真実をつかむ の商品レビュー
森友スクープのジャーナリスト、相澤冬樹氏の記者心得本。昭和・平成・令和と移り変わる時代の中で、記者として誠実に生きる事の大切さを、同僚らとのやりとりの記憶の中で切々と説く。しかし文章は軽快で読みやすく、半日で一気に読み終えた。良本。
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悩み、迷いながら、一生懸命仕事に向き合い、記者として立派な仕事もしてきた人だということは分かったが、本の内容としては、大部分はただの「思い出話」でしかなかった。 私は普段から、事件取材に対する報道のあり方に疑問を持っているが、どうして人の不幸を食い物にするような報道になるのか、よ...
悩み、迷いながら、一生懸命仕事に向き合い、記者として立派な仕事もしてきた人だということは分かったが、本の内容としては、大部分はただの「思い出話」でしかなかった。 私は普段から、事件取材に対する報道のあり方に疑問を持っているが、どうして人の不幸を食い物にするような報道になるのか、よく分かった。テレビも新聞も、もちろん週刊誌も、他社よりも一日でも一時間でも早く、情報をつかもうとやっきになっている。報道を視聴する市民としては、そんなのどうでもいいのだが。知るのが半日遅れたとしても、正確な報道をしてほしい。他社より一刻も早く報道して「特ダネ」にしたいからと言って、不正確なままだったり、〇〇の可能性もある、などと曖昧な言い方にしたりして報道する意味がわからない。 ただ、一刻も早く真実を知ろうとする報道機関の努力があって、公機関に都合の悪いことも暴かれたり、立場の弱い人が救われることもある、ということもわかった。 最近はジェンダーや女性の人生、働き方を深く考える本ばかり読んできたので、本書は完全に男社会の話というのもイマイチ私の気に入らなかった原因です。 取材相手に信頼され、情報をもらうために、夜討ち朝駆けでおしかけ、一緒に飲みに行き、スナックのボックス席が定位置で取材する・・・なんて、そして、そうしないと意義深い報道ができないなんて、何か間違っている、と私は思ってしまう。昔の話なのかな。今でも取材とはそういうものなのかな。 同業者の人は読んで面白かったり、仕事の進め方について参考になる点も多々あるだろうけど、私はけっこううんざりする内容ばかりだと思いました。ゴメンナサイ。
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『2016年の週刊文春』に圧倒されて以来、読書傾向はメディア&ジャーナリズム論へ。現在並行読みしている2冊も然り。 著者は『メディアの闇 「安倍官邸vs.NHK」森友取材全真相』『私は真実が知りたい 夫が遺書で告発「森友」改ざんはなぜ?』で森友学園問題を暴いた元NHK社...
『2016年の週刊文春』に圧倒されて以来、読書傾向はメディア&ジャーナリズム論へ。現在並行読みしている2冊も然り。 著者は『メディアの闇 「安倍官邸vs.NHK」森友取材全真相』『私は真実が知りたい 夫が遺書で告発「森友」改ざんはなぜ?』で森友学園問題を暴いた元NHK社会部記者。 帯の惹句に『記者として歩み続けた私の取材方法をすべて明かします』とある。序章にも〈記者の秘密を明かすワケ〉と題する一文。取材に関するテクニカルな箇所も散見するが、僕は『新米記者 一人前になるまでの30年の軌跡』と読んだ。 著者はNHK在職中、山口→神戸→東京→徳島→大阪と主に西日本を転々。その間、阪神大震災や福知山線脱線事故に遭遇、その悲惨極まる最前線にて取材に当たる。 事件記者の仕事は、大災害・大事故・大事件…、不幸に見舞われた被害者や遺族を取材を行う。その過程で通称『メディアスクラム』と呼ばれるマスコミの加熱取材が起こり、その容赦のない取材を指して『マスゴミ」と蔑む人も少なくない。確かに、過酷な現場であればあるほど分け入っての取材は難航を極める。 著者の場合、まず人と話すのが苦手、思ったことをド直球で言ってしまう…という記者にとってはかなりマイナス面を抱え、夜討ち朝駆け取材を行なう。当然のことながら失敗・衝突・軋轢を繰り返す。 そういう〈もがき〉を通して、あるひとつの信条を導き出す。『取材は愛』であると。取材対象となる相手のことをとにかく大切に思う。この思いを得て以降、時には人間関係に熱くなりすぎたり、また鬱病を発症したり苦労は絶えないが、その真摯な姿勢が森友問題で自裁した財務省職員 赤木俊夫氏の手記入手に繋がる。 繰り返すが、この本は取材の心得を書いてはいるが、テクニックを指南する本ではない。これから社会に出る学生やピカピカの社会人にこそ是非読んでもらいたい。著者は東大法学部卒という就活には無敵なパスポートを引っ提げた御仁である。ただ、社会に出れば、その輝かしい学歴も時には足を引っ張ることもある。 本書は一人前になる上で付き物の〈あちこち頭をぶつける生々しいエピソード〉を仔細かつ克明に綴る。『石の上に三年』なんて甘っちょろい、まだまだ先は長いぜ、焦らずに行こう!って励ましてくれる。 それだけにもっと遥か昔に出会いたかったなぁと 思わされた一冊。
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