二重のまち/交代地のうた の商品レビュー
震災を生き延びたことについて、山が削られ土地が嵩上げされることについて、100人いれば100通りの思いがあって、きっとどれもが ”ほんとう” なんだと思う。 本書は、そうした思いに耳を傾け、ひとりよがりでない物語として昇華されており、胸に刺さるがじんわりあたたかい。 復興支援...
震災を生き延びたことについて、山が削られ土地が嵩上げされることについて、100人いれば100通りの思いがあって、きっとどれもが ”ほんとう” なんだと思う。 本書は、そうした思いに耳を傾け、ひとりよがりでない物語として昇華されており、胸に刺さるがじんわりあたたかい。 復興支援に直接関わらない人たち(わたしも含め)が忘れない・自分ごととして考えるために、このような物語が必要だと思った。
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春夏秋冬の物語は、とても美しくて、切なくて、優しかった、なんだろう、言葉にできない複雑な感情、けれど決してネガティブではない感情を読み手に与える話だと思う。 交代地のうたのエピソードは、震災を経験していない旅人たちがある被災者のもとを訪ねてきたときの話を短編集的な形にしたもので...
春夏秋冬の物語は、とても美しくて、切なくて、優しかった、なんだろう、言葉にできない複雑な感情、けれど決してネガティブではない感情を読み手に与える話だと思う。 交代地のうたのエピソードは、震災を経験していない旅人たちがある被災者のもとを訪ねてきたときの話を短編集的な形にしたもので、自分自身震災を経験していない非当事者であるだけに、当事者視点で書かれたこのエピソードたちは、彼らの想いを知れるような気がして、すごくおもしろかった。 個人的には、前半の二重のまちの作品以上に、後半に付録されている瀬尾さんの日記的な歩行録がとても印象に残った。彼女の想いを詳細に感じ取れる、二重のまちの作品の裏にある瀬尾さんの想いを知ることができる、震災復興について、瀬尾さんの想いの綴を通して、自分も考えさせられる、そんなものだった。 この本は、震災を経験していない非当事者である自分が、本を通して、何かを感じ取り、継ぎ手の一員として当事者になれるきっかけになれる、そんな本だと思う。
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ネットで本を買うことも多いけれど、やはり本屋でのセレンディピティは欠かせないということで行った本屋で遭遇した1冊。表紙の絵が印象的だったのと、以前に読んだ「あいたくてききたくて旅にでる」の著者である小野和子さんの帯コメントで買ってみた。とても興味深い1冊に出会えてよかった。 ...
ネットで本を買うことも多いけれど、やはり本屋でのセレンディピティは欠かせないということで行った本屋で遭遇した1冊。表紙の絵が印象的だったのと、以前に読んだ「あいたくてききたくて旅にでる」の著者である小野和子さんの帯コメントで買ってみた。とても興味深い1冊に出会えてよかった。 まず構成からして特殊。最初に色鮮やかな挿絵がたくさんある詩があり、次は小説、最後に歩行録という三部構成。抽象度が高い順番に並べられていて、なんとなく津波や東日本大震災のことなんだろうなと察しはつきながら読み進めていくと、最後には著者や著者が話を聞いた各個人の超ミクロな視点にまで到達する仕掛けになっている。同じテーマについて異なるアプローチで表現、思考、伝達していく過程を逆再生しているようでオモシロかった。抽象度が後半にかけて上がっていくと逆に冷めてしまいそうなので、個人的にはこの順番が良かった。一通り読んでもう一度、詩と小説を読んでさらに噛み締めることができる。 この本のテーマである「二重のまち」は決して東日本大地震で被害を被った人だけの話だけではない。災害が後を絶たない日本では全員が当事者になる可能性を秘めている。災害が起こったあとの復興の過程の話であり、その過程で失われていくものに注目しているところがとても勉強になった。(最近の熱海で問題になっていることは日本のどこでも起こりうることを強く感じた)メディアは自分たちの思い描いたストーリーを語っていくが、そこに生きているのは生身の人間であり各人のストーリーが存在する。復興と一口に言っても何をゴールとするのか?元通りにするのか?新しく街を作るのか?正論だけでは片付かない。人間としての逡巡が3つのフォーマットすべてから伝わってきた。考えることをやめたら終わりだなと思う。 やはり最後の歩行録が日記好きとしては好きだった。陸前高田を中心に津波被害にあった方々の生活が見えてくるから。記録の期間は2018-2020の3年間なんだけど、2011年のボランティアから著者は10年間寄り添ってきていて、その視点からの論考もかなり興味深くパンチライン連発だった。 都市にいると、誰のどんなエピソードにも、あーわかる!といった感じで共感は可能なのだけど、お互いのライフスタイルや思想が異なることが前提となり過ぎていて、他者と何か(感情でも環境でも)を共有している感覚は持ちにくい "当事者"は、さまざまな状況要因や情報によって、いろんなことを諦めながら生活を続けていく。それが、生き抜くための技術だから。でも。そういう"当事者"の諦めを集積していくだけでは、次の災害の"当事者"も同じ諦めを強いられることになってしまうかもしれない。 被災者の認識に関する話は繰り返し登場しているのも印象的だった。自分自身も阪神大震災の被災者で、以前以後では人生が180度変わったといっても過言ではない。当時何も我慢していた意識はないけれど、子どもながらに尋常ならざることに巻き込まれている感覚はあって、そのことを思い出したりもした。誰もが被災者になるかもしれないし、被災者と話をすることもあるだろう日本において必読の1冊。
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6年前に著者が書いたこの物語は、絵画や聴き取りと朗読によるワークショップとそれを記録したドキュメンタリーやインスタレーションとなって広がっていて、ここ3年のTwitterのログと共にまとめられているこの本を読むと、物理的な復興と心の復興の間にあるものについて考えてしまう。10年と...
6年前に著者が書いたこの物語は、絵画や聴き取りと朗読によるワークショップとそれを記録したドキュメンタリーやインスタレーションとなって広がっていて、ここ3年のTwitterのログと共にまとめられているこの本を読むと、物理的な復興と心の復興の間にあるものについて考えてしまう。10年といっても復興どころか震災すら終わっていないと感じることが最近あるが、時が過ぎたからこれで終わりというわけではなく、これからも長く続くひとの営みの一部分を刻んでいるのだろうと感じた。
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二重のまち 著作者:瀬尾夏美 タイムライン http://booklog.jp/timeline/users/collabo39698 交代地のうた
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