開発コンサルタントという仕事 の商品レビュー
【琉大OPACリンク】 https://opac.lib.u-ryukyu.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BC03456697
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国際協力業界で長くキャリアを積んだ著者が、いわゆる「開発コンサルティング会社で働く開発コンサルタント」になるにはどうすればいいか、開発コンサルタントとはどういう仕事をしている人なのか、ということについてまとめた本。それほどページ数は多くないので、読もうと思えば1日で一気に読める。 第1章から第4章までは、様々な国際協力の仕組みや制度について概説されている。SDGsにも触れているが、この本の主眼からは少し離れるからか、4ページのみ。本の全体の構成を考えれば致し方ないところか。 第5章と第6章は開発コンサルタントの業務の実態について、実例を含めて説明されている。この2章が占める割合は重く、全ページ数の約半分がここで割かれている。著者の経験と経歴からすれば、ここが主体となるのは当然か。 第7章から第10章は、開発コンサルタントになるためのヒントや資格、キャリア形成の助言がまとめられている。 第7章で書かれている開発コンサルタントに必要な能力・スキルに関しては、間近で開発コンサルタントを見ている身としては、いわゆる理想であって実在の開発コンサルタントは持ち得ていない、あるいは充分ではないものも目立つ。開発コンサルタントはこうあるべき、という著者の見解を表しているものであり、この要件を満たさなければ開発コンサルタントになれない、というものではないと思う。 また、第8章では大学卒業から30代までにしておくべきことも書かれていて参考になる部分もある一方、全体を通じて「大卒から開発コンサルタントになるまでの間、下積みの期間」の実態が書かれていないのが物足りない。 実際のところ、人によって下積みから開発コンサルタントという職業を名乗れるようになるまではバラツキがあるだろうが、少なくとも3年なり5年なり、先輩の開発コンサルタントの下で不条理に耐え、「私」の時間をある程度、捨てるなり諦めるなりして経験を積まざるを得ない期間があることは、この業界にいる人ならば誰でも知っており、少なからず経験もしている。そのあたりに一切、触れられていないのは「これから開発コンサルタント業界を目指す若い人」に対して不誠実ではないか、という気もする。 まぁ、下積み期間が不条理であり人道的ではないというのは、どの業界も同じかもしれないが、仕事そのものの難しさ(これは第10章の最後に少しだけ触れられている)とは別の辛さや困難があることは、やはりある程度、きちんと書いておくべきだろう。
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