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レイシズムとは何か の商品レビュー

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11件のお客様レビュー

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2020/12/02

この間BLMから端を発していくつか人種差別についての書籍を読んだが、その中でもまさに「レイシズムとは何か」について正面切って答えている、タイトルにふさわしい良書。 私自身はこの本に出会うまで、この間BLMから端を発していくつか人種差別に関する書籍を読んできた。(アメリカへの入植...

この間BLMから端を発していくつか人種差別についての書籍を読んだが、その中でもまさに「レイシズムとは何か」について正面切って答えている、タイトルにふさわしい良書。 私自身はこの本に出会うまで、この間BLMから端を発していくつか人種差別に関する書籍を読んできた。(アメリカへの入植から始まり黒人の辿った歴史や国としての成り立ち、その中で生まれた監獄ビジネス、啓蒙思想がもたらしたもの、公民権運動、白人ナショナリズム、優生思想、科学と人種・・・) これまでたくさんの良書に恵まれたが、個別には「人種差別とは何か」を考える上での1つの側面を切り取ったもので、自身の中では、アメリカの人種差別を中心に見てきたけど、「自分の生まれて今住んでるここ(日本)ではどうなの?」 という思いがどんどん膨らんできた。 日本における人種差別に対する反対運動が何故これほどまでに起きていないのか? そもそも差別すらないことになっているのか(ここが重要)? 「私」と「人種差別」を結びつけた観点で考えてみたい、と思ってたころにこの本に出会った。 この本が取り扱うテーマはタイトルが表す通り、「レイシズムとは何か」について正面切って答えている(2回目)。しかも新書サイズで。 それはつまり少なくとも上記のような非常に多岐に渡る事例、研究分野を横断しながら、エッセンスを摘み取り、更にそれらを用いた上で自己の主張を乗せて、首尾一貫した流れを成立させなければならないことを意味している。 半年間ほどしか学んでいない初学者の自分でも、そんなのできるの?と思ってしまうが、それが出来ているのが本書であり、著者の各方面への造詣の深さには頭が下がる。 特に第二章ではこの間の人種関連読本でモヤモヤとしていた抽象的な情報を、極めて論理的に整理してくれて、大きな気づきを得る事ができた(レイシズムのインフレ・デフレ、高等戦術化、権力とレイシズム)。 そして何より本書の後半で日本における人種差別・反差別不在の歴史について学べたことは自身にとって大きなターニングポイントとなった。 差別の是非や歴史認識についての議論は絶えないが、差別アクセル・反差別ブレーキ、見えない「日本人」など、多くの人にとって根本的な理解を促す内容が効果的な図によって非常にわかりやすいのも、本書の特徴。 あと巻末の参考文献は大変にありがたい。 その他にも、 ・生物学的に「人種」は存在しておらず、用いることで分断を生む要因になるのであれば、その指標(人種という言葉そのもの)を現在も使うことは正しいのか? ・アファーマティブアクションに対する逆差別という非難をどのように考えるべきか? といったこれまで抱えてた疑問にも見事に答えてくれてて、思わず膝を打ってしまった。 本書はどうやっても新聞やWebなど他メディアで、まして無料で得られるような情報ではないので、ちゃんと買ってじっくりと読むことをお勧めします。 最後に、著者あとがきにおいて、下記の文章が心に刺さった。 「社会正義としての反差別規範なしにマイノリティを承認しようとする多文化共生や、差別する自由を守りつつ被害者に寄り添おうとする日本型反差別こそ、私たちの絶対的沈黙状況を背後から支える権力関係なのである。」 なるだけたくさんの人にこの本を読んでもらいたいし、自身も差別を止めるために3つのDの実践と、学ぶことは続けていきたい。

Posted byブクログ