図説 地図とあらすじでわかる!古事記と日本書紀 の商品レビュー
監修の坂本勝(1954年~)氏は、上代文学を専門とする文学研究者。法政大学文学部教授。 本書は、日本の誕生から天皇の治世を描いた二大古典である『古事記』と『日本書紀』を解説したもので、2009年に出版、2021年文庫化された。 記紀の二書はいずれも、8世紀初頭に、天武天皇の命によ...
監修の坂本勝(1954年~)氏は、上代文学を専門とする文学研究者。法政大学文学部教授。 本書は、日本の誕生から天皇の治世を描いた二大古典である『古事記』と『日本書紀』を解説したもので、2009年に出版、2021年文庫化された。 記紀の二書はいずれも、8世紀初頭に、天武天皇の命により編纂が開始されたもので、当然ながら重複する箇所や似通った箇所が非常に多いが、一方で以下のように異なった性格を持つものである。 ◆古事記・・・稗田阿礼が語り伝えた『帝紀』、『旧辞』を太安万侶が編纂。712年成立。全3巻。日本語重視の変体漢文の表記。収録年代は天地開闢~推古天皇期。天皇家の歴史を語ったもので、天皇家の正当性を国内で誇示するために作られたと考えられる。 ◆日本書紀・・・舎人親王らが編纂。720年成立。全30巻。漢文の表記。収録年代は天地開闢~持統天皇期。海外、特に中国王朝に対して自国の正史を伝えるために作られたと考えられる。 二書を扱った書籍は少なくないが、本書は、①地図や天皇家の系図、写真などを多数掲載することにより、馴染みの薄い地名や人名(記紀を読むにあたって最大のハードルの一つは、読み難く覚え難い名前が多数出てくることである)の理解を大いに助けていること、②古事記に比べて取り上げられることの少ない『日本書紀』を並行して収録していること、③『古事記』と『日本書紀』を比較する形で、その違いがわかりやすく説明されていること、等の点において類書と大きく異なる。 我々日本人がどこから来たのか、については、人類学や生物学の進歩により、多くが解明されつつあるし、日本国家がどのような歴史を歩んできたのか、については、歴史学が既に(多くを)明らかにしているが、その間にある、「日本国家」がどのようにして成立したのかは、未だに不明な点が少なくない。そして、それ故にこそ、「国生み」神話については、我々現代人もロマンを感じるのであろう。 また、いわゆる「神話」は、あらゆる民族が持つ普遍的な文化的現象であり、そこに潜在するモチーフの共通性が人類・民族の移動を解明するヒントにもなっているという。 そうした興味を掻き立てる「記紀」について理解を深めるために格好の一冊と思う。
Posted by
- 1