政治参加論 の商品レビュー
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(政治学の下位分野としての)政治参加論の教科書。第一部では政治参加の理論を、第二部では政治参加の実証として、戦後日本の政治参加を扱う。理論部で、は社会経済的地位が高い層がより政治に参加する「標準モデル」が提示されるが、実証部において、戦後日本の政治参加構造(「日本型参加格差構造」)がその例外として示される。しかしながら、この日本型参加モデルも、1960~80年代という、高度成長と重なる限られた時期に見られた現象であった。 投票などの政治参加を論じる際、「誰が政治に参加するのか」、そして、「なぜ政治に参加するのか(すべきなのか)」という二つの論点がある。前者については上述の通り。後者については、第一章では教育効果として論じられる。投票によって、より政治に関心を持ち延いては一市民としての技能を伸ばす効果が見込まれる、という仮説である。他方、終章では社会経済的な格差構造とともに論じられており、この問題に対する重要な示唆を与えている。民主主義体制であるがゆえに、投票しない階層の選好はどうしても政治システムに入力されない。終章ではこの点について、義務投票制の是非についても検討しており、大変参考になった。
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