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ニムロッド の商品レビュー

3.3

32件のお客様レビュー

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    1

  2. 4つ

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  4. 2つ

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2024/05/13
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

初上田。芥川賞受賞作。僕、中本、田久保女史、そして"ニムロッド"こと荷室仁。道中繰り返し紹介される「ダメな飛行機コレクション」がすごく好きだ。きっと何かの暗喩なんだろう…。不完全な人間か、それとも紹介しているニムロッド自身を指すのか——。三者三様の結果だが、中本の未来(新たな仮想通貨の作成)のみ、希望に満ちている気がする…。

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2024/04/15

人類の営みに乗れなくなる、しかし逃れきれない。 自分の人生を生きる、または置き換え可能。 失敗できる。

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2024/02/11

バベルの塔、ビットコイン、失敗した飛行機…それぞれのモチーフの組み合わせは選び取られてるなと思うけどストーリーとして腑に落ちるとか面白かったかと言うとそこまでではなかった。

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2024/01/29
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

本作に通底しているテーマの一つには「存在証明」があると思う. 無から生み出され,存在が記述され,多くの人に求められることでその価値を保つBTCをはじめ, 「ダメな飛行機」(=飛べない飛行機)という本来の目的を果たせない造形物や 子孫繁栄を命題とする動物の一種でありながら中絶を行う田久保紀子は本来の役割を果たせないものの象徴であり,その例示である. 感情の伴わない涙も,ただ堆く高さだけを誇る塔も. 果たして,本来の役割を果たせないものたちは無価値なものなのだろうか. 本作においてこれら全てに共通して投げかけられるのは「存在」と「価値」の関係に関する問いである. 「ダメな飛行機コレクション」の飛行機は誰がどう考えたってジャンクである.実際,作中でも鉄屑以下と形容される.しかし,nimrodや田久保,中本からは「欲」され,「面白」がられ,そこには本来の文脈と違えど価値が生まれている. これはBTCの価格が天井知らずに高騰していくメカニズムもこれに通ずる(中本がマイニングしなくても誰かがマイニングしてその価値を担保する). これらを以てして私は 「凡ゆる事象において,価値は元々規定されたものではない(≒本人の意図とは関係なく何処かの誰かによって価値は付与され得る)」であるため,無価値なものは存在し得ないというポジティブなメッセージを受け取った気がする. 飛べない飛行機やBitcoinそれ自体には本来的な価値を果たせないが,無価値ではない. 中絶をする判断を行った女性も誰にも読まれない小説もまた然りだし,中本の感情を伴わない涙は人を癒す. ただ,この文脈でバベルの塔やドロドロ人類を読み解くには未だ読みが足りない(or誤解している)ようにおもうので,日を改めて読み直したい.

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2024/02/05

読みにくさでいうと少しだけ苦手な部類ではあるけれど、思っていたよりも読めた 駄目な飛行機がなかったら〜からのくだりをすきだなと思う自分はどこまでも普通だなと思った

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2023/12/25

ふっつーーに面白かった。 自分がエンジニア系なのですらすらっと内容が入ってきたのが、逆に目新しさがなかったのかも。。。 ビットコインと小説、なんだか正反対だけど、無から有を生み出すところは同じことなんだよなぁ。

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2023/08/19

仮想通貨・ビットコインのマイニング(採掘)や実用化に失敗した「駄目な飛行機」たち、そして高くそびえる塔といったモチーフを反射板みたいにつかいながら語られる物語。 デジタルの圧倒的な大波をざぶんと浴びせられ、そののちデジタルの破片をたくさん身体に受けたままアナログの立場で書いた小...

仮想通貨・ビットコインのマイニング(採掘)や実用化に失敗した「駄目な飛行機」たち、そして高くそびえる塔といったモチーフを反射板みたいにつかいながら語られる物語。 デジタルの圧倒的な大波をざぶんと浴びせられ、そののちデジタルの破片をたくさん身体に受けたままアナログの立場で書いた小説、といった感覚でした。なんていうか、乾いていてシンプルで、それでいて割り切れないような生々しい複雑さの結び目のようなものがある。 主人公の中本哲史はIT企業の社員で、新設された採掘課の課長。運営するサーバーコンピュータの空きを使ってのビットコインの採掘を命じられる。主人公の名前はビットコインの創設者とされるナカモト・サトシと同じ名前です。このリンクがまた、この小説の乾燥した読み味に一役買っているような気がします。 恋人の田久保紀子は大手外資企業で、人には話せない企業秘密を抱えながらシンガポールへ飛んだりしながら大きな仕事をしている。 友人であり同じ企業の名古屋支社に勤務するニムロッドこと荷室仁は、小説家志望で新人賞の最終選考で3度落ちたことで鬱病をわずらい、そこからいくらか回復した状態で物語に登場する。 この中本哲史を中心としたこの三人だけの物語です。遺伝子のコードやプログラムのソースのように、小説がそれを読む人の心になにかを記載する作用を期待して小説を書いているのではないか、という仮説があります。それは夢想なのだろうけれど、この空っぽの世界を支えているのはそういった行為かもしれない、と。この部分に、僕はかなり同意しましたね。 150ページほどの中編ですが、その文体による読み心地が僕には好ましかった。帯に、「心地よい倦怠と虚無」とありますが、その倦怠や虚無は、この世界をそれまでよりも少しだけわかってしまったからこそ宿る種類のものなのではないか、と思いました。 著者の、他の作品もそのうち、読んでみたいです。

