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災後日本の電力業 の商品レビュー

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2023/05/06

エネルギー産業の専門家による、日本の電力の在り方について述べた本。主に電力自由化と原子力発電、再生可能エネルギーについて掘り下げている。政府、行政機関、事業者の立場をよく理解したうえで、精緻に研究されているが、後半は前著『エネルギーシフト』と同じ内容であった。勉強になった。 「...

エネルギー産業の専門家による、日本の電力の在り方について述べた本。主に電力自由化と原子力発電、再生可能エネルギーについて掘り下げている。政府、行政機関、事業者の立場をよく理解したうえで、精緻に研究されているが、後半は前著『エネルギーシフト』と同じ内容であった。勉強になった。 「電力自由化と原子力発電とのあいだには、二重の原理的矛盾が存在する。第1の矛盾は、電力自由化が市場メカニズムの導入を基本とするものであるのに対して、原子力発電には国家介入が不可避である点にある。(立地確保問題と使用済核燃料の処理問題には国が関与せざるを得ない。)第2の矛盾は、電力自由化によって競争の当事者となる電力会社には他社と異なる個性的な経営行動が求められるのに対して、原子力開発を推進するためには電力会社が一枚岩的な行動をとらざるをえない点にある」p50 「(電力自由化の後退)2000年代半ばから強調されたのは、エネルギー・セキュリティの確保→原子力発電の重視→原子力投資を抑制する電力自由化の問題視→電力自由化の後退、という論理的連関であった。しかし、このような想定は、妥当なものとは言えない。真に強調されるべき論理的連関は、電力の自由化の進展→電力会社による経営の自立性の再構築→電力会社の強靭なエネルギー企業への成長→エネルギー・セキュリティの確保、というものである。後者の理論に立脚すれば、電力自由化の後退は、むしろ、エネルギー・セキュリティを危うくするものだと言うことができる」p53 「原子力安全・保安院は、2006年の時点で東京電力福島第一原子力発電所の敷地の高さを超える津波が来た場合には全電源喪失に至ることについて、また、土木学会評価を上回る津波が到来した場合には海水ポンプが機能喪失し、炉心損傷に至る危険があることについて、東京電力と認識を共有していた。しかし、原子力安全・保安院は、津波対策について、東京電力が対応を先延ばししていることを承知していたが、明確な指示を発しなかった。その背景には、同院が津波想定の見直し指示や審査を非公開で進めており、記録も残しておらず、外部には実態がわからなかったという不透明な監督方式があった。また、津波の高さを評価する土木学会の手法が、電力業界による深い関与という不透明な手続きで策定されていたにもかかわらず、原子力安全・保安院はその内容を精査せず、津波対策の標準手法として用いてきたことも問題であった」p84 「LNGの調達コストを引き下げるためには、次の5つの取組が必要である。①原発や石炭火力という選択肢を放棄しない。「原子力をやめる」「石炭火力をやめる」と言えば、我が国は、LNG価格をめぐる交渉で足元を見られる。②海外での「日の丸ガス田」の開発を推進する。③北米でシェールガスをまとめ買いする。④世界最大のLNG輸入国である日本と第3位の韓国が連携し、バイイング・パワーを強化する。⑤LNG輸入の約7割を占める長期契約を更新し、取引条件をより有利なものに変更する」p141 「IEAの2016年のデータに基づく試算によれば、中国・アメリカ・インドの3か国に日本の石炭火力発電のベストプラクティスを普及するだけで、世界のCO2排出量は年間11.7億トンも削減される(日本の2013年排出量の83%に相当)」p145 「(送電線は儲からない)分散型電源の普及や広域連係の拡充が求められるこれからの日本で、送電線がボトルネック設備になることは間違いない」p148

Posted byブクログ