死ぬまでに行きたい海 の商品レビュー
文庫が出るらしい。との事で今頃焦って登録。 あの「私の死ぬまでに行きたい海」投稿企画楽しかったよね。
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幼少期や会社員時代などの〈些細な記憶〉を 頼りに著者が思い出の場所や気になる場所へ 赴き綴ったエッセイ集。 他の作品でも出不精とよく書かれているので 今まで読んできたエッセイとは少し違うのかな と思って読み始めたけど、 今回も岸本節炸裂で笑わせて頂きました。 偶然にも、今住んでい...
幼少期や会社員時代などの〈些細な記憶〉を 頼りに著者が思い出の場所や気になる場所へ 赴き綴ったエッセイ集。 他の作品でも出不精とよく書かれているので 今まで読んできたエッセイとは少し違うのかな と思って読み始めたけど、 今回も岸本節炸裂で笑わせて頂きました。 偶然にも、今住んでいる場所の近所が 出てきたりしてテンション上がりました。 岸本佐知子さんは日常生活の中の メモしようと思っても忘れるくらいの 〈些細な記憶〉をずっと大事にされていて、 そこから妄想が膨らんで 特有の世界観を生み出すところが 魅力的だなぁと思います。 ご本人は笑わせるつもりはないんだろうけど、 言葉選びが秀逸で笑わずにはいられない。 私も記憶を頼りにどこかへ行ってみようかな。
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育ちの良い人の話が、今ひとつ身に入らない自分がザンネンだと思い知った本のひとつ。それで星3つ。 でも、私より少しお姉さん世代の著者なので、懐かしいポイントが少しかぶっていて、読むのにはよかった。 しかし、昭和42年の東京と、私が生まれ育った山奥は…ずいぶん時の流れに差があった...
育ちの良い人の話が、今ひとつ身に入らない自分がザンネンだと思い知った本のひとつ。それで星3つ。 でも、私より少しお姉さん世代の著者なので、懐かしいポイントが少しかぶっていて、読むのにはよかった。 しかし、昭和42年の東京と、私が生まれ育った山奥は…ずいぶん時の流れに差があったなと気づかされ… そういう意味でも、懐かしく、憧れる風景を感じました。 2021.5.16読了
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過去の懐かしい場所を訪れてみると、変わってなかったり、なくなってたり、記憶が曖昧だったり。 でも確かに存在していたあの頃のあの場所は。 現実も記憶も、塗り替えられながらも、次につながっているんだと思う。
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岸本さんの文体、表現力、比喩、どれも素晴らしいと思う。 ほかの小説やエッセイでは出てこない、岸本さんだけの表現力。どのエッセイも面白いのに、よく表現が尽きないなぁ。 感性の出し惜しみをしない感じで、贅沢な文章を読ませてもらってる。 ほんと“キシモトワールド”。ぞんぶんに迷い込ませ...
岸本さんの文体、表現力、比喩、どれも素晴らしいと思う。 ほかの小説やエッセイでは出てこない、岸本さんだけの表現力。どのエッセイも面白いのに、よく表現が尽きないなぁ。 感性の出し惜しみをしない感じで、贅沢な文章を読ませてもらってる。 ほんと“キシモトワールド”。ぞんぶんに迷い込ませてもらってるという感じだ。 今回の内容は「場所」。 こうした“しばり”があると、この知った場所・知らない場所に対し、岸本さんはどんな感じ方捉え方をしてどんな言葉でどんな世界を構築するのか、が読む前からすごく楽しみだった。読んだらもうとりこだった。 今や本は贅沢品でおいそれと買えないし、買っても場所が必要だし、図書館で読めるならそれだけでもありがたいと思っているけれど、これは久々に手元に置いておきたいと強く感じる本だった。 ……… 「海芝浦」がとても印象的だった。 「どの丘にも頂上に歯のように家が生えていた。」…「YRP野比」 「今まで何度となくここに来て、同じ場所で同じ椅子に座ってきた。それを全部重ね合わせれば、ちらちらと移動しながら少しずつ歳をとっていく私が見られるだろうか。」…「鋸南」 「自分が死ぬことを知って、それで猫らしく死に場所を見つけに行ったのだろうか。その場所はどこだったのだろう。あたたかな濡れない場所だっただろうか。どこにあるかわからない、でも地表上にたしかにあるその一点のことを思った。」…「地表上のどこか一点」 「いちばん手っとり早く暗がりを手に入れたければ、ふとんをひっかぶって目を閉じる。でもふしぎとそれは真っ暗ではなく、少し赤みを帯びているのは、血のせいだろうか。目をこらしていると、だんだん暗い赤や深緑のベーズリー模様がわいてくる。火花や、車輪や、ほかのいろいろなものの形がぐにゃぐにゃうごめきだす、と思っているうちに意識が遠のく。」…「暗がり」 「初台」で住んでおられた5年間のことは、恐怖小説のようだった。 「近隣」の目眩感。 「この世に生きたすべての人の、言語化も記録もされない、本人すら忘れてしまっているような些細な記憶。そういうものが、その人の退場とともに失われてしまうということが、私には苦しくて仕方ない。どこかの誰かがさっき食べたフライドポテトが美味しかったことも、道端で見た花をきれいだと思ったことも。ぜんぶ宇宙のどこかに保存されていてほしい。」…「丹波篠山」 これを読んだ時、胸を撃ち抜かれたような心持ちになった。切ない。岸本さんすごい。
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「ひみつのしつもん」があまりにもおもしろ買ったからこちらも読んでみた。 ひみつ、の方がテンポがよくおもしろい。 こちらはこの人の繊細さが全開だった。 だよね。繊細じゃないわけないよね。 でもこんなに曝け出せるなんて、強いよなぁ。 場所にまつわるエトセトラをノスタルジックに綴っ...
