1,800円以上の注文で送料無料

宇宙に行くことは地球を知ること の商品レビュー

4.4

20件のお客様レビュー

  1. 5つ

    10

  2. 4つ

    6

  3. 3つ

    3

  4. 2つ

    0

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2023/09/27

NY在住のミュージシャン・矢野顕子さんが、宇宙飛行士・野口総一さんに宇宙のことをたずねる対談本です。矢野顕子さんは宇宙に行きたくて行きたくて、宇宙飛行士になるために必須の「水泳」を、それまでは金づちだったのにがんばられて習得されたそうです。宇宙に関する知識・情報集めや勉強も盛んで...

NY在住のミュージシャン・矢野顕子さんが、宇宙飛行士・野口総一さんに宇宙のことをたずねる対談本です。矢野顕子さんは宇宙に行きたくて行きたくて、宇宙飛行士になるために必須の「水泳」を、それまでは金づちだったのにがんばられて習得されたそうです。宇宙に関する知識・情報集めや勉強も盛んで、だからこそ、野口総一さんに対する質問が初歩的だったり表面的だったりせず、そればかりか質問自体からも教えられるものがあるレベルにありながら、そんな低くないレベルの質問に答えてくれる野口さんの発言も真正面から真摯なものなので、お互いのやりとりに読ませるものがあるのでした(たぶんに、お二人から様々な方向へ飛び交う言葉を、うまくまとめられた林公代さんの腕あってのことでしょう)。 本書による宇宙飛行の知識。たとえば、宇宙服は約120kg。同僚に手伝ってもらいながら、約三時間かけて着込むそう。行われる船外活動は約7時間が限度。酸素やバッテリーの限界があるからです。そして船外活動を行う、宇宙ステーションの外である宇宙空間は絶対的な「死の空間」を意識せざるを得ないのだと。そういったところから、あまり知らなかった宇宙飛行士の内面的なところなどをも知ることができます。 __________ 宇宙空間に出た途端、「ここは生き物の存在を許さない世界である」「何かあったら死しかない」ことが、理屈抜きにわかります。(p76) __________ 物がぶつかっても音がなく、周りには生き物の気配はまるでなし。そして、一切の命を拒絶する、絶対的な闇がある。ゆえに、「死の空間」だと即座に感じられる。 船外活動の訓練は地球でもプールの中でたくさんの時間を使って行われているそうです。それでも、実際に宇宙空間に出るとほんとうの無重力にとまどってしまうといいます。たとえば手や足を伸ばしているのか縮めているのかも、重力を感じていないためにわからなくなる、と野口さんはおっしゃっている。また、45分毎に昼と夜がやってきます。そのため、宇宙服の冷却装置のON,OFFや、ヘルメットのバイザーの上げ下げを繰り返さないといけない。これらは、船外活動ならではの体験でしょう。 宇宙飛行士チームの話もおもしろかったです。「結果が出せない人は価値がないのか」という行き過ぎた能力主義の話から続いていく話だったのですが、弱さを見せ合えたチームのほうがうまくいくのだ、と。このあたりでは、東大先端研のアスリートや宇宙飛行士の当事者研究として「安心して絶望できる人生」というすごい言葉が出てきます。結果が出せなかった自分は価値がない、と絶望することがあると思いますが、そういうときの追いつめられた絶望はほんとうにつらいです。でも、「安心して絶望できる人生」というのは、絶望をチームにみせてよくて、チームもその絶望を包摂してくれる。こういうイメージというか、モデルというかは、復活するチャンスにあふれていて、生きやすいだろうな、と思えてきました。 あと、おもしろかったのは、イーロン・マスク氏率いるスペースX社をひきあいに、日米のビジネスモデルや研究開発モデルを比較したところ。日本の現状としては、どうも石橋を叩いて橋を渡ってばかりいるきらいがある。それが進んでいくと次のようになるのでは、と野口さんは指摘するのです __________ 結局一番安全なのは、橋を渡らないことになってしまう。あらゆる挑戦は避ける判断をするほうが楽なんです。リスクがないから。(p197) __________ これって、僕の生活範囲にもありふれていて、この文章を読んだことで「これって、日本的な問題だったんだ!」と目からウロコでした。こういうことを言ったりやったりするのって、個人単位の問題じゃなかったんですねえ。 というように、抜き出し書きの感想を書くと、以上のようになります。いくつかの大きなテーマに沿って本書は進んでいきますが、その箇所その箇所での話のふくらみ方が豊かですし、なんというか知的好奇心を刺激してくる楽し気な対談になっていました。宇宙から、そして宇宙体験から、それまではまったく視界の外だったような知見が得られます。ほんとうは実際に宇宙旅行をみんなが経験できると、みんなの価値観がわーっと花開くのでしょうけれども、なかなかそうもいかないので、そういった新たな体験や価値観のちいさな欠片を本書から拾うことにしましょう。

Posted byブクログ

2023/07/23

かなりディープ 対談形式 子供達に向けた明るい希望ある話ではなく、死と隣り合わせの世界、地球と言う生の世界の話やこれから先の宇宙開発と人類の話 宇宙は神秘的な世界だと漠然と思っていたけれど、音がない、熱量を感じない、無重力の世界がどれほど怖いものか具体的に知るきっかけになった...

