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花の慶次 ―雲の彼方に―(新装版)(15) の商品レビュー

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2022/05/01
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

これを言うのも今更だが、前田慶次の人生ってのは、ほんと、次から次に、色々な事が起きる。どんなトラブルに対しても、一切、怯まず、子供のように純粋な気持ちで楽しめる度量が、普通の人間じゃ捌ききれない波乱を呼び込んでいるのだろうな。 カルロスとの激闘を制し、「強敵」と書いて「トモ」と呼ぶ関係性を築いた矢先に、船が嵐で沈没してしまうってのは、人生において、そう立て続けに起きるようなピンチじゃない。とは言え、漫画では、こういう定番の展開が、読み手の胸を熱くさせるのだ。 仲間らと離れ離れになり、独り、砂浜に打ち上げられてしまう、そんな危機が、慶次を命を懸けて逢いに来た利沙と引き合わせるキッカケになっているのも、これまた、グッと来る。 慶次が惚れるだけあって、利沙は、とんでもない美人だ。見た目が整っているってのは言うまでもないけど、所作が洗練されており、芸事に精通している。何よりも、心が清らかで、魂そのものが輝きを放っている。そりゃ、慶次の心は掴まれちまうわ。 こちらも改まって言う事じゃないけど、原先生は男と女の関係を描くセンスも、相当なもんだ。きっと、先生自身が何人もの素晴らしい女性と出逢い、多くの思い出を持ち、それを「漫画」に活かす努力をしたのだろうな。 慶次の視力が潮風で最初、落ちており、利沙の姿を視る事が叶わないのだけど、彼女を狙う下衆から守っている内に、段々と目が機能を取り戻していき、そして、一段落を見せたタイミングで、やっと、慶次は彼女の美しい姿を視る事が出来た。 これは、恋愛漫画としてはベタだけど、ほんと、キュンキュンする展開だ。言い方が失礼なのは百も承知だけど、オッサンが描いているとは思えないほどだなァ。 それにしたって、慶次の強さは、ほんと、一般人のそれから、大きく逸脱している。相手が、カルロスに遠く及ばぬ雑魚であったとは言え、それなりに人数を揃えた上で襲撃したってのに、ほとんど目が視えぬ状態で、音と気配だけで撃退するって、凄すぎ。実のとこ、今、私が「小説家になろう」に投稿中の作品、それの主人公の強さは、慶次も意識している。 また、この(15)では、マムシの火嘉によって、奮闘虚しく瀕死の重傷を負わされた最長老様が、慶次に愛用の鉄弓、そして、利沙を託すシーンにも、心を強く打たれた。一つの後悔もなく逝けるのであれば、こんなにも安らかな微笑みを浮かべられるのだな。きっと、海に還った者らと、慶次と利沙の幸せを願いながら、酒盛りをするに違いない。 しかし、やっと、出逢え、これから、仲を深めていこうって矢先に、利沙を謎の男たちが攫いに来るとは・・・ほんと、一瞬たりとも目が離せない。だからこそ、この『花の慶次‐雲のかなたに‐』は面白く、今でもファンが多いんだろう。 この台詞を引用に選んだのは、「おおっ」と感心してしまったので。 厳しすぎるような気もするが、これはこれで、政治家、組織のトップに立つ者として正しい姿であるような気もする。 組織を纏める者、民の上に立つ者として、筋を通すべき時は、道を踏み外した家族、身内、仲間をも一刀両断し、激化しそうな争いを収める。為政者の鑑だな、この人は。 これが出来て、争いを止められる政治家や組織のトップが今、この世界に何人いるのやら。 また、宝山さんの義に応え、殺意を引っ込めた慶次もまた、器がデカい。 「弟・宇堂を斬る事は人倫の道にも悖ることではあるが、地頭代として、義のためにこれを斬った! これをもって、心中よりの謝罪としたい!」(by宝山) もう一つ、この(15)でグッと来た台詞を。 これは、どシンプルに、慶次の男らしさを表現しているな、と感じたので選んだ。 女だけじゃなく男も惚れちゃう、慶次のデカさが見えるものだ。 この盃を開けた後の、優しい笑顔は、もう、最高じゃなかろうか。 「利沙は、心の中で一杯、泣いていた。涙は杯から溢れ、止まらない。慶次は、そんな利沙の悲しみを飲み干すかのように、盃を空けた」(by天の声) そんで、もう一つ・・・これで(15)で私の心に響いたセリフはラストなので、もうちっとだけお付き合いくださいませ。 これを選んだのは、上にも書いたが、男と女の仲を描くのが、ほんと、原先生は上手いなぁ、と感じたものなので。 ツーカーって言い方はズレているかも知らんけど、多くを語らずとも、気持ちが通じ合っている関係性ってのはグッと来る。 あまり、軽々しく使うもんじゃないだろうけど、慶次と利沙に関しちゃ、この出逢いは運命だったのだろう、と素直に思える。 「俺は、そなたに・・・そなたに会うために、琉球に来たのだ」 「わかっています」(by前田慶次、利沙)

Posted byブクログ