「ひみつのしつもん」があまりにもおもしろ買ったからこちらも読んでみた。 ひみつ、の方がテンポがよくおもしろい。 こちらはこの人の繊細さが全開だった。 だよね。繊細じゃないわけないよね。 でもこんなに曝け出せるなんて、強いよなぁ。 場所にまつわるエトセトラをノスタルジックに綴ってた。猫とお父さんの話、大学時代の話しが印象的だった。(でもお父さんの話も「ひみつ、」の方のヒキガエルの話が特に好き)
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[1]この本を読みながら「なんか最近、怖いものを見たような気がするなあ」と蘇ってきた。ひたすら考えてみて、NHKの「SONGS」で「新しい学校のリーダーズ」の首振りダンスやと気づいた。胴体と頭が別々の生き物みたいで何かが何かに寄生されてるような気がしたんや、と。というようなありが...
[1]この本を読みながら「なんか最近、怖いものを見たような気がするなあ」と蘇ってきた。ひたすら考えてみて、NHKの「SONGS」で「新しい学校のリーダーズ」の首振りダンスやと気づいた。胴体と頭が別々の生き物みたいで何かが何かに寄生されてるような気がしたんや、と。というようなありがちで小さな妄想がいろいろ入ってる本です。SFやホラーの一部分ぽくもあります。 [2]あなたの妄想のきっかけに。 [3]とはいえ、今回は妄想というより郷愁を誘う一冊だったかもしれません。 ■簡単なメモ 私が触れなかったものだけが残っているみたいだった。(p.10) 記憶喪失者が何かを思い出して幸せになることはまずない。(p.25) 私は舗道の上で何度も足を踏みしめて、地中深く埋まっているはずの古い横浜の応答を求めたが、もうアースは伝わってこなかった。(p.38) 昔から、なぜか私は生ぬるい風に吹かれると、ああ生きている、と思うのだ。(p.51) 来れば来た数だけ海芝浦は増えるのかもしれない。(p.54) 私は店を出たときからずっと、なんだかいい匂いを鼻の奥で嗅いでいた。空気が光沢のあるメタルになって、芳香を放っているような。もちろん本当の匂いではないにちがいないので黙っていた。細い白い三日月がやけに明るかった。(p.57) 《怪獣ブースカが統治する》p.65。岸本さんの妄想のブータンについてはぼくもまったく同じ妄想を描いてました。いろんな情報を知るまで。 この標高だけで死ぬ。(p.77) 《家は茅葺き屋根で、古かった。表玄関から入ると土間があり、下駄を脱いで左側に上がると茶の間や仏間、右側は土間がそのまま広くなって、竈のある台所になっていた。》p.81。ぼくの母親の実家がまったく同じ間取りだった。今はもう改築しているが。長期の休みがあるとだいたい一週間くらい滞在した。やっぱり《帰るのがいやで泣いた。》著者はぼくと同年齢くらいかもしれない? 《空がびっしり星で埋め尽くされて、背中がぞわぞわした。きれいよりも不気味が先に立った。地球が宇宙とじかに接していることがわかってしまって恐ろしかった。》p.83。昔、十津川に行ったとき同じ感覚を抱きました。宇宙に落ちていくような気がして怖かった。似たような体験としては地べたに仰向けに寝そべって濃い青の空を見つめていると自分が地球という天井に張り付いている虫で空に向かって落ちていくような気がすることがよくあります。 《草むらに猫の死骸があってあばら骨が見えていた。生まれて初めて見る死体だった。》p.85。生まれて初めて見た死体ではなかったが近くの港に豚が浮かんでいたことがあったのを思い出した。友だちといっしょに石をぶつけてみるとぼよんと跳ね返るとともに何かが飛び散った。近くに寄ってみると一面の蛆だった。思わず逃げ出した。というようなさまざまな記憶がこの本を読んでいると蘇ってくるのはなんでやろう? この世に生きたすべての人の、言語化も記録もされない、本人すら忘れてしまっているような些細な記憶。そういうものが、その人の退場とともに失われてしまうということが、私には苦しくて仕方がない。どこかの誰かがさっき食べたフライドポテトが美味しかったことも、道端で見た花をきれいだと思ったことも、ぜんぶ宇宙のどこかに保存されていてほしい。(p.88) いまこのブザーを鳴らしたらどうなるだろう。あのころの朝顔殺しのままの自分が、二十年ぶんの動悸と頭痛と焦燥に漬けこまれてミイラのようになって、ドアを開けるだろうか。(p.93) こうしている今も、私のかけらはあの時間のない異世界に取り残されて、出口を探して歩き回っているのかもしれない。今の私はかけらを失った不完全な私なのかもしれない。(p.106) 《その七年ぶんの記憶は私の中で混ざりあい、ちょうどたくさんの地層を上から透かして見るみたいに、記憶や映像がいくつも重なり合って見える。場所だけが不変のまま、何人もの私たちが折り重なって同時に存在して、飲んだり、歩いたり、笑ったりしている。》p.120。全編がSFやホラーのような雰囲気があるが詩のようでもある。特に「三崎」の章は詩のように見える。 後を追いかけながら、急にAちゃんのことを何も知らないことに気がついた。(p.184)
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岸本佐知子さん、やっぱり好き。 エッセイ。各章タイトルは地名。本人が現地に向かい詳細にその地域について語る。それは過去に何度も通ったところであったり、行ったことはないが行ってみたかったところであったり。 面白いのは詳細な場所の描写。この道を右に曲がると○○の店があって。とか過...
岸本佐知子さん、やっぱり好き。 エッセイ。各章タイトルは地名。本人が現地に向かい詳細にその地域について語る。それは過去に何度も通ったところであったり、行ったことはないが行ってみたかったところであったり。 面白いのは詳細な場所の描写。この道を右に曲がると○○の店があって。とか過去の記憶がビックリするほど記憶されてる。それほどに印象的だったのか、、それにしてもその記憶力凄い。 私が好きなのはその場所への岸本さんの思いが、時に重く、時に苦しそうに、時には酒飲んでやけっぱちに、そして時には、え、、、という現実を越えた他のフィールドへ連れていってくれること。各章の終わりかたもただのエッセイにとどまらす、どこかフィクションの様相を含んだりしたこれぞまさに岸本さんワールドだと思う。 この本が発表されたMONKEYって雑誌は全く知らなかったのですが(汗)、調べると書いてる人が興味深い人ばかりで創刊号から網羅的に読みたい。
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家から出ない岸本さんの、珍しい外歩きエッセイ。 ゆかりの地を歩くことで、岸本さんの家族や学生時代、会社時代のことなどが垣間見える。 歩きながら、記憶や妄想がまざりあう。 「三崎」を読むと、人はこんなに飲み続けられるのかと思う。 海芝浦の存在は初めて知った。行ってみたい場所が増えた...
家から出ない岸本さんの、珍しい外歩きエッセイ。 ゆかりの地を歩くことで、岸本さんの家族や学生時代、会社時代のことなどが垣間見える。 歩きながら、記憶や妄想がまざりあう。 「三崎」を読むと、人はこんなに飲み続けられるのかと思う。 海芝浦の存在は初めて知った。行ってみたい場所が増えた。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
ちくま文庫のエッセイに出会ってから岸本さんの著書の大ファンで、今回の著書でもあちらのエッセイで書かれていたエピソードが登場して嬉しかったです。しかもより具体な情報が捕捉されていて、実在するんだ…!と感動(特にゾンビ町の実在は衝撃的でエッセイを読み返しました)あとがきで書かれていた、過去をさかのぼった記憶の場所というのは私たちの中にもそれぞれあって、人の記憶の場所を集めた本があったら覗いてみたい。これも岸本さんの文章からの引用になるけれど、この世に生きたすべての人の言語化も記録もされない、本人すら忘れてしまっている些細な記憶が宇宙のどこかに保存されていたらいいのに。岸本さんの目線を通して綴られる可笑しくて少し切ない世界にまた触れたい。
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