フットボールアルケミスト(3) の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
ドイツ編の命運を握るチャリティマッチが描かれた3巻である。 今回もまた表と裏で物語が進行する、実に代理人稼業らしいドラマが見られる一巻になっている。 表でアクセントになっているのが、チームメイトの先輩アジア人であるヨンピョ。 どのチームでもそうだが、同国人や意思疎通しやすい関係の選手が居るかどうかは、移籍におけるかなり重要なポイントになる。 敵方代理人の契約選手ながら、ここでのヨンピョの振る舞いは爽やか極まりない。 初の公式戦参加で緊張する沼田選手は彼とのやり取りで奮起している。良いスポーツマンシップだろう。 そしてハーフタイム、遠地でひっそりと暮らすムシッチ監督のチームメイトからかつての売春スキャンダルの真実を聞かされた先崎は、監督へと真実を投じる。 その真実が監督に決断を促し、そして後半の幕が上がる。 表と裏の動きが試合という決定的な瞬間に繋がっていく展開は、非常に心地いいものがある。まさに代理人の物語だ。 そしてそこまでしても、結局選手が活躍できなければ元の木阿弥。 沼田選手が「死体の上を歩く」ほどの覚悟を決めたことで、物語は躍動する。 劇的なゲーム展開の直後の、下品な契約模様で物語はクローズ。 こうした落差の大きさもまさにこの作品らしいところだろう。 今回も楽しませていただいた。星五つで評価したい。 内容的に二倍量を要求する構造だけに、演出はわりあいシンプルなのだが、魅せ方が上手い作品だ。次もどうなるのか楽しみにしたい。
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