麻薬と人間 100年の物語 の商品レビュー
物質・行為・対人を含めたあらゆる「依存」は「耐えきれない痛み」✕「孤独」が重なった時に生じるというあらゆる科学的データを元に、全世界の薬物戦争について考察した一冊。素晴らしい。巻末の日本語版に加わった日本についての補足章も非常に納得の行くものだった。大傑作。
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麻薬戦争にまつわる歴史から現在までを、緻密な取材に基づく具体的な人物の描写を通じて明らかにしようとする気合の本。 どのようにして麻薬が全面禁止されるに至ったか、それによりどのような状況が生じたか… 昔の話のように思ってしまうけど、キーパーソンのハリー・アンスリンガーは1892~1...
麻薬戦争にまつわる歴史から現在までを、緻密な取材に基づく具体的な人物の描写を通じて明らかにしようとする気合の本。 どのようにして麻薬が全面禁止されるに至ったか、それによりどのような状況が生じたか… 昔の話のように思ってしまうけど、キーパーソンのハリー・アンスリンガーは1892~1975年に生きた人物であり、そこまで昔の話でもない。 オーウェンという市長の話が一番印象に残った。最初は大反対だったけど、実際に自分が目にしたことで大きく考えが変わり、政策を大転換した。間違っていたと考えればきちんと方針転換ができる、それにより社会を変えることができる政治家は素晴らしい。バドというホームレス依存者の話もよかった。 全体的に、麻薬は全面禁止すればかえって弊害が大きい、依存症に至る人も実は飲酒よりも低い割合なのであるから共存していくべきだ、という論調であるけど、注意すべきは、世界全体で議論の対象になっている薬物は大麻などのダウン系薬物。最後の日本版補講が非常に勉強になったけど、日本は世界の中では例外的に、メジャーな違法薬物は、覚せい剤であり、覚せい剤は他の薬物と比べ依存度が段違いに高いということを筆者も認めている。筆者も、覚せい剤に関しては、合法化すべきとまでは明言せず、「必要なのは支援だ」という結論でまとめている。
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「USA VS ビリー・ホリデイ」を観て知った本。薬物は一回使うだけで中毒になると聞かされて育った世代なので目から鱗だったよね。 面白かった!米国での公民権運動に関する知識があるとより理解しやすいと思う。 大麻とマリファナの違いもよくわかっていないのだけれど、週末に友達と集まって...
「USA VS ビリー・ホリデイ」を観て知った本。薬物は一回使うだけで中毒になると聞かされて育った世代なので目から鱗だったよね。 面白かった!米国での公民権運動に関する知識があるとより理解しやすいと思う。 大麻とマリファナの違いもよくわかっていないのだけれど、週末に友達と集まって、今週の監視役を決めて、残りのみんなでマリファナを楽しむとか、現代日本に必要な娯楽のように感じた。そして、そんな友達がいれば、薬物は必要ないというのもよく分かる。 予算が足りない中、どうしてもこの本の邦訳を出したいという関係者の熱意が伝わってきた。ボランティアで校正の手伝いとかしたのに…。
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翻訳も秀逸、一気に読んだ。社会的なつながりの希薄さから生まれる問題について、今後わが国でも真剣に議論される必要があるように思う。
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「あなたが麻薬について知っていることはすべて…」 …私に関して言えば、すべて「間違っていました」 以前カナダで「合法化」されたニュースに触れた時、すごく違和感を感じたのに「カナダ人、やっちゃったなぁ…」と思うだけでした。本書を手に取るまでカナダだけじゃないことすら知らなかった。そ...
「あなたが麻薬について知っていることはすべて…」 …私に関して言えば、すべて「間違っていました」 以前カナダで「合法化」されたニュースに触れた時、すごく違和感を感じたのに「カナダ人、やっちゃったなぁ…」と思うだけでした。本書を手に取るまでカナダだけじゃないことすら知らなかった。そして効果をあげていることも。 よく知らないことを「常識」で一刀両断するのでは無く耳を傾ける事が大事だと気づかせられました。だってその「常識」は意図的にすり込まれたものかも知れないから。だからこそなのか本書は慎重にレファレンスを示しながら描かれてゆきます。そこに誠実さを感じました。 最後の日本語版補章で日本の問題と、国としてとても恵まれていることに気づかせてくれます。読んで良かったと心から思える本です。
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