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戦争・革命の東アジアと日本のコミュニスト の商品レビュー

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2024/10/16

 20世紀前半の日本における共産主義者たちの取り組みを、国際共産主義運動とのかかわりという観点からまとめた書籍。1920年代の第一次共産党創設から、1960年代後半の共産党の議会政党化=国際路線の終焉までを、「戦争と革命の時代」と「平和的共存の時代」という振り子が大きく揺れ動いた...

 20世紀前半の日本における共産主義者たちの取り組みを、国際共産主義運動とのかかわりという観点からまとめた書籍。1920年代の第一次共産党創設から、1960年代後半の共産党の議会政党化=国際路線の終焉までを、「戦争と革命の時代」と「平和的共存の時代」という振り子が大きく揺れ動いた時代として捉え、日本の共産主義者たちが国際共産主義運動=コミンテルンやソ連・中国の共産党に翻弄されていった様子を明らかにする。1920~1950年代まで、「一国一党原則」のもと、朝鮮人たちが日本の共産主義運動に果たした役割の大きさを強調している点も重要。  プロレタリア文学運動だけを見ていると、戦前期の運動の離合集散はさっぱり理解ができない。だが、コミンテルンやソ連共産党の方針との関係、中国や朝鮮の共産党との関係を軸に整理してみると、こんなに見通しがよくなるのかと驚かされた。  本書の著者は、朝鮮人共産主義者との「共闘」「連帯」を意識し続けた中野重治の「雨の降る品川駅」の再評価を主張している。中野の詩は林和をはじめ多くの詩人に引き継がれ、中野自身も自作についての反省と自己批判を行った。中野の詩を脱歴史的に批判することの問題性は理解できるとしても、だが、議論を中野自身の「良心」「誠実さ」という問題に還元してしまうと、この詩が担ってしまった歴史性や政治性が見えなくなってしまう。著者はおそらく、「あえて」中野の再評価を訴えているのだと思うが、近年の研究で明らかになった「共闘」「連帯」の内実と同床異夢ぶりを考慮すると、「帝国に抗する社会運動」「プロレタリア国際主義」がどのように再評価できるかは、なかなか難しい問題だろうとも思う。

Posted byブクログ