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村上水軍 の商品レビュー

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2024/11/01
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 法曹界に長らく籍をおいた著者の明晰な分析による村上水軍にまつわる歴史、解説本。  副題にある「経営哲学」のどこまで本書がたどり着けたか。  村上水軍を「武装した海運業者」と定義し、軍ではなく海運業者としての経営思想が今も生きるとした締めくくりは面白い。水軍、海賊に抱く、海を自由に行きかう、アウトローながらも組織として統率がとれていたという結論かと思ったが、そこは少し違った。  歴史をじっくりと追い、その変遷をたどる。  瀬戸内海の海運の活性化の機を捉え、越智玉澄とやらが大宝律令(701)による租庸調、いわゆる納税運搬の足として「武装した海運業者としての水軍を興した」のが興りと記す。。  また当時は、大陸の勢力に対抗する意味で、大宝律令も「国防態勢の整備を主要な内容とする」ため、「軍」としての性格も帯びたようだ。730年ごろ成立の河野水軍は、奈良時代にはいり荘園制の発展で海運が活発し、そのビジネスモデルを継承し、1070年ごろに村上水軍は誕生したと説く。  河野水軍、村上水軍に続き、忽那(くつな)水軍が1180年代に成立、一方、村上水軍は1377年に因島を戦い取り勢力を拡大、時の当主村上師清(もろきよ)が息子たちに能島、因島、来島をそれぞれ継がせ、三島村上水軍が誕生した。1390年ごろのこと。  その後、秀吉による通関銭の徴収の禁止後は、造船・操船の技術集団に転じ、天下泰平の江戸時代を迎え、海運(廻船)業を主な生業とし「軍」としてではなく、別の形で繁栄を誇った。 この変わり身の速さ、時代を読む先見性が、村上水軍の経営思想ということだろう。  冒頭、日本はギリシャに次いで世界2位の船主国であることが紹介される。  また、今治地区は 「日本の保有外航船舶の30%がここで保有されており、日本で建造される船舶の17%がここで建造されている。」そうだ。 「村上水軍の末裔」であることを誇りに、独自の文化と繁栄を維持する瀬戸内地方の興味を喚起する一冊。

Posted byブクログ