宇宙へ(下) の商品レビュー
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巨大隕石が落下したことによって温暖化が起こり、地球は人類が住めない星になる。 そうなる前に人類は宇宙に移住先を探し、コロニーの建設をしなければいけない。 という背景は、この下巻では随分薄まっていて、ひたすら主人公のエルマが宇宙飛行士を目指す話に終始してしまった。 それというのも、解説によればこれは、エルマを主人公にしたシリーズ物というか、年代記なのだ。 翻訳された作品が少ないのが難だけど、既にエルマが火星に行った作品もあるらしい。 その中でこの作品は、宇宙飛行士を目指す女性として、能力を訓練しつつ、世間の偏見と闘うところに特化したものとなっている。 まず、女性には閉じられていた宇宙飛行士という狭き門。 どんなに飛行機のパイロットとして経験を積んでいても、飛行機とロケットは別物としてその経験は考慮されない。(だとしたら逆に、男性宇宙飛行士は何を考慮されて選ばれたのだろう?Y染色体一択?) 宇宙飛行士の訓練生に選ばれたときも、ロケット開発の広告塔としての役割しか与えられず、訓練はおざなり、でもスタイリストは付く、という状況。 この段階で、黒人やアジア系の女性は軒並み落とされる。 その反面基準に満たなくてもコネがあれば合格できる。(ただし白人) 外的要因と闘うのは当たり前として、エルマには幼いころの経験により、人前に立つというような極度の緊張を強いられると、呼吸困難や嘔吐などの症状が出るという問題を抱えている。 「病気ではないので、病院にかかる必要はない」と頑なに本人が拒むので、とりあえず精神安定剤を服用しながら症状を抑えているが…。 1950年代という時代はそうだったのだろうとはわかるけど、そのような状態で宇宙飛行士を目指すのは余りに危険。 些細な違和が大きな事故を起こす可能性の大きな宇宙飛行で、いくら宇宙飛行士になりたいからって、ちょっと世間に対してフェアじゃないと思う。 エルマはユダヤ人で、その設定の意味が最後にわかる。 ユダヤ人蔑視の発言を受けるエルマ。 差別はここにもあったのだ。 エルマが亡き母に言われ続けた「他人にどう見えるかを考えて行動しなさい」という言葉も、もしかしたらユダヤ的なバックボーンがあるのかもしれない。日本人的でもあるけれど。 母親はもちろんエルマのためを思って言った言葉だけれど、呪いの言葉のようにエルマの言動を封じ込めているのが見ていて辛い。 才能ある女性なのに目立たないように息を殺して生きてきたエルマが、どうしても叶えたかった夢――宇宙飛行士になること。 1950年当時、電子計算機がまだデカいだけのポンコツだったころ、宇宙飛行に関する計算をやってのけたのは「計算機(コンピュータ」と呼ばれた女性たちだった。 この辺は映画『ドリーム』に詳しい。
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下巻は展開がギュンギュン進む分、キャラの掘り下げが甘い感じになってるかな。主人公が、天才であるが故なのか、ちょいちょい感じ悪いのは、わざとなのかキャラ作りをミスっているのか。結構広いシリーズみたいだから、伏線になるのかね。 次は正史を飛び越えて火星まで行っちゃうのか、楽しみ。
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エルマは、国際航空宇宙機構(IAC)所属の計算者としてこのプロジェクトに参画している。まだ、組織は男性優位で、宇宙パイロットは男性だけしか認めていないが、その中で奮闘して、女性の宇宙パイロットを誕生させることを認めさせる。現実に、NASAでは、女性の数学者を計算者として軌道計算な...
エルマは、国際航空宇宙機構(IAC)所属の計算者としてこのプロジェクトに参画している。まだ、組織は男性優位で、宇宙パイロットは男性だけしか認めていないが、その中で奮闘して、女性の宇宙パイロットを誕生させることを認めさせる。現実に、NASAでは、女性の数学者を計算者として軌道計算などの当時のコンピュータではできない計算に当たらせてきた。
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歴史改変SFで面白かったのだが、何度も出てくるおせっせシーンはマジで要らないと思った。別にページ数割いて書かれているわけじゃないけど、こういう話で読みたいわけじゃなぁって。ロケット発射とか気分的に萎えるわ。
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訳者が書いてるけど歴史改変SFでパンチカードパンク?というジャンルらしい。 ハードSFとかファンタジーとかは全くない。 現実的な問題に向き合いながら宇宙を目指していく話だけど、こんなに要素を詰め込みながらも冗長にもならずまとめ上げてるのは結構凄いなと思いました。 個人的には最後め...