かなりディープ 対談形式 子供達に向けた明るい希望ある話ではなく、死と隣り合わせの世界、地球と言う生の世界の話やこれから先の宇宙開発と人類の話 宇宙は神秘的な世界だと漠然と思っていたけれど、音がない、熱量を感じない、無重力の世界がどれほど怖いものか具体的に知るきっかけになった 重力のある世界と無重力の世界はパラレルワールドと言える、時間感覚もまたパラレルワールド、不思議な感覚だ 野口さんは2020年クルードラゴンに搭乗、2021年無事帰還 この頃は暗いコロナのニュースが多かったので、これは明るいニュースでしたね

Posted byブクログ

2023/04/23

最近のニュースで、日本人初の宇宙飛行士秋山さんが〈宇宙よりも土いじり〉みたいなことを言われていたのが印象に残っていて、ふと、人間は「土から離れて生きられないのよ」という『天空の城ラピュタ』の有名なセリフを思い出しました。(あ、いえ本書はとても面白かったので決して誤解されませんよう...

最近のニュースで、日本人初の宇宙飛行士秋山さんが〈宇宙よりも土いじり〉みたいなことを言われていたのが印象に残っていて、ふと、人間は「土から離れて生きられないのよ」という『天空の城ラピュタ』の有名なセリフを思い出しました。(あ、いえ本書はとても面白かったので決して誤解されませんように) 感想 1.宇宙飛行士のリアルがよくわかった 2.人間の〈業〉も改めてわかった 3.地球で生きる意味も考えた ◯ ◯ ◯ 「闇が襲ってくる」とは宇宙飛行士ならではの表現じゃないでしょうか。自分は高所恐怖症なのでそこまで宇宙に行きたいとは思わないのですが、野口さんは、そこは未知の世界だからと言い、矢野さんは、国境がない宇宙でピアノを弾きたいと言います。(矢野さんは宇宙に行くため苦手な水泳を克服さえします。このように夢を持ちながら、より良い生き方をしていくことはとても意味があると思いました) しかし、国境はなくても「宇宙開発」という新しい〈争い〉が中国やロシア、アメリカなどの間で(ここでも)始まっていることにも触れられています。人間は未知の世界を開拓してここまできたので開発は止められないでしょう。 願わくは、夜空の星たちが戦場となりませんように、子どもたちにまだ夢を与える場所でありますようにと流れ星を探して空を見上げましたが曇りでした…。 願い事。 平和叶えて! 流れ星 (lem心の俳句)

Posted byブクログ

2022/08/29

野口聡一さんが地球に出稼ぎに帰ってきて、日本のTVで出まくっていたので、積読にあったよなと取り出して読んでみた。昨年末のBRUTUSの読書特集で宇宙を読み解く副読本として紹介されていた。 誰もが感じる、なぜ矢野顕子?という素朴な疑問は冒頭で解決させてくれる。 スペースシャトル、ソ...

野口聡一さんが地球に出稼ぎに帰ってきて、日本のTVで出まくっていたので、積読にあったよなと取り出して読んでみた。昨年末のBRUTUSの読書特集で宇宙を読み解く副読本として紹介されていた。 誰もが感じる、なぜ矢野顕子?という素朴な疑問は冒頭で解決させてくれる。 スペースシャトル、ソユーズを経験し、クルードラゴンに乗る前の野口さんの体験談を矢野顕子が引き出す。 宇宙開発でのロシアとの協調が崩れ、ここでも中国が抜け駆けかと言われているところが、地上の色んなニュースとつなげて読んじゃうな。

Posted byブクログ

2022/03/15

安心して絶望出来る人生。当事者研究という言葉は、新鮮だった。障害者、トップアスリート、宇宙飛行士という関係性が感じられない人々での共通性。能力主義の否定と弱さの情報公開は、面白い。

Posted byブクログ

2022/01/04

この本が刊行された1年半ほどで、クルードラゴンは3回の輸送飛行に成功し、同時に民間宇宙飛行も行われるようになり、宇宙開発が新たなフェーズに突入したことを素人でも実感できるようになってきたが、現役宇宙飛行士と宇宙を夢見るミュージシャンが対話するスタイルでまとめられたこの本では、宇宙...

