NAM総括 の商品レビュー
柄谷行人が提唱した新しい社会運動NAMに当事者として参加した著者による運動(の挫折)の総括的記録。当時リアルタイムで関心を持ってみていた――時間があれば会員になっていたかもしれない――について、愛憎が入りまじった記述が続く。アソシエ21からNAMへの移行は当時傍目にもよく分から...
柄谷行人が提唱した新しい社会運動NAMに当事者として参加した著者による運動(の挫折)の総括的記録。当時リアルタイムで関心を持ってみていた――時間があれば会員になっていたかもしれない――について、愛憎が入りまじった記述が続く。アソシエ21からNAMへの移行は当時傍目にもよく分からなかったが(あまりにも唐突で何があったのかと思った)、本書でやっと経緯が理解出来た。理念と人、理念と解釈、自分では動かず責任も取ろうとしないが口だけは出す評論家的傍観者と運動の場を作る実務を担った者、自分こそがこの「場」を支えていると思い込んでしまった者との分裂…。組織を動かし、継続させていく上での一般的な問題がやはり躓きの石になっていたのだ。それから、著者は明示的には書いていないけれど、NAM周辺のボーイズクラブ性も挫折の一因だったのだろうとも思う。 本書の最後に収められた「補章」を読むと、著者のクレバーさと知的なバックグラウンドがよくわかる。おそらくかつて著者は、このような文章を「批評」として書きたかったのだろうと思う。ほぼ同世代で『批評空間』を読んでいた独りとして、その感覚はよく理解できる。しかし著者は、自身の経験に引きつけながら、『トランスクリティーク』を見事に「トランスクリティーク」してみせた。著者からすれば、このような「物語」的なまとめは、決して本意ではないかもしれないけれど。
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