砂漠が街に入りこんだ日 の商品レビュー
短編集8編 居場所のない人,社会からはみ出てどこかを求めて彷徨っているような,しかも救いのないそんな私.あるいはあなた.どこかに行けるのだろうか?
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新年早々、面白い本を読めて嬉しい。 一文一文が短く、淡々と進んで行く。 その多くが、私はこれを知っていると感じさせる話、描写だった。とてつもない懐かしさを感じた。 雪や埃や汗の煌めきは決して美しいだけのものでなく、どこか寂しさや虚ろな部分がある。 暗いようで白い、乾燥しているイメ...
新年早々、面白い本を読めて嬉しい。 一文一文が短く、淡々と進んで行く。 その多くが、私はこれを知っていると感じさせる話、描写だった。とてつもない懐かしさを感じた。 雪や埃や汗の煌めきは決して美しいだけのものでなく、どこか寂しさや虚ろな部分がある。 暗いようで白い、乾燥しているイメージ。 話は「雪」と「真夏日」が印象的。
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フランスに移住した韓国人作家のフランス語によるデビュー作。いわゆるジャケ買いしたのだけど内容も素晴らしかった。街も人も匿名性が高くて洗練されまくって研ぎ澄まされた文章。と同時に曖昧な話ともいえるので、読んでいて頭をさっと通り過ぎていくような、夢を見ている感覚に近い。いくつかの話...
フランスに移住した韓国人作家のフランス語によるデビュー作。いわゆるジャケ買いしたのだけど内容も素晴らしかった。街も人も匿名性が高くて洗練されまくって研ぎ澄まされた文章。と同時に曖昧な話ともいえるので、読んでいて頭をさっと通り過ぎていくような、夢を見ている感覚に近い。いくつかの話は目が覚めたところから始まっていて夢と現実の境界の曖昧さを主張しているように感じた。 前述した著者の背景を事前に知っていたので舞台はフランスで登場人物は韓国人だろうなと脳で補填して読んだけど、そのことを知らなければどの街、どの人にも通用する、変換可能な物語となっていた。短編に登場する人物が孤独であることも特徴的で、皆がその孤独とどのように折り合いをつけるのか、そこが読みどころだと思う。好きだったのは「家出」「真夏日」「聴覚」。「家出」と「真夏日」はどこかで見た記憶が喚起されて、ノスタルジーが著しく刺激される内容だった。「聴覚」は本著に収められている中でいろんな意味でラウドでパンクで最高だった。全音楽好きは少なからず経験しているだろう、音楽が自分1人のものになる、あのブチ上がる瞬間が描かれていた。それと同時に思わぬ形の沈黙が訪れてさらに物語が飛躍していくダイナミックさがかっこよい。 著者および訳者によるあとがきが充実しておりこの物語が生まれた背景/考察も興味深かった。なによりも驚いたのは本著が韓国ではまだ出版されていないということ。(外側の視点というのを販売形態でもという徹底しているということなのか)別の言語で書くという制約があるからこそ生まれたソリッドな文章を堪能あれ。
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渡仏した著者が母国語ではないフランス語にて創作したことが話題となっている。 母国語では書き得なかったと言うが、その理由はよく分からないとも語る。 しかし描かれる世界は生々しいほど韓国的で、特にセウォル号を想起させる短編など、あの事件が人々に遺した痛みの深さに触れる。 私は日本語で...
渡仏した著者が母国語ではないフランス語にて創作したことが話題となっている。 母国語では書き得なかったと言うが、その理由はよく分からないとも語る。 しかし描かれる世界は生々しいほど韓国的で、特にセウォル号を想起させる短編など、あの事件が人々に遺した痛みの深さに触れる。 私は日本語で受け取ることしかできないのだけど、原語で読むとどんな感じなのかな。 当事者性の距離を意識したのか、因習的なものを捨てたかったのか、あるいは新たな時代の共通言語を求める過程なのか、などといろいろに想像する。 閉塞感にもがく人々の声を救い上げる作品たちで、良いです。すごく好きです。 これからも追い続けたい作家!
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アゴタクリストフや多和田葉子のように、母語ではない言語で執筆された著作で、この著者の場合は、韓国語を母語とする一方、この処女短編集は仏語で書かれたもの。 四方を