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旧約聖書の物語解釈 の商品レビュー

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2021/12/25

・聖書テキストについて、ある特定の読み方にこだわったり、無理に正解を求めようとしたりすると、結局は聖書テキスト自体から発せられる豊かなメッセージに対して、心の眼と耳をふさぎ、閉ざしてしまうことになります。 ・らばに乗って懸命に逃亡するアブサロムからは破滅的に死に向かう逃亡者像で...

・聖書テキストについて、ある特定の読み方にこだわったり、無理に正解を求めようとしたりすると、結局は聖書テキスト自体から発せられる豊かなメッセージに対して、心の眼と耳をふさぎ、閉ざしてしまうことになります。 ・らばに乗って懸命に逃亡するアブサロムからは破滅的に死に向かう逃亡者像ではなく、はっきりと生きることの意志をもった人物像が浮かび上がる。しかし、おそらくは長髪であったであろうアブサロムの頭髪が災いとなった。彼の髪の毛は木にひっかかり、彼は「天と地の間に宙づり」となった。戦死でも自死でもない。生きることを切望した者が迎えたグロテスクでいたましい結末であった。しかし、アブサロムが宙づりになった空間こそ、神が創造したこの世界(天と地)そのものであった。「継承物語」はアブサロムが宙づりになった天と地の間の空間において展開した王とその家族の物語であったのである。「物語」によって読者もまたこの空間に宙づりにされてしまうのだろうか。「物語」の空間が天でもなく地でもないことを忘れないために。 ・私たちはしばしば、この物語の主題は何であろうか、などと問いますが、通常、物語の主題は読者がそこから読み取り、感じ取るたぐいのものでありまして、物語にあらかじめ提示されているわけではありません。物語を読み進めてゆくなかで、物語と読者との間に、思想や価値観をめぐる暗黙の対話や対決がおこります。そのような過程をへて、その読者の心のなかに物語の主題は浮かびあがるのです。ですから、主題は自明の所与として物語にそなわっているのではありません。むしろ、読者によって発見されるものです。ということは、物語の主題は読者の主観性と無縁ではありえないことになりましょう。

Posted byブクログ