目撃 の商品レビュー
600p超えの大作。 小説家の曽我英紀は39年前に母親がDVを繰り返す父親を包丁で刺殺し、逮捕。母親は無罪を主張するも、当時の曽我が包丁で刺しているところを見たと証言した後、犯行を認め、後に刑務所で自殺。あの時自分が証言をしなければ母親は死ななかったのではないか?と自責の念にから...
600p超えの大作。 小説家の曽我英紀は39年前に母親がDVを繰り返す父親を包丁で刺殺し、逮捕。母親は無罪を主張するも、当時の曽我が包丁で刺しているところを見たと証言した後、犯行を認め、後に刑務所で自殺。あの時自分が証言をしなければ母親は死ななかったのではないか?と自責の念にかられる曽我。 両親を一度に失ってしまった曽我だが、父親の弟にあたる叔父が大学卒業まで面倒をみてくれることによって自立。叔父には感謝しきれない気持ちがあるが現在叔父は痴呆により施設に預けられている。 そんな曽我の元に「あなたの作品を読んだ、是非助けてほしい」と東京拘置所から手紙が来る。冤罪をテーマにした小説を書いたのだが送ってきた人間もまさに冤罪で有罪にされようとしているところだと言う。 被告の名前は関山夏美。罪は夫を毒入りビールを飲ませて殺害した疑い。曽我は知らない相手でもあるし、自分では無実かどうか判別も信じることもできなかったので乗り気ではなかったのだが、夏美の娘がちょうど39年前の自分に重なるように見えて他人事とは思えなくなってくる。夏美についた弁護士、服部朋子は偶然にも大学時代の同期であり彼女と協力して真相を探りにいく。 曽我の過去の事件と関山の現在の事件、相互には関係ない事件であるが奇妙な類似性を持つ。関山の事件の真相を追いながら曽我は過去の自分の事件を振り返り母親を追い詰めてしまったことを悔やむ。この構造が面白い。真相が明るみになるにつれて...。これ以上は書けないのだけどめっちゃ面白かった。 エゴ丸出しの人間ばかりで「おいおい...」という気持ちにはなるのだけど人間て所詮そんなものなのかもしれないなぁ。裁判における人の記憶についての専門的なアプローチも面白かったし、弁護におけるどのポイントを証明すれば判決が覆るかの説明も明瞭で読みやすい。読み応え満載でおすすめです。
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夫を殺害したとして有罪判決を受けた妻。しかし、本人は殺していないと主張しつづけている。控訴をしようと奔走する女弁護士。一方、暗い過去を持った小説家が、ある1通の手紙から、事件と関わるようになります。果たして、事件の真相は? この作品、なんといっても約630ページという読み応えの...
夫を殺害したとして有罪判決を受けた妻。しかし、本人は殺していないと主張しつづけている。控訴をしようと奔走する女弁護士。一方、暗い過去を持った小説家が、ある1通の手紙から、事件と関わるようになります。果たして、事件の真相は? この作品、なんといっても約630ページという読み応えのある内容でした。いかにして、妻を無罪にさせるのか。有罪をひっくり返させるような事実をどう掴んでいくのかが楽しめます。詳細に丁寧にその過程が描かれているので、現実にあったんじゃないかと思うくらい、リアリティがありました。 さらにこの事件だけでなく、小説家の暗い過去の事件にもフューチャーされています。事件と似ている部分もあり、二つの事件の中心に小説家と弁護士の二人の視点が交互に進行していきます。 「目撃」という人の記憶が招く証言。時間が経っての完璧な記憶って存在しないんだなと改めて感じました。曖昧な記憶や周りからの影響によって培われて、あたかもあったかのように形成される。目撃証言の問題点を突いた作品で楽しめました。 次々と明らかになっていく事件の真相。深みにハマるかのようにどんどん意外な真実が出てきて、さらに読みやすかったので、どんどんページが進んでいきました。 ラストは…わかった部分があったり、うやむやな部分もあったりと全て解決というわけではありませんでしたが、そこが現実的でもありました。 人の記憶の曖昧さ、人と人との言葉のぶつけ合い、事件解決へと導く過程がゆっくり堪能できた作品でした。
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