生まれつきの花 の商品レビュー
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花人差別というせかいの在り様の書き込みが半端なくて、これは何かを花人に変換しているのか?とぐりぐり考えてしまうくらいに冷血かつ執拗。 個人的に題材がつらい訳ではないのにこんなにしんどい本も珍しい。 特に中盤、筆が乗りに乗っている(筆致にいやな興奮は感じない)世論としての差別描写がほんとうにきつい。これを読んでいる自分ってまぞいのかなと思う程にきつい。 救われるから……決着するから……と、苦しみながらも到達する為に絶え絶えにページを繰るという感じ。 ついでに似鳥さんどうしたの……とも思った。びっくりする。 「一〇一教室」的シリアスサイド? 徹頭徹尾重い訳ではなくて、いつもの軽妙さもしっかりあるのだけれども。 いちばんつらいところは徹底されてしまっているから、その前後の通常営業で息継ぎ! 常人でありながら花人寄りの思考をする火口が思わせ振りで、なんかそのふたつのあいだ的な出生なのか……?とか思ったりもしていた。 「」の位置が度々ずれている気がして、何らかの仕掛けを疑った。 が、いま軽くぱらぱら見返してみたけれど、ちょっとよくわからない。。あれ? まあとりあえず仕掛けはなかった。 「誰がどう見てもこれはおかしいというものに対して、おかしいとはっきり言いたい」という頑迷な思考がこわくて その「どう見てもおかしい」って、主観だよね?「誰がどう見ても」って、究極、誰にも言えないよね?揺るぎない完璧なる絶対的正義じゃないよね?とずっと思っていて だから水科さんから何らかのしっぺ返し的なものがありそう?とか、驕っているんじゃねえ的な展開をするかもしれないとか、思ったりしていたんだけれど 水科さんは全くもって冷静でしたごめんなさい。 悪意は悪意でしかないのに、いつも、悪意なんかじゃないですよー良識的な人間の持つ当たり前の人間らしさですよーという顔をしている。 それをいやだと思うことは、狭量で、「人間ってそんなに完璧じゃない」というやさしさに欠けていて、きれいでいることが可能だと思っている厚顔無恥だという、自制と諦観。 「普通の人間というのは、君が思っているほど正しくもなければ賢くもないものなんだ」ということ。 めちゃくちゃ傲岸だけれど、確かにひとつの真理なのだろうということ。 なんだかもう、自称少数派のいじけた建て前を吹き飛ばしに掛かられている? 一歩間違えば狂人だけれど、テロはテロなので正義がおつよい。 んん、でもかんがえたら、常人が愚かすぎた所為だけど結果的に逆転に利用しちゃった感……?(潔癖) 正当な評価を取り戻す為にはあれくらいガツンとした対抗勢力の失墜がないと……。実際愚かなんだから明らかにされて仕方ないんだけど……。 時間が経ったら本書に触発された、物語からはちょっと離れた思考が、ぐーるぐるぐるぐるである。 ひがむ方が格好悪い、って浸透する世の中はあの世界に来るのかな。 理に適わないのに疎まれるならつまり人徳がないのだ、っていうの、責任転嫁にしろ真理にしろ、現実でも根深そうだから本書でもきっと、、 けど花人のひとは、かなしくはあってもドライでいられそう。そんなものに付き合うよりも楽しいことに目を向けられるから。 あと水科さんに火口さんがいたことは、創作物語として、まぶしいような希望のかたちだ。 変化はあったけど、こらしめた!っていう印象にならないところが嬉しい。 終わり方が当たり前にあかるい世界で嬉しい。 ずっとしんどかったものが吹き飛んだ。 ためらいなく拳銃を取り出したり諸々する水科さんとか、大人男子らしく口調が乱暴になる火口さんとか、返り咲いてくれた草津さんとか つよい大人って、格好良くて、良いな。しびれる。 テロを阻止する為に力に訴える匙加減が、当人的に加減したのじゃなくて俯瞰として、絶妙。
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外見、知性、身体能力に恵まれる「花人」。その合理性故に犯罪を犯すはずのない彼らが容疑者となる殺人事件が次々に起こる。 花人はかすかに百合の香りがするというのが面白かった。 四編からなり、社会の中の大なり小なりの「差別」が大きなテーマ。 「花人」は勿論架空なのだが、花人のことでは...
外見、知性、身体能力に恵まれる「花人」。その合理性故に犯罪を犯すはずのない彼らが容疑者となる殺人事件が次々に起こる。 花人はかすかに百合の香りがするというのが面白かった。 四編からなり、社会の中の大なり小なりの「差別」が大きなテーマ。 「花人」は勿論架空なのだが、花人のことではなくても、何かきっかけがあれば実際におこりそうでとても怖い。 事件に関しては鮮やかなオチでした。おもしろかった。
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外見、知性、身体能力に恵まれ、なおかつ特殊能力も有する「花人」たち。本来なら殺人を犯すはずのない彼らが容疑者となる殺人事件が次々に起こり、そこから巻き起こる花人差別の嵐。トリックの楽しめる本格ミステリであり、(架空の人種ではあるけれど)差別について考えさせられる社会派ミステリでも...
外見、知性、身体能力に恵まれ、なおかつ特殊能力も有する「花人」たち。本来なら殺人を犯すはずのない彼らが容疑者となる殺人事件が次々に起こり、そこから巻き起こる花人差別の嵐。トリックの楽しめる本格ミステリであり、(架空の人種ではあるけれど)差別について考えさせられる社会派ミステリでもあります。 生まれつき恵まれている人、というのは確かにいて、それは本人の責任でも何でもないのだけれど。そこにあぐらをかいてしまうことは悪のように思われてしまうのですね。単なるやっかみでしかないはずなのだけれど、そういう自分の感情を正義だとか悪だとかにすり替えてしまうのが実に恐ろしいこと。これに限らず、「正しくないこと」を好き勝手に誹謗中傷して自分が正しい気になっている人って多い気がします。そしてそういう風潮が世に広まるにつれ、だんだん何が正しくて何が間違っているのかわからなくなる……これってどこでも起こりうることなんだよなあ。 そんな中で事件に真っ向から向き合おうとする火口と水科のコンビは清々しく。かつて切れ者でありながら今は昼行燈になってしまった草津の活躍にも目を瞠らされました。事件のトリックにもいろいろやられたなあ。
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ミステリーを読んでいて、初めて泣いたかもしれない。 似鳥鶏さんの最新刊は、特殊設定社会派本格警察ミステリ。 「花人」という、能力も容姿も性格も秀でた人間(人種) と、現実の私たちのような「常人」。もしこの2つの種族が現代に暮らしていたなら…という設定の本格ミステリー。 本筋の途中、数回幕間の話が挿入されているんだけど、花人の捜査官水科此花の章は特にしんどかったなぁ。 生まれつき全体的に秀でているせいで受ける差別。 頑張って物事に取り組んでも、「花人だから余裕でしょ」と言われてしまう環境。よくひねくれずに、自暴自棄にもならずに、警察官になったと思う。 本筋の事件も、ひとつひとつはきちんとトリックが仕掛けられ、それを解決する「名探偵役」もいる。でも、まさかそれ自体がもっと大きなうねりの中にあったとはね…。 ベタな表現だけれど、一番怖いのは人間。 でも最後に勝つのは正義。その場面で泣いてしまった。 時代は現代日本なので、SNSや動画サイト、ニュースサイトなど私たちが普段慣れ親しんでいるものが作中でも使われている。 炎上、叩き、マスコミ、忖度、噂、などが効果的な小道具として登場する。 日々情報に触れている全ての現代人が、読めばどこかしらで自分に刺さると思う。 とても考えながら読んだ本だった。
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「生まれつき頭が良い人」「生まれつき運動ができる人」「生まれつき美人な人」……に対する僻みみたいなものは、この本の中だけではなく現実にもあるものだと思うので、「常人」の視点として共感ができました。また、情報社会の利点と不利益な点が描かれており、やっぱりこの話は「この世界」の話なのだと思います。自分より優れている人々と向き合う時の対応を考えさせられました。 キャラクター、エピソード、筆致、そして何よりトリックや展開が傑作と呼んで差し支えないと思いました。おもしろかったです。
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