恋するアダム の商品レビュー
うだつの上がらない主人公の男チャーリーが母親の遺産で買ったアンドロイドのアダム。一緒に暮らしていくうちに、アダムがチャーリーの恋人・ミランダを好きになってしまい…という話。 まず、アンドロイドの感情はどこからくるものなのか?という問いがある。アダムの感情はアダム自身の内部か...
うだつの上がらない主人公の男チャーリーが母親の遺産で買ったアンドロイドのアダム。一緒に暮らしていくうちに、アダムがチャーリーの恋人・ミランダを好きになってしまい…という話。 まず、アンドロイドの感情はどこからくるものなのか?という問いがある。アダムの感情はアダム自身の内部から自然発生的に湧き出たものなのか、それとももともとプログラミングされていたものなのか。AIを取り扱う話はまずAI自身が信頼できない語り手として存在しているところが、物語の不安定要素になっていて面白い。 また、人間の行動基準や意思決定基準の何といい加減なこと。不合理で不条理で不公平で、でもその揺らぎがあるからこそアダムの言う通りこの世には「文学」が存在するのであって、そんな不安定さが入る余地のない世界は味気なさすぎるのかもしれない。ただ、その機微をアダムが理解しようというのはチューリングが指摘するように、かなり難しい。自分の心の在り様を完璧に説明できる人間は恐らく一人もいないから、そんな人間がその機微を機械にプログラミングできるわけがない。 そしてアンドロイドは人間が「所有する」ものなのだろうか。それともアンドロイド自身が誰にも所有されない独立した「一個人」なのだろうか。チャーリーが自分のお金を出した買ったアダムが稼いだお金は、いったい誰のものなのか。アダムの意思を無視してアダムの電源をON/OFFする権利がチャーリーにあるのだろうか。使わなくなったり気に入らなくなったおもちゃは処分することが許されているが、そうなったアダムのことはどう処理するべきなのだろうか、はたまたそうして処理する権利は持たないのだろうか。アンドロイドという存在がただの機械と呼ぶには人間に近しすぎて、そうしたアンドロイドと人間はどうした関係性にあるのかがよく分からない。これまで人間が結んでこなかった新しいパターンの人間関係を、アンドロイドと構築しなければならないのかもしれない。
Posted by
発想が斬新だった。コンプレックスの固まりみたいな主人公とアダムとの対比が面白かった。もしかしたら、もうそこそこにアンドロイドがいるのかも、と思った。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
パラレル1982年に、愛とは正しさとは復讐とは子どもを持つとは…などいろいろ盛り込まれた意欲作。 読んでいくとどうしてもアダムに肩入れしてしまうので、アダムの真正直さ正しさが悲しい、つらい。 やはり人間は不完全であり、嘘も影も含む存在なのだなあ。読後、引き摺る。
Posted by
人工知能を持ったアンドロイドと暮らすってどういうことなんだ??という未知の面白い体験が出来たことが良かった。倫理的な問題も散りばめられているので、思考することの醍醐味を味わえた。人間とロボットの境界線が曖昧になる世界って不思議だ。
Posted by
- 1
- 2