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銀閣の人 の商品レビュー

3.6

17件のお客様レビュー

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2024/06/12

応仁の乱、そして戦国時代へと続く混乱の時代を招いた足利義政、日野富子、足利義尚。 偉大なる祖父義満を強烈に意識し、金も将軍としての政治力もない義政は、文化的に中国の強い影響下にある日本にて、日本的な詫びの精神を残そうと苦悩していく。

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2023/12/22
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

主人公は、足利義満の孫、義教の次男に当たる、足利義政。 くじ引き将軍の父親がやらかして殺された後、後継の兄が夭折し、とことん弱体化した幕府を押し付けられた義政。少々奮闘してもどうにもならず、政務を投げ出したくなったのは分かる。分かるけど、女房に丸投げして道楽三昧って、一家の主としてもどうよ…。富子、気の毒。っつーか偉い。 銭ゲバ富子は色んな作品で散見するが、義政との息子・義尚の酒豪っぷりは半端ない。"酒みずく"って言葉、初めて知った。 ま、これだけ読んだら銀閣の実物、いつかは見に行かなきゃね。

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2023/06/13

最終章の「銀閣の人」、圧巻。 銀閣寺の東求堂同仁斎の畳敷き、襖、戸障子、違い棚、書院…というという書院造りの様式自体が、茶室や居間として小変化を経ながら受け継がれ、今の和室に繋がっている。便利だから。日本中の人が和室を使ってる、いわば「銀閣の人」になった。 その意味で義政は、後...

最終章の「銀閣の人」、圧巻。 銀閣寺の東求堂同仁斎の畳敷き、襖、戸障子、違い棚、書院…というという書院造りの様式自体が、茶室や居間として小変化を経ながら受け継がれ、今の和室に繋がっている。便利だから。日本中の人が和室を使ってる、いわば「銀閣の人」になった。 その意味で義政は、後世を支配し歴史に名を残した。 足利義政は、同仁斎を作ることによって、普遍・典型・至純を示したことになる。和室を見ても、銀閣だね!とは思わない、当たり前になったから。 同仁斎を作るに当たっての思想についてはここには書かないけど、もう一回読みたいと思う。侘びは孤独、さびは時の移り。 奥さんの日野富子悲しいなぁ。

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2023/03/05
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

室町時代は他の時代に比べてわかりにくい気がするのは私だけであろうか。戦国時代ということでくくれば、いろいろと作品があって読み慣れているのだが、たいていは東北や北陸、東海を舞台にした「京都」を目指す戦いが描かれている。京都そのものは足利将軍家の足腰が脆弱になっているせいか、数え切れぬほどの人名が飛び交う。関係も複雑で、誰が誰なのかわからなくなり、私の場合、いつも途中で投げ出したくなる。この作品は、わかりにくさの始まりの応仁の乱のきかけともなった足利義政が建立した銀閣寺にまつわるお話にしぼられている。

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2023/01/15

銀閣を建てた足利義政を描く歴史小説。義政は応仁の乱で指導力を発揮できなかった無能無気力な人物とのイメージがある。本書は文化面で名を成そうとした人物と描く。 この時代までは床は板敷であり、畳は座布団のように座る人の場所にピンポイントで置いていた。座布団のように使わない時は引っ込め...

銀閣を建てた足利義政を描く歴史小説。義政は応仁の乱で指導力を発揮できなかった無能無気力な人物とのイメージがある。本書は文化面で名を成そうとした人物と描く。 この時代までは床は板敷であり、畳は座布団のように座る人の場所にピンポイントで置いていた。座布団のように使わない時は引っ込めておくものであった。「たたみ」の語源も「たたむ」に由来する。古代の「たたみ」は布のようにペラペラしたもので、文字通り「たたむ」ものであった。この時代になると畳は分厚くなり、物理的に「たたむ」ことはできなくなったが、使わない時は重ねてしまっておくものであった。 畳が厚くなると出したりしまったりすることは面倒である。板の上に立ったり座ったりするよりも常時畳の上で立ったり座ったりする方が快適である。このために非公式な部屋では畳を敷いたままにする形も登場した。しかし、それは一人暮らしの大学生の部屋で布団を敷いたままにするような、みっともないものであり、公式な部屋では畳は必要に応じて敷くものであった。この常識を義政は変えようとした。 畳を常時敷くことは快適さを追求するものである。この快適さの追及を守旧派は批判する。それを義政は「悪しき精神論」と反論する。「がまんを美徳とする思想は、世のすすみを滞らせ、人心をどろりと曇らせる。人の上に立つ者こそ、振りかざすべきものではない」(84頁)。 この議論は現代の利便性追求の改革にも重なる。たとえばテレワークは通勤を不要にし、勤務地の制約をなくすという利便性が大きいが、否定的な見解がある。否定論者には我慢を美徳とする悪しき精神論があるだろう。そのような精神論は人の上に立つ者こそ振りかざすものではない。 この悪しき精神論は21世紀では昭和の精神論と批判されることが多い。単に古い時代と言う意味で昭和という言葉を使用しているのではなく、昭和という時代に特有の精神論である。昭和以前の時代からも悪しき精神論になる。 義政は金箔を貼る金閣に対抗する文化的価値として「わび」を見出す。これを自由から導き出していることは興味深い。「人の自由のうち究極のものは、人からの自由にほかならぬ。その自由の価値をつきつめた境地にある人類普遍の価値こそが、「わび、じゃ」」(137頁)。この発想は近代的である。自由の本質を「人からの自由」とする点は本質を突いている。自由は好きなことをすることであるが、本質は他人に強制されないことである。

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2022/05/05
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足利義政 政治的には 無能の 将軍。 文化的には すごいことを やった人。 そんな 印象でした。 この本は その義政を主人公にしたもの。 意外と面白かったです。 この作者の作品は ちょっと 癖があり。 いままで 何度か 挫折しましたが。 今回は 最初を我慢して なんとか 最期まで 読めました。 けっこう 楽しかったです。

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2022/02/26

足利義政が銀閣を建てる時の話。個人的に、金ピカで主張が激しい金閣よりも落ち着いている銀閣の方が美しいと思っていたが、義政の金閣に対しての銀閣の立ち位置や考え方が丁寧に描かれていたと思い、より銀閣が好きになれた。わびとさび、人からの完全な自由としての孤独、足らないことの美しさなど、...

足利義政が銀閣を建てる時の話。個人的に、金ピカで主張が激しい金閣よりも落ち着いている銀閣の方が美しいと思っていたが、義政の金閣に対しての銀閣の立ち位置や考え方が丁寧に描かれていたと思い、より銀閣が好きになれた。わびとさび、人からの完全な自由としての孤独、足らないことの美しさなど、なぜ銀閣があのように建てられているかが分かりやすく表現された物語だと思う。

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2021/12/30

書院造りを作った義政。 全く新しいものは理解されない。価値は後から付いてくる。文脈があればこそ。 小説家の凄みを感じる作品だった。

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2022/03/27

全面金箔張りの金閣と対照的に、銀閣には平凡な和風建築という印象しかなかった。金閣に対抗して銀を張りたかったのがお金が無くて木材のみになってしまったのかと思っていた。 しかしこの作品を読むと銀閣に対する印象やそれを建てた足利義政に対するイメージが変わった。 応仁の乱を描いた多くの...

全面金箔張りの金閣と対照的に、銀閣には平凡な和風建築という印象しかなかった。金閣に対抗して銀を張りたかったのがお金が無くて木材のみになってしまったのかと思っていた。 しかしこの作品を読むと銀閣に対する印象やそれを建てた足利義政に対するイメージが変わった。 応仁の乱を描いた多くの作品では足利義政は権力も権威もない上に優柔不断で弟の義視を始め周囲を振り回した人間として描かれる。 この作品でも義政には政治力はない。妻の富子やその兄・日野勝光、細川勝元などの力に頼るしかない。 しかし義政には他の才があった。それは文化を見る力。いわば『審美眼』。 『文化の力で、政治に勝つ』 この決意を貫くべく、表向きは妻や新たな将軍となった息子の陰に隠れ、後に銀閣と呼ばれることになる慈照寺始め一連の建造物の着工を進めていく。 それまで板張りこそが正式、格式の高い部屋であり必要に応じて薄い畳を必要な箇所に敷くのが当たり前だった。しかし義政はより厚い現在の形の畳を敷き詰める部屋に変えた。 広い部屋を屏風などで間仕切りしていたのを、最初から間取りを考えた設計に変えた。 畳敷きの部屋の一角に、現在の床の間に当たる押板床を設えた。 敢えて四畳半の、狭い部屋を作った。 『権力者がふんだんに金と人をもちいて誇示する』『充足の美』に対する、『不足の美』。 これを『侘び(わび)』という言葉で表現した。 つまり現代に続く誰もが想像する和風建築の原点は義政の頭の中にあった。 『同仁斎(東求堂の一室)が平凡なのではない。世の中すべてが同仁斎になったのだ』 『日本中が銀閣の人になった』 足利将軍としては何の爪痕も残せなかった義政だが、今にいたる和風建築、侘び寂びという文化を作ったという意味では大きな足跡を残した。 歴史小説ではあまりクローズアップされてこなかった銀閣だが、この作品で興味が深まった。 ただ時折作家さん目線の文章が入ってくるのが読みづらかった。もう少しドラマ主体で書いて欲しかったなと思う。 特にこの作品では義政の次の将軍・義尚が義政の子ではなく後土御門天皇の子として描かれている。そのために義政と義尚の関係はずっと悪いし、富子と義政との関係も奇妙な駆け引きが続く。この辺りの物語をもっと読みたかった。 芸術を作り出すのではなくいわばプロデュースする義政と、彼の命で総監督を務める庭師の善阿弥始め様々な文化人や職人が集まるものの、度々資金難で建築が頓挫するところなどももう少し深堀りすれば面白かったのにと残念に思う。 造ったその時ではなく、人が住み手入れをし、時の経過と共に姿が変わることも風情となることが発見される場面は良かった。 数々の戦乱戦火を乗り越えて今もこの建物がその場所にあることも、義政の強かな作戦があってのことだった。こういう考えや実行力を政治に活かせなかったのかとも思うが、そこまで求めるのは酷か。

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2021/04/13
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※このレビューにはネタバレを含みます

政治ではてっぺん取れなかったけど、文化でてっぺん取ってやるぞと奮闘した足利義政の物語。 主軸は銀閣を造る話だけど、妻の日野富子や息子の足利義尚との愛憎も描かれている。

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