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小説で読む租税法 の商品レビュー

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2021/04/10

 弁護士で大学の教員(租税法)でもある著者による書。物語を楽しむうちに自然と専門的な用語や概念に親しみ、その独特な考えになじむことを目的しています。なるほど、たしかに400ページ近い内容もスルスルと読めますし、それぞれの条文に対する興味がそそられる。特に不動産所得と譲渡所得につい...

 弁護士で大学の教員(租税法)でもある著者による書。物語を楽しむうちに自然と専門的な用語や概念に親しみ、その独特な考えになじむことを目的しています。なるほど、たしかに400ページ近い内容もスルスルと読めますし、それぞれの条文に対する興味がそそられる。特に不動産所得と譲渡所得について、より一歩進んだ学習をしなければ、と思わされました。  タイトルに「租税法」をうたってはいますが、中身はほとんど所得税法です。法人税法も多少扱いますが、所得税における所得概念を深掘りするため対比的に見ている感じ。対話形式の類書としては「よくわかる税法入門」(有斐閣)がありますが、こちらは租税法全般を扱っている点で本書とは異なります。  舞台はロースクールの租税法教室。主人公でロー生の佐伯祐一と3人の女性同級生が、実務家教員の京山源大による15回の授業を通じて、タックスロイヤーを夢見るようになる物語。その授業中のディスカッションを追体験することで、読者は彼らとともに所得税法の理解を深めていきます。  「法を学ぶときは反対概念と具体例を意識すると良い」「租税法学習の要諦は条文の読み込み、判例の読み込み、税制の政策的理解」とは、著者の言。ストーリー中で展開される授業も、この流れにそって進んでいます。ただ所得税を学ぶだけでなく、「学び方」を学べる内容であるとも言えるでしょう。  「所得税ことはじめ」として、オススメの一冊です。

Posted byブクログ