「書経」講義録 の商品レビュー
天工(てんこう)は人其(そ)れ之(これ)に代(かわ)る。 (引用)書経講義録、著者:田口佳史、発行者:藤尾秀昭、発行所:致知出版社、令和3年、141 東洋思想研究家による田口佳史さんの最新刊は、「書経講義録」だ。サブタイトルは、「組織を繁栄に導くためのトップと補佐役の人間学」で...
天工(てんこう)は人其(そ)れ之(これ)に代(かわ)る。 (引用)書経講義録、著者:田口佳史、発行者:藤尾秀昭、発行所:致知出版社、令和3年、141 東洋思想研究家による田口佳史さんの最新刊は、「書経講義録」だ。サブタイトルは、「組織を繁栄に導くためのトップと補佐役の人間学」である。まず、「四書五経」といえば、儒家の思想の典籍で特に重要とされる四書と五経の総称である。その五経の一つが「書経(しょきょう)」である。正直申し上げ、今まで私は「書経」と馴染みが薄かった。しかし、田口さんの「まえがき」には、「『書経』は、人生書にして経営書、歴史書にして、政治書、リーダーシップ論にしてフォロワー論、まさに『人間学』の教科書であります(本書1)と書かれている。この言葉に惹かれ、私は、田口さんから書経の世界へと誘(いざな)われた。 書経を読んで感じたことは、田口さんが「まえがき」で書かれていたとおりであったということだ。書経の世界においても、例えば王となった舜が何をしたのか。そして、民の心をつかみ、どのようにリーダーシップを発揮したのか。書経の中で展開されるストーリーから、私たちは、舜と一緒になって行動するなかで、政治やリーダーシップ、フォロワーシップについて学ぶことができる。こうした王の振る舞いは、長い年月を経ても色褪せることなく、現代でも通用することばかりだ。 その書経の中で、一番心に残った言葉は、冒頭に記した言葉だ。本来、政治は天が行うべきことなのだが、人間が天の代理として政治を司るポジションについている。つまり、リーダーは、天の代理人であることを忘れてはいけないという戒めの言葉である。では、天はどのような人間を代理人として選ぶのか、また選ばれた人間は、どのように行動すべきなのか。書経では、宇宙域にも達する壮大なスケールの中、王たちの物語を通じて、具体的に分かりやすく教えてくれる。今一度、いまを生きる私たちは、リーダーとして、どれほどの人が天の代理人として仕事をしているのだろうかと考えたい。この言葉は、私の座右の銘となった。 書経を読み、政治であり、企業であり、リーダーであり、フォロワーであり、最後問われるのは”人間力”であると感じた。書経は、その”人間”の本質に迫り、人間に寄り添い、地球における幸福な社会を築くための手法を教えてくれる。現在、モノがあふれ、情報科学技術が進展している。豊かな時代だからこそ、今一度、人間にとっての幸福、本来の政治やリーダーとしてのあり方を考え直すときがきているのではないだろうか。その意味で、今この時代に書経に触れることは、大変意義があることだと思えた。私自身、久しぶりに、学ぶべきことが多い一冊に出会えた。私たちに書経を分かりやすく御講義いただいた田口佳史氏に感謝申し上げたい。
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