第三帝国を旅した人々 の商品レビュー
第三帝国を旅した、とあるが実際には第一次対戦後のワイマール共和国時代辺りからドイツを訪れた主に欧米の人たちがナチスの興隆をどう見ていたのか、についてまとめたもの。あのような異常な世界はある日突然ではなくじわじわと成り立ったものだろうとは思うのだけどそのじわじわ感を知りたかったので...
第三帝国を旅した、とあるが実際には第一次対戦後のワイマール共和国時代辺りからドイツを訪れた主に欧米の人たちがナチスの興隆をどう見ていたのか、についてまとめたもの。あのような異常な世界はある日突然ではなくじわじわと成り立ったものだろうとは思うのだけどそのじわじわ感を知りたかったので手に取ってみた。何より驚いたのは当時のドイツを訪問したアメリカ人、イギリス人の多さ。同じゲルマン人のアングロサクソン族とチュートン族という部族違いという親近感があったようで第一次大戦を同じ側で戦ったフランスよりもよっぽど親しみを感じていたという。音楽、哲学など高い文化に触れるためという理由もあって多くの人が訪れ、ドイツの側もナチスがどんどん権力を握っていくのだけれどその過程においても外貨を得る目的もあって観光客を熱心に集めていたという。実際にドイツを訪問したバプティストのマイケル・キングという牧師などは感激のあまり自分と息子の名前をマルティン・ルターに改名したという。ちなみにマルティン・ルターはアメリカではマーティン・ルーサーと読む。ナチスですら初期においては観光客にフレンドリーで強制収容所まで見学させていた〜ただしその目的は共産主義者の矯正という名目〜そうでユダヤ人排斥などは不気味なムーブメントと思いつつ、そして自分たちもそもそもユダヤ人に好意を持っていないこともあってあそこまで酷いことになっているとは誰も思っていなかったらしい。共産主義者を死刑にせず矯正させようというのは文明的という評価すらあったほどどだという。タバコも吸わず酒も飲まずポルノを排斥する総統が悪い人であるはずが無い、という当時の観光客のコメントには考えさせられた。ナチスは政権を握った直後にオリンピックを成功させるのだが期間中はユダヤ人排斥を感じさせないようにして黒人も公平に扱って彼らを感激させる。しかし母国再訪のためにオリンピック終了後もドイツに留まったアメリカ代表のユダヤ人選手が途端にレストランにも入れなくなるなどすぐに馬脚を現してしまう。結局チェコスロバキア併合まで欧米諸国はおかしなことになっていると思いつつも誰も危険な状態に気がつかなかったわけだがじわじわとおかしくなっていく状況が多くの人の証言で明らかになっていくところが素晴らしい。欧米人だけではなく中国からの留学生の手記なども丹念に取材しておりかなりの労作だと思いました。ページ数も多く簡単に読める作品ではないけどもこれはおすすめです。
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台頭するナチス・ドイツ、ヴェルサイユ条約破棄、ドイツ国民を扇動鼓舞した経済復興、ベルリンオリンピック、領土拡大までの第三帝国を旅して見た外国人旅行者たちの記録です。ドイツを賞賛しながら帰国した旅行者の記事が多いのは、ヒトラ-の新生ドイツが、歪められたプロパガンダで塗り込められ、醜...
台頭するナチス・ドイツ、ヴェルサイユ条約破棄、ドイツ国民を扇動鼓舞した経済復興、ベルリンオリンピック、領土拡大までの第三帝国を旅して見た外国人旅行者たちの記録です。ドイツを賞賛しながら帰国した旅行者の記事が多いのは、ヒトラ-の新生ドイツが、歪められたプロパガンダで塗り込められ、醜悪な現実から遠避けられていたことです。今日でも相似の国家が存在するだけに、数多のニュ-スの裏表を知ることの難しさを感じます。著者のご主人は、在日英国大使(1992-96)として、夫婦で東京暮らしをされていたそうです。
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