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貞観政要 全訳注 の商品レビュー

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11件のお客様レビュー

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2021/04/08

 ビジネスリーダーが読むべき本として紹介されることも多い『貞観政要』、本書は全10巻40篇の全訳本で、訳及び原文で770頁を超える大冊ではあるが、手に取りやすい文庫本の形で刊行されたことは、とてもありがたい。  巻一君道篇第三章の「創業と守成、いずれが難きや」は漢文の教材でも良...

 ビジネスリーダーが読むべき本として紹介されることも多い『貞観政要』、本書は全10巻40篇の全訳本で、訳及び原文で770頁を超える大冊ではあるが、手に取りやすい文庫本の形で刊行されたことは、とてもありがたい。  巻一君道篇第三章の「創業と守成、いずれが難きや」は漢文の教材でも良く取り上げられる有名な一節であるが、これをはじめ、太宗の言行、臣下とのやり取り、臣下の太宗に対する上奏、諫言等が記録されている。  全体を通読し、特に、次のような点が印象に残った。  ・隋の滅亡を経て唐による統一という大変動期の当事者であった太宗にとって、国家運営上、隋、特に煬帝の失政の轍を踏まないことが重要であったこと。  ・大規模事業や君主の奢侈に伴う労役負担や戦役に駆り出すことなど、民に多大な負担を課すことが民の不満を招き、ひいては国家の安定を害すること。それを端的に表す言葉として、"君は船なり、人は水なり。水は能く船を載せ、亦能く船を覆す"という古語が紹介されている。  ・君主の明君たるべきには、広く臣下の進言に耳を傾けるべきこと、臣下も覚悟をもって進言すべきことが、繰り返し取り上げられる。  ・太宗も治世初期には、臣下の言を良く聞き、身を慎んでいたが、唐の治世が安定してきたからか、我儘になってきたこと。(全訳だからこそ、そのような変化が良く見えてくる。)  魏徴の長文の諫言、それを聞く太宗の姿勢にも打たれるものがあったが、何よりもここまで記録として残していくという営み自体、素晴らしいとの思いを新たにした。  訳文は平明で読みやすく、各篇始めの注記は、問答の歴史的背景を知るために大変役に立つ。一読をお勧めしたい。

Posted byブクログ