1932年の大日本帝国 の商品レビュー
フランス人女性ジャーナリストが見た五一五事件前後の日本。暗殺された犬養毅への日本の大衆の冷たい眼差しや、対照的に誰しもが熱狂的であったかのような満州利権への執着、軍への信頼感。単に学校で習う歴史では感じ取れない社会の雰囲気が感じられる。このような流れからの太平洋戦争はおそらく避け...
フランス人女性ジャーナリストが見た五一五事件前後の日本。暗殺された犬養毅への日本の大衆の冷たい眼差しや、対照的に誰しもが熱狂的であったかのような満州利権への執着、軍への信頼感。単に学校で習う歴史では感じ取れない社会の雰囲気が感じられる。このような流れからの太平洋戦争はおそらく避けられないものだったのだろうし、なぜもっと戦争を早くやめられなかったのか、という素朴な疑問への答えにもなっているだろう。 充実した解説にあるように著者の日本への眼差しは差別的な視線もありフランス、欧米の優位を当たり前のものとしているきらいはある。ただ本文を読んでいる間は昔の日本人はこんな感じだったのかな、と思いながら読んでいた。自分の立ち位置はなんなのだろうとも思う。
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隔絶された現代から覗く1932年。後に続く戦争はおきるべくしておきたものだった。愚かである、または判断を誤ったという感想は簡単だが、当時の状況からするとリアリティを持って満州の権益や農民たちの逼迫が頼る先はファシズム的社会主義しかないという結論に達する。
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歴史学者が過去に言及するのではなく、ジャーナリストが同時代人として記録したものです。1932年(昭和7年)の日本が外国人ジャーナリストにどう映っていたかがわかります。 昭和6年の満州事変以降、日本は完全に軍国化したという見方と、昭和11年の総選挙の結果などを踏まえ、軍国化したのは...
歴史学者が過去に言及するのではなく、ジャーナリストが同時代人として記録したものです。1932年(昭和7年)の日本が外国人ジャーナリストにどう映っていたかがわかります。 昭和6年の満州事変以降、日本は完全に軍国化したという見方と、昭和11年の総選挙の結果などを踏まえ、軍国化したのは昭和12年の盧溝橋事件以降とする説がありますが、どちらも偏っているように思います。 著者の日本滞在中に5・15事件が起きていますが、それによって日本が完全な軍国主義国家になったとは言えない記述が垣間見えます。一方で、著者が「社会主義ファシスト」と呼ぶグループが勢力を拡大していく様も読み取れます。 この時点で、昭和20年の敗戦までが予見されているようで、そしてそれは軍部の独走だけの問題ではないことも暗示されていて、ぞっとする部分が多々あります。 もっとも、著者の偏見が垣間見える表現が散見していて、気づいてしまうとむかつきますが、一応はジャーナリストが中立の立場で書いたルポルタージュの体裁になっているので、一応はすんなり読めると思います。 同時代に書かれたことによる価値は高く、昭和史を考える上では読むべき本に入ってくるとは思います。農村や労働者の疲弊状況を読めば、2・26事件の青年将校の主張には理があると思わざるを得なくなるかもしれません。 もっとも解説まで読むとまた違う感想を抱くと思います。この本は解説まで読まないと価値が半減すると考えています。とはいえ、歴史に対して確固たる見方ができると自負する人以外は、本文から読んで、解説に進んだ方がいいでしょう。自分が感じたことと、解説されていることの差を感じることが、一番勉強になると思います。 https://amzn.to/3flCtrv
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