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2023/06/21
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

直木賞・芥川賞の受賞作を今年から読んでいます。 最近は、ずっと直木賞を読んでいたので、久しぶりの芥川賞。 う~ん、よくわかりません。 登場人物は、3人。 ビットコインの作者と同じ名前を持つ中本哲史は、社長の指示でビットコインの採掘を業務につく。 恋人の田久保紀子は、前の婚姻時に妊娠しダウン症の検査をして子どもを産まないことを決意、それが原因で離婚した過去がある。 中本の元同僚、荷室仁(通称ニムロッド)は、小説家の夢の破れ、鬱になり名古屋支店の移動。中本に、謎の文章を送ってくる。 主人公の中本と2人の交流と、ニムロッドが送ってくる文章や小説を軸に、話が展開していく不思議な物語。 謎の文章は、最初、ダメな飛行機を列挙していた。 日本の特攻隊用の飛行機:桜花が書かれていて、これに意味を持たせるのかと思いきや、そうでもない。 そのうち、小説が書かれ… 主人公ニムロッドが高い塔を建てて、その屋上に、ダメな飛行機をコレクションしていく。世の人間は、不死を手に入れている。とうとう、買えるダメな飛行機が無くなる。 飛行機の売人は、言う。「人間は個であることをやめ、生産性を高めるために、個をほどき一つに溶け合ってしまった。より強く高く長く生き続ける欲望を達成するために、あのファンドと一体になった(要約)」 これって、人間の欲望を突き詰めると、滅びていくというのを示唆しているってこと?う~ん、わからない…。 解説の中で、「ニムロッド」は、旧約聖書の登場人物で、バベルの塔の建設を命じた王とされると書かれている。 文学を理解するのは、様々な知識がいるのか…う~ん、難しい…。 小説読了186冊目。ブクログ内で。

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2023/02/15

ニムロッド 上田岳弘 中本はサーバー運用会社に勤める。 ある日社長からビットコインの採掘する課の課長を任される。 そんな彼にはニムロッドという同じ会社の名古屋拠点で働く同僚がいる。彼は小説を書いている。そしてニムロッドは中本に駄目な飛行機コレクションのメールを日々送ってくる。執...

ニムロッド 上田岳弘 中本はサーバー運用会社に勤める。 ある日社長からビットコインの採掘する課の課長を任される。 そんな彼にはニムロッドという同じ会社の名古屋拠点で働く同僚がいる。彼は小説を書いている。そしてニムロッドは中本に駄目な飛行機コレクションのメールを日々送ってくる。執筆している小説も送ってくる。 中本には田久保という彼女がいる。彼女は離婚歴あり。子供をおろした経験もある。 3人を繋ぐのは中本が左目から流す涙の症状。 中本とニムロッド、中本と田久保。交互にやり取りが描かれている。その交互の移り変わりにある交差点が文章で表現されている

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2022/11/09

終始、無機質でドライでモノクロ、虚無の漂う、そして残酷なリアルさがある物語だった。 読み進めるうちに、実態としての人間が薄らいでいき、何か巨大なものに取り込まれていく危うさを覚えた。 「人間とは何か」 「すべてを手に入れたとき、人間は幸せになれるのか。人間はなぜ人間として生き...

終始、無機質でドライでモノクロ、虚無の漂う、そして残酷なリアルさがある物語だった。 読み進めるうちに、実態としての人間が薄らいでいき、何か巨大なものに取り込まれていく危うさを覚えた。 「人間とは何か」 「すべてを手に入れたとき、人間は幸せになれるのか。人間はなぜ人間として生きていられるのか」 サクッと読み終えたけれど、後から、じわじわと迫ってくる。 私たちが生きている世界も、もしかしたらもう既に何か得体のしれない大きなものに飲み込まれつつあるのかもしれない。

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