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街場の天皇論 の商品レビュー

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2023/11/15

平成28(2016)年8月、当時の平成天皇は、象徴としてのお務めについての「おことば」を述べられた。これがきっかけとなり、平成天皇は生前退位され、新たな天皇とともに、令和の時代が始まった(2019年~)。当時の私は、その「おことば」を、平成天皇は高齢となり、象徴としてのお務めに健...

平成28(2016)年8月、当時の平成天皇は、象徴としてのお務めについての「おことば」を述べられた。これがきっかけとなり、平成天皇は生前退位され、新たな天皇とともに、令和の時代が始まった(2019年~)。当時の私は、その「おことば」を、平成天皇は高齢となり、象徴としてのお務めに健康・体力面からの自信を失くされ、退位を希望されたという風に解釈した。その解釈は別に間違っていたわけではないが、内田樹は更に深い理解をしている。 今回、この本を読んだことをきっかけに、あらためて「おことば」を読んでみた。核心となる部分を(少し長くなるけれども)下記に引用したい。 【引用】 (前略) 私が天皇の位についてから、ほぼ28年、この間私は、我が国における多くの喜びの時、また悲しみの時を、人々と共に過ごして来ました。私はこれまで天皇の務めとして、何よりもまず国民の安寧と幸せを祈ることを大切に考えて来ましたが、同時に事にあたっては、時として人々の傍らに立ち、その声に耳を傾け、思いに寄り添うことも大切なことと考えて来ました。天皇が象徴であると共に、国民統合の象徴としての役割を果たすためには、天皇が国民に、天皇という象徴の立場への理解を求めると共に、天皇もまた、自らのありように深く心し、国民に対する理解を深め、常に国民と共にある自覚を自らの内に育てる必要を感じて来ました。こうした意味において、日本の各地、とりわけ遠隔の地や島々への旅も、私は天皇の象徴的行為として、大切なものと感じて来ました。皇太子の時代も含め、これまで私が皇后と共に行って来たほぼ全国に及ぶ旅は、国内のどこにおいても、その地域を愛し、その共同体を地道に支える市井の人々のあることを私に認識させ、私がこの認識をもって、天皇として大切な、国民を思い、国民のために祈るという務めを、人々への深い信頼と敬愛をもってなし得たことは、幸せなことでした。 (後略) 【引用終わり】 内田樹は、上記を含む「おことば」を聞いて、天皇主義者になったと書いている。私も、上に引用した言葉はとても重く深みのある言葉だと思う。 「国民の安寧と幸せを祈ること、人々の傍らに立ち、思いに寄り添うこと」が天皇の務めであり、そのために、天皇と皇后は日本全国を旅し、人々の思いに寄り添ってきた。それは、簡単なことではなく、むしろ、全身全霊でそのように務めてきたのであり、そのような「全身全霊で祈り、人々の思いに寄り添うこと」を十分に行うことが難しくなっているということが「おことば」の真意だったのだ。そこまでの思いを持って、他人のために祈ることに生涯をささげてきた人がいることに対して、私も内田樹と同じように感銘を受けた。

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2022/07/19

本書の第1章で紹介されていた”天皇制の卓越性”に膝を打ちました。 韓国のリベラルな知識人曰く「日本は天皇制があってうらやましい」 理由は、「韓国の国家元首である大統領が不道徳なふるまいを行い、報いを受ける。自分たちが支持した統治者が実は不道徳な人物であったという事実は、韓国民の...

本書の第1章で紹介されていた”天皇制の卓越性”に膝を打ちました。 韓国のリベラルな知識人曰く「日本は天皇制があってうらやましい」 理由は、「韓国の国家元首である大統領が不道徳なふるまいを行い、報いを受ける。自分たちが支持した統治者が実は不道徳な人物であったという事実は、韓国民の社会道徳の形成を深く傷つけている。それと比べると、日本には天皇がいる。仮に総理大臣がどれだけ不道徳であっても、無能であっても、天皇が体現している道徳的なインテグリティ(無欠性)は損なわれない。そういう存在であることによって、天皇は倫理の中心として社会的安定に寄与している。韓国には天皇制に類する仕組みがない」からであると。 あまりにも天皇の存在が当たり前すぎて、この視点はありませんでした。 この他、第2章 憲法と民主主義と愛国心、第3章 物語と身体性など、様々な視点から天皇について論じられています。わけても参院選直後、憲法と民主主義の視点からの論は一読の価値ありでしょう。

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2021/10/25

なんと冷静で説得力の有る本だろうか。 本書を読むまで、 「なんで皇居は、東京都心にあんなに広大な場所として用意してるんだろ?維持費もバカにならんなー。」 とか考えていた。 が、確かに、天皇制には、近視眼的な政治家とは反対の、社会を長い目で捉える重要な機能が有る!! 一気に天...

なんと冷静で説得力の有る本だろうか。 本書を読むまで、 「なんで皇居は、東京都心にあんなに広大な場所として用意してるんだろ?維持費もバカにならんなー。」 とか考えていた。 が、確かに、天皇制には、近視眼的な政治家とは反対の、社会を長い目で捉える重要な機能が有る!! 一気に天皇が身近に感じた書であった。

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2020/12/29

 生前退位の意思を表明された「おことば」を深く読み込み、象徴天皇制について考察したエッセイを中心に、広い意味での天皇に関わる論考をまとめた一冊。  憲法第1条の解釈は大学の講義で学んだが、どちらかというと大日本帝国憲法からの改正の背景や、戦前の反省から国政に関する権能を有しない...

 生前退位の意思を表明された「おことば」を深く読み込み、象徴天皇制について考察したエッセイを中心に、広い意味での天皇に関わる論考をまとめた一冊。  憲法第1条の解釈は大学の講義で学んだが、どちらかというと大日本帝国憲法からの改正の背景や、戦前の反省から国政に関する権能を有しないとされた意義などを中心に触れられていた記憶がある。  象徴としての天皇の在り方を、正に天皇自身が身をもって問い続けてきたことが、あの「おことば」に示されていた訳だが、その問い掛けに、真正面から真剣に答えた、その一つの例が本書にはある。  ただ、生身の人間が象徴としての役割、機能を果たすことが求められている訳で、どこにその内実を見出していくのか、在位する人によって変わるものなのか、変わっても良いものなのか、とても難しい問題だ。

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2020/11/17

【ぼくはなぜ天皇主義者になったのか】天皇制と立憲デモクラシーの共生はいかにあるべきか。現上皇陛下の「おことば」をきっかけに思索を深めた、ウチダ流・画期的天皇論!

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