仮面の陰に あるいは女の力 の商品レビュー
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『若草物語』の作者として知られるルイザ・メイ・オルコットがA・M・バーナード名義で発表した「煽情小説(センセーショナル・ストーリーズ)」のひとつ。 末娘ベラのガヴァネスとしてコヴェントリー家を訪れたジーン・ミュア。以前の職場でトラブルに見舞われたという噂はあったものの、ガヴァネスとしての賢さとそつの無さ、そして彼女自身の美しさに申し分は無い。やがて、当初ジーンに無関心だった長兄ジェラルドは異性として惹かれ、ジェラルドを慕ういとこ ルシアはジーンを疎み、次兄エドワード(ネッド)は焦がれ、コヴェントリー夫人とベラ、おじのサー・ジョンはすっかり彼女を信頼する。しかし彼女は大きな秘密と野望を抱えていた……。 和気藹々とした一家を魅了し、侵掠し始める来訪者ジーン・ミュアの本性と、題のような“女の力”を駆使した狡智は、まさに悪役。そのあくどさと強かさには「阻止されろ! 失敗しろ!」と思わずにはいられなかった。同時に「どうか成功してくれ!」と願わずにいられぬほどジーンのキャラクターが魅力的。ジーンの謀の成否とコヴェントリー家の命運、どちらも良い結果を迎えてほしいと思わせるストーリー展開も素晴らしい。ルイザ・メイ・オルコットと幻戯書房の「ルリユール叢書」という二つの新たな推し候補が見つかった、素敵な読書となった。
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2021.10.31 市立図書館 新聞書評欄で興味を持ち、ずいぶん前に予約した本。 「若草物語」をはじめ、古き良き少女小説(家庭小説)でおなじみのルイザ・メイ・オルコットによる、当時は別名義(A. M. バーナードという男性名)で発表されていたまったく違うタイプの小説。 解題で教...
2021.10.31 市立図書館 新聞書評欄で興味を持ち、ずいぶん前に予約した本。 「若草物語」をはじめ、古き良き少女小説(家庭小説)でおなじみのルイザ・メイ・オルコットによる、当時は別名義(A. M. バーナードという男性名)で発表されていたまったく違うタイプの小説。 解題で教わるまでもなく「ジェーン・エア」を彷彿とさせる家庭教師「ジーン・ミュア」がぞくぞくするような手練手管で自分の目的をはたし狙っていたものをしたたかに手に入れる描写は、これほとんど詐欺か洗脳じゃないか、とそらおそろしくなったけれど、言葉の技術や計算された演技にはそれだけの力があるのだとあらためて思い知らされる。 これが半沢直樹だとみんな「よくやった!」と溜飲を下げるのだろうけど、この小説でコヴェントリー家の人びとが気の毒すぎる気がしてしまうのはやはり男女の非対称なのだろうか(そもそも半沢直樹的なものがあまり好きではないのだが)。 言葉でつくりだされたありもしない幻影にまどわされ、分断されたり感情を動かされたりしてはいないか、とときどき立ち止まってわがみを振り返らねばと思う一方で、誰かの意図した流れに乗せられて物事が動いていくのをとどめる力はないなあと無力感を感じもする。特に今は、メディアの力でそういう流れのスピードと大きさがあっというまに増幅されしまうから… 200ページの物語の後の、50ページに渡るオルコットの年譜と訳者による解題が読み応えあり。彼女自身の人生がなかなか興味深いので、モンゴメリや他の女流作家・翻訳家も含めもうちょっといろいろ読んでみたいと思った。
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面白い。オルコットは匿名でスキャンダラスな扇情小説を書いていたんだなぁ。なんで隠す必要があったのか。時代背景もあったのだろうけど。今日では隠すことはあまり考えられないし、隠してもバレるから隠せないよね。
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ルイザ・メイ・オルコットといえば、やはり『若草物語』。でも家計を助けるために、そして楽しみながら「扇情小説」と呼ばれるこの本のようなジャンルの小説も書いていたとのこと。 物語の最初で、いきなりジーンの「正体」が明かされて、そこからは展開に目が離せなくなる。 「こっわー」と思いながら読んだけれど、詳しい解説を読み、「自分の力、言葉の力を持って、社会的地位も経済的な力もなにもないところから幸せを勝ち取った物語であるとも考えられる」(訳者解説p.263)である。 『若草物語』も読み直してみたくなる。
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主人公ジーン・ミュアはジェイン・エアのパロディと思う。 めちゃくちゃ面白かった!! ジェインよりずーっとずーっと強かなジーン・ミュアのことも好きだ。 オルコットもシャーロット・ブロンテに憧れていたって解説に書いてあった。二次創作みたいな感じもあるのかも。 そういう意味でも面白くて...
主人公ジーン・ミュアはジェイン・エアのパロディと思う。 めちゃくちゃ面白かった!! ジェインよりずーっとずーっと強かなジーン・ミュアのことも好きだ。 オルコットもシャーロット・ブロンテに憧れていたって解説に書いてあった。二次創作みたいな感じもあるのかも。 そういう意味でも面白くて当たりでした。ジェイン・エア読んでると余計に面白いと思う。
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