訳者が書いてるけど歴史改変SFでパンチカードパンク?というジャンルらしい。 ハードSFとかファンタジーとかは全くない。 現実的な問題に向き合いながら宇宙を目指していく話だけど、こんなに要素を詰め込みながらも冗長にもならずまとめ上げてるのは結構凄いなと思いました。 個人的には最後めちゃくちゃかっこいいなってなってそのままこの感想書いてるので高評価です。
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かなり現実路線的な上巻を読み終わり、「下巻はもっとぶっ飛んでほしいなぁ。火星への植民とか描かれるのかなぁ」と期待するも、下巻の方がもっと現実的。 女性が、有色人種が宇宙飛行士になれるか否か、が、メインテーマになっていく。これって、でかい隕石がぶつかったことと相関薄くないか。。 小...
かなり現実路線的な上巻を読み終わり、「下巻はもっとぶっ飛んでほしいなぁ。火星への植民とか描かれるのかなぁ」と期待するも、下巻の方がもっと現実的。 女性が、有色人種が宇宙飛行士になれるか否か、が、メインテーマになっていく。これって、でかい隕石がぶつかったことと相関薄くないか。。 小説としてはそこそこ面白かったものの、「SF文学賞総なめ」ということへの(私の勝手な)期待値と比すと、拍子抜けな部分は否めない。
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主人公の女性宇宙飛行士に感情移入できないまま、物語は終わった。 自己愛が強く不誠実で好き嫌いが激しい自己中のこんなという印象。 巨大隕石の落下による宇宙移住計画がメインテーマのはずだが、その部分はほとんど書かれていない。 男女差別、人種差別が実際のテーマになっている。 誤訳もいく...
主人公の女性宇宙飛行士に感情移入できないまま、物語は終わった。 自己愛が強く不誠実で好き嫌いが激しい自己中のこんなという印象。 巨大隕石の落下による宇宙移住計画がメインテーマのはずだが、その部分はほとんど書かれていない。 男女差別、人種差別が実際のテーマになっている。 誤訳もいくつかあるようで、ストーリーにのめり込めなかった。
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なるほど~。こういうお話だったのですね。 隕石の墜落から始まるので、パニック小説系のお話かと思ったら、歴史改変ものの女性宇宙飛行士誕生物語でした。 この『宇宙へ』は著者の『レディ・アストロノーツ』の前日譚ということで、これからこのシリーズがどんどん発刊されていくのでしょ。 本...
なるほど~。こういうお話だったのですね。 隕石の墜落から始まるので、パニック小説系のお話かと思ったら、歴史改変ものの女性宇宙飛行士誕生物語でした。 この『宇宙へ』は著者の『レディ・アストロノーツ』の前日譚ということで、これからこのシリーズがどんどん発刊されていくのでしょ。 本書の内容としては非常に興味深かったですね。 1950年代、実際のアポロ計画が終了せずに、もし人間を宇宙へ送る必然性があった場合、宇宙開発はどのように進んでいっただろうかということを史実とできるだけ合わせながらリアルに描いています。 黒人差別や女性蔑視が当たり前だった時代。 このような時代にもし女性たちが真剣に宇宙飛行士を目指していったらどうであったか・・・。 非常に興味をそそられる改変歴史SF物語でした。 ぜひ、当時の女性の権利や意識に興味を持っている方は読んでみると面白いと思います。
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大変面白く読みました。 まぁでもちょっとダンナが理想のダンナすぎるかなぁ…と思ったりもしました。彼だけは欠点なしのパーフェクト夫みたいな感じで違和感。まぁアレで家庭もギスギスしてたら成功するものも成功しないとは思うけど。 いつの時代も先駆者は大変だなぁと読んでいて感じました。面...
大変面白く読みました。 まぁでもちょっとダンナが理想のダンナすぎるかなぁ…と思ったりもしました。彼だけは欠点なしのパーフェクト夫みたいな感じで違和感。まぁアレで家庭もギスギスしてたら成功するものも成功しないとは思うけど。 いつの時代も先駆者は大変だなぁと読んでいて感じました。面白かった。NASAの計算をしていた女性のノンフィクも読んでみたいなと思いましたよ。
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隕石落下から4年が経過し、宇宙開発が一気に進展する中、主人公エルマは「レディ・アストロノート」として子供向けの科学番組に出演し、多くの子ども(特に女の子)に宇宙飛行士になるという夢を与えつつ、自身も女性宇宙飛行士を目指す。 上巻で強調されていた地球環境の激変という背景が薄くなり...
隕石落下から4年が経過し、宇宙開発が一気に進展する中、主人公エルマは「レディ・アストロノート」として子供向けの科学番組に出演し、多くの子ども(特に女の子)に宇宙飛行士になるという夢を与えつつ、自身も女性宇宙飛行士を目指す。 上巻で強調されていた地球環境の激変という背景が薄くなり、宇宙進出に焦点が当てられるため、危機感的なものは感じられなくなるのがちょっと残念。 本作を通じて出てくるテーマである性差別・人種差別についてはいろいろと考えさせられる。
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