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2021/01/17

100万人以上が虐殺されたとされる、1994年に起こったルワンダでのジェノサイド。その際、家族を喪ったり、暴力や略奪の被害に遭った被害者と加害者たちの中には、今も近くで暮らしている人たちがいます。そのルワンダの人たちの取材などを収録したフィールドワークの本。 主に収録されている...

100万人以上が虐殺されたとされる、1994年に起こったルワンダでのジェノサイド。その際、家族を喪ったり、暴力や略奪の被害に遭った被害者と加害者たちの中には、今も近くで暮らしている人たちがいます。そのルワンダの人たちの取材などを収録したフィールドワークの本。 主に収録されているインタビューは、親戚を近所の人に殺害され、自身は民兵に強姦被害を受けた女性と、親戚を殺害した側の男性の話と、夫が殺害や略奪に加わり、逃亡した夫に代わり被害者への賠償を続ける女性の話。 特徴的なのはルワンダの賠償制度。被害者に対する賠償はお金だけでなく、物による現物補償や、家の修理や建築、農作業を肩代わりする労働などがあります。そして国の文化や制度、法律、人員の違いもあるかと思いますが、被害者側と加害者側が裁判や補償を通して、弁護士などを通さず直接やり取りするのも特徴的。 ルワンダ独自の考え方も、被害者側と加害者の関係性を表しているように思います。ルワンダには孤独を表す「イルング」という言葉があり、イルングになること、させることはよくないとされています。そのため被害者がイルングだと思い、加害者側が関わりにいった話もあります。 一方で、周りの目を気にして、割り切れない思いを抱えながらも被害者からの賠償や補償を受け取らなければならない人たちがいるのも事実のよう。また加害者側も、貧困にあえいでいる人が多く賠償を断ると「もっと高い賠償金をせしめようとしている」などと、被害者側におかしな噂をたてられることもあるみたい。 そして国が和解政策を推進もしていることも理由の一つとしてあります。和解を考える上で、そうした外部の要因が大きいことも決して否めない。 ただこうした人と人の関わりがあることが、この関係性が続いている理由にもなっているような気がします。こうした関わり合いを通して、しこりが生まれる場合もありますが、被害者は労働や賠償で助かったと思うこともあるそうです。 でも一方でそれは赦しとは別で、怒りや恨みに囚われることもあるみたいだし、やはり被害の状況によってはこういう関係性を築けない場合もあるようです。 赦しと和解とは別、という言葉が印象的。キリスト教徒の多いルワンダでは、教会の司祭に罪を告白する人たちがいます。その中にどうしても加害者を赦せないと告白した人がいるそうですが、その時司祭は赦せなくても同じ土地で共に生活していることで和解になっていると諭したそうです。 罪が消えるわけでも、赦されるわけでも決してないけれど、それでも加害者側は赦しを考え「人」としての償いと、付き合いを求め続けることでしか、和解というものはないのかな、と思います。

Posted byブクログ