現代マンガ選集 悪の愉しみ(文庫版) の商品レビュー
時代の桎梏の中で自由に生きるとは何か 通俗的に感ぐれば色々あるよなあ 人間不信のペシミスティック(厭世的)な心情が滲み出る 編集部の惹句が踊るように、ブラックな笑いと共に人生の哀歓を切り取る手際が鮮やか。 軽みを帯びた精緻て静謐な筆致へと作風を変貌させ 旅先で女性と出会った中年男...
時代の桎梏の中で自由に生きるとは何か 通俗的に感ぐれば色々あるよなあ 人間不信のペシミスティック(厭世的)な心情が滲み出る 編集部の惹句が踊るように、ブラックな笑いと共に人生の哀歓を切り取る手際が鮮やか。 軽みを帯びた精緻て静謐な筆致へと作風を変貌させ 旅先で女性と出会った中年男のモノローグ(独白)が深い余韻を残す。 「良い子の漫画」では決して描かれなかった日陰者や落伍者の仄暗い情動が描かれていく 楽天的なアクション劇画の隆盛である 後の知識層にも深甚な影響を与える ないおう内奥のドラマ ある種の感懐を誘わないではおかない嘆きを
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様々な悪。アンモラル。近藤まさあきの「16年」で永山則夫事件の存在を知る。諸星大二郎の「復讐クラブ」は、星新一の小説にありそうなオチで、人間が等しく持つ黒さと愚かしさの連鎖を感じられる。近藤聡乃の「商店街」(『美しい町』より)は、デザイン的な独特のコマ割りとタッチで、可愛らしくも...
様々な悪。アンモラル。近藤まさあきの「16年」で永山則夫事件の存在を知る。諸星大二郎の「復讐クラブ」は、星新一の小説にありそうなオチで、人間が等しく持つ黒さと愚かしさの連鎖を感じられる。近藤聡乃の「商店街」(『美しい町』より)は、デザイン的な独特のコマ割りとタッチで、可愛らしくもありながら毒々しい雰囲気に満ちていて良い。永島慎二の「はえ」(『人間劇場』より)は、簡潔で瞬間的だが余韻がある。谷口ジローの「夢のつづき」は、出張先での少し不思議な体験という感じで、しみじみさえする。 豊田徹也の「Hate to See You Go」(『珈琲時間』より)は、拳銃を構えた二人の男がコーヒーを挟んで対峙する。映画のワンシーンのような鮮やかさながら、彼らの人生と関係性が窺える。絵のタッチも好みで一番好きな短編。
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結構好みの収録作が多い。 第1章……事件の始まり 白土三平「死刑執行」 辰巳ヨシヒロ「殺人業者」 さいとう・たかを「のれん」 佐藤まさあき「16年」★ 第2章……アンモラル 諸星大二郎「復讐クラブ」●既読。当然よい。 山岸凉子「グール(屍鬼)」★ 豊田徹也『珈琲時間』より「Hate to See You Go 」●既読のはず。 近藤聡乃『美しい町』より「商店街」● 斎藤潤一郎『死都調布』より「イン・ザ・クソスープ」 粟津潔「すてたろう」★ 第3章……エロスと生と死と かわぐちかいじ「Sの恋」● 石井隆「停滞前線」 湊谷夢吉「アヤカシの大連」● うらたじゅん「発禁・櫻御前」★ 第4章……ことの結末 手塚治虫「処刑は3時におわった」●既読。 つげ義春「不思議な手紙」既読? つげ忠男「幸福なる一家」 永島慎二『人間劇場』より「はえ」● 谷口ジロー「夢のつづき」 山田英生・編 中条省平・総監修
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<目次> 第1章 事件の始まり 第2章 アンモラル 第3章 エロスと生と死と 第4章 ことの結末 <内容> ちくま文庫の「現代マンガ選集」第6巻。今年中に完結するらしい。なかなかの内容だが、現代の若者はこうした芸術的な作品を評価,いや理解できるのだろうか?わかりやすいもの、考えなくてよいものを選びがちな彼らが…。
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シリーズ6巻目。 マンガの熱心な読者ではないので、マンガの歴史的展開といったことも良く分からないのだが、このシリーズを通して見ると、熱い季節だった68年辺りが一つの転機だったとするのが、各編者の大体の共通認識のようだ。 そこからでも50年以上が経ち、この間膨大な数のマンガ...
シリーズ6巻目。 マンガの熱心な読者ではないので、マンガの歴史的展開といったことも良く分からないのだが、このシリーズを通して見ると、熱い季節だった68年辺りが一つの転機だったとするのが、各編者の大体の共通認識のようだ。 そこからでも50年以上が経ち、この間膨大な数のマンガが描かれたと思うが、その中からどのような作品を取り上げるかに、編者の考え方が現れているのだと思う。 本巻は、貸本マンガ、劇画の出発期から実験的な変革期、そして現代へと、一般読者からすると、シリーズの中でも一、二と言って良いほど、バランス良く選択されている感がする。 豊田徹也、近藤聡乃、うらたじゅんといった作者に出会えたのは、とてもうれしい。
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スマホマンガなどはわかりやすく、落ちのある作品ばかりなので、こうした昔のブラック、ナンセンスな作品はなかなか脳の刺激になる。今時ない絵柄のバリエーションもかえって新鮮。諸星大二郎の「復讐クラブ」の出来が良い。
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