この本が刊行された1年半ほどで、クルードラゴンは3回の輸送飛行に成功し、同時に民間宇宙飛行も行われるようになり、宇宙開発が新たなフェーズに突入したことを素人でも実感できるようになってきたが、現役宇宙飛行士と宇宙を夢見るミュージシャンが対話するスタイルでまとめられたこの本では、宇宙滞在での身体感覚の変化から話が始まり、宇宙飛行士の死生観にも触れながらスペースXの参入による宇宙開発の進化など宇宙をめぐる様々なトピックが語られていて、現状について難しさを感じることなく把握することができた。ボーイングとテスラによる技術競争の顛末や、宇宙ビジネス関連なども興味深かった。民間宇宙飛行も現在は一部のセレブのためのものなどと思われているかもしれないが、この分野も今後は加速的に発展していきそうな予感がする。 そして宇宙に行きたいと願うアッコちゃん(著者)の野望も案外早く叶ってしまうのではないか、と思われる。彼女が宇宙から地球を見たら、どんな音楽を作るのだろうか。

Posted byブクログ

2021/08/11
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

空間識失調  宇宙では筋肉が重力を感じないので自分の手足の位置がわからない。  耳石の縦方向センサーも働かない。視覚の横方向も基準がない。 指先  音は伝わらないが振動が伝わる。  温度は伝わらないがグローブのシリコンの硬さで温度変化が伝わる。  ISSのトラスを触り水平がわかる。 Memorial Trees  NASAジョンソン宇宙センター 事故死した人の木。  スペースシャトル 135回の飛行、2回の事故で14人が命を落とす。  60年間で 570人が宇宙へ行っている。 ISS  45分ごとに昼と夜 3か月ごとの補給 高度400km  片道6時間でISSへ。以前はソユーズで片道2日。最短で3時間も可能。  ISSへの輸送費用5800万ドル(ボーイング スターライナー)  ISSは無機質でグレーの世界。色も、動くものもない。  地上のほうが圧倒的に刺激的。 宇宙服  14層 120kg 0.3気圧の酸素 3時間かけて着る。7時間の船外作業に耐える。  下着は水冷式。  酸欠では苦しくなる前に意識がなくなる。   スペースX  実績と革新 変化への対応とスピード感ある実際のオペレーション。  100%内製化、開発から打ち上げまで同じメンバー(スペースシャトルは分業) クルードラゴン  全自動でISSとドッキング   液晶パネルの操作+物理ボタン、  インテリアもヘルメット一体式の宇宙服も、白と黒   満足感よりも、全員の不満にバラツキが出ないことを目指す。  活動を止めることによる目に見えない社会的精神的マイナス。  状況に応じ、プロとしてできることをやる。小さい積み重ね。 多様性は強靭さにつながる。 矢野顕子  視力が弱く、手術するまで、  月が一つに見えない、星も見えなかった。  聴力に優れ、声で人を区別していた。  音で部屋の広さや車のエンジンの調子を知る。  ニューヨークでは何で有名かではなく、何ができるのか?

Posted byブクログ

2021/07/07

3度目の宇宙飛行が決まった野口さんに、矢野さんが様々な疑問をぶつけていく。矢野さんの質問っぷりがとても良い。野口さんの魅力をとても引き出している本になっていると思う。

Posted byブクログ

2021/04/09

100%命に満ちた地球と100%死の世界である宇宙空間を隔てているのは、薄い大気の層一枚。一切の生を許さない宇宙の中で地球だけが命を内包し眩しい光を放っているという言葉に奇跡と神秘を感じます。現在ISSに長期滞在されている野口さんからは宇宙からの光景がインターネットを通じて発信さ...

100%命に満ちた地球と100%死の世界である宇宙空間を隔てているのは、薄い大気の層一枚。一切の生を許さない宇宙の中で地球だけが命を内包し眩しい光を放っているという言葉に奇跡と神秘を感じます。現在ISSに長期滞在されている野口さんからは宇宙からの光景がインターネットを通じて発信されていますが、やはり体感しないと得られないものは多いようです。気配もなく、音もなく、絶対的な闇は想像しても難しい。スペースXとボーイングの違いなどを話もとても面白かった。

Posted byブクログ

2021/04/03
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

矢野さんが部屋で手をたたく話、目をつぶってにおいを嗅ぐとか触ってみるとかみたいなものかなと思った。水泳を始めて、泳げるようになる話とかすごく素敵。

Posted byブクログ