アメリカの世紀と日本 の商品レビュー
日本の戦後社会文化の形成に米国が与えて来たインパクトが明確に理解された。米国が世界唯一のスーパーパワーとして君臨しつつ冷戦構造の中で世界で実施してきた対応により日本も変化して行った。日本は世界史を俯瞰しても稀な「多民族に征服された経験のない国」であった。そこに戦争後もたらされた米...
日本の戦後社会文化の形成に米国が与えて来たインパクトが明確に理解された。米国が世界唯一のスーパーパワーとして君臨しつつ冷戦構造の中で世界で実施してきた対応により日本も変化して行った。日本は世界史を俯瞰しても稀な「多民族に征服された経験のない国」であった。そこに戦争後もたらされた米国主導の変化は強烈なものであった。ただ日本の指導層はある意味そこを「しなやかにしたたかに」乗り切ってきた。それを実施したのが保守本流と言う絶滅危惧種。 今。これから。グローバルパワーゲームの再燃が感じられる昨今、日本はどこに進むべきか。その為には今一度「日本」について自ら再点検し、自覚する必然を思う。 この本はその覚醒をもたらしてくれた稀有な本
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太平洋戦争に突入してから現在までの米国と日本との関係を詳しく解説しています。帝国主義時代の後発国である米国と日本とが激突するのは必然だったのでしょう。その米国にコテンパンにやられて原爆まで落とされましたが、戦後の復興は、冷戦が始まることにより、米国のお陰(?)で世界第2位の経済大...
太平洋戦争に突入してから現在までの米国と日本との関係を詳しく解説しています。帝国主義時代の後発国である米国と日本とが激突するのは必然だったのでしょう。その米国にコテンパンにやられて原爆まで落とされましたが、戦後の復興は、冷戦が始まることにより、米国のお陰(?)で世界第2位の経済大国へと復活するんですね。そして、その冷戦が終わり、ポスト冷戦の戦略が日本に求められています。それが、憲法9条を無視した現在の状況なのですね。いずれにしても米国が深ーく深ーく関わってこれからどうなってしまうのか。不安しか感じないのは私だけでしょうか。
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米国人はああしろこうしろ、極東政策の一端を担えとしじゅう我々に言う。しかし歴代内閣が米国の努力を全て握り潰した。だからこそ佐藤栄作はサボタージュを理由にノーベル賞を受賞した。
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読みながら戦後史について深く考えを巡らさざるを得ない契機になる、実に重要な大著である。 第二次世界大戦から安倍政権までを、日米関係から深い洞察に基づき描き出したもの。ルーズベルト(FDR)の対日姿勢は無条件降伏施策であったという視点は、私には目新しかったが、そこからマッカーサーを...
読みながら戦後史について深く考えを巡らさざるを得ない契機になる、実に重要な大著である。 第二次世界大戦から安倍政権までを、日米関係から深い洞察に基づき描き出したもの。ルーズベルト(FDR)の対日姿勢は無条件降伏施策であったという視点は、私には目新しかったが、そこからマッカーサーを含め徐々に変更するあたり、吉田茂およびその後継者・協力者たちが経済発展に注力するところは、まあ復習するようなものだった。むしろ吉田茂への評価が高すぎるかなという思い、一時期もてはやされた白洲次郎への低い評価は的を射ているかなというところくらいの印象だった。 この本のグイグイ引き込まれたのは、引用に基づき、昭和天皇が内密に琉球処分を後押しした(199頁)と書いたあたりから。冷戦開始とともに、「従属的独立」を果たした日本とのアメリカの「奇妙な同盟」と、様々な事件(第五福竜丸、ゴジラ、ジラード事件等々)と、特に60年安保の意味を詳説している。 対中国で、ニクソン、キッシンジャーと毛沢東、周恩来とのやり取りは、私も初めて目にするもので、非常に興味深かった。日本は、突然に大きく振れることを中国はよく理解していて、軍国主義化することを心底恐れているのがよく分かる。むしろニクソン政権が必要以上に日本を追い詰めるのを自制するよう求める毛沢東を描いているところは、この時期でもまだボケてなかったんだという思いがある。 最後の三つの章では、かつてビジネスの世界で言い募られた「日本特殊論」に近い主張を展開するが、それはアメリカの単線型発展観を戒める、多様性の是認である。この辺を読みながら、青木昌彦(姫岡玲治)が、各国の歴史・制度により発展の経路が異なるとした制度経済学が、多くの賛同者を得る前に亡くなったのが、いかにも惜しまれる。 訳者山岡由実さんが、あとがきで「自問自答を重ねる」とし、「作業を進めながら、考えにふけらずにはいられなかった」というところは、一読者としてもまったく同じ思いを強く持った。 残念なのは、ここまでの、正しい意味での俯瞰的でありながら、鋭い分析的視点を取り入れた戦後史が、日本の学者によっては書かれなかったことである。 昭和から平成に変わったことも歴史上の出来事であるような若い世代の方々には是非とも読んでもらいたい貴重な書である。 最後に、訳者山岡由実さんの日本語は、原著が英語であることを感じさせないもので、加えて、おそらくは原著では英訳になっていた日本語文献を丹念に現物にあたって元表記を再現し、ルビまで振ってあるのには感心したことを書き記しておきたい。老舗みすず書房の編集者の、いかにもプロの仕事を感じさせる。
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