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重力と恩寵 新装版 の商品レビュー

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2022/06/30
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アフォリズムで書かれていて難解であんまり理解できなかった。前に読んだ「神を待ちのぞむ」のほうが分かりやすかったな。ヴェーユはグノーシス的思想やカタリ派に傾倒したというが、人間の一部は神から来たもので自分を破壊することによって神へと還るべきだとか、慰めのない苦しみを純粋に受け入れることによって神に近づくなどの内容は確かにその影響が如実に見て取れる。彼女の純粋さと妥協を一切許さないこだわりの強さからすると当然行き着くべきところに行き着いているという感じだが、異端的なのは隠しようもない(洗礼も受けていないのに異端もないと思うが)。日本人的感覚からするとだから何?と思ってしまうが、やはりキリスト教社会ではそこはセンシティブな部分なのか、前の本でもそうだったが解説で必死に擁護されているのがちょっと面白い。 「『世界にはなんの値うちもない。この人生にはなんの値うちもない』といいながら、その証拠に悪をもちだすのは無意味なことである。なぜなら、もしなんの値うちもなければ、悪はいったいそこからなにを奪うというのだろう?」 ヴェーユは社会機能の一部には価値を認め、厭世的な立場はとらないで実際の過酷な工場労働に身を投じたり政治的活動にも熱心に携わった。ほんとうの善を求めて理論的には様々なものを徹底して切り捨て続けたが、現実の苦しみから目をそらさず、そのただ中にこそ神を見るという強さはものすごいと思った。結局彼女のからだがその過酷さに耐えられず、あまりに早く(私と同い年!)亡くなってしまうんだけど…。

Posted byブクログ