そうでない事柄どうしの間で、因果関係をつないで思考を進めてしまうのは、 社会や自然への理解においてミスリードする危険がある。 ●システム思考だとしているが、 システムダイナミクスの本質である、 「フローの操作によってその水準を調整するメカニズムが 付いているストックの集合体」 や、 「バランス型フィードバックループと 自己強化型フィードバックループの組み合わせで 持続するシステム」 等に関するアプローチがない。 簡単なモデルで表せる部分だけでも、 数式とグラフでストックとフローの変動の関係を 学生が見られるようにすれば、システム的アプローチの 本質を体感できるだろう。 ●まず、学生の身近な生活環境内で実証された、 比較的閉鎖的なシステムを例にした方が良いと思う。 ドネラ・メドウズ氏も言っている通り、 ループ、フロー、ストックを持つシステム挙動は 我々の周囲のあらゆるところに見られる。 いきなりグローバルな問題を考えても、 実感がわかないだろう。 本書は、テーマは良いと思う。
Posted by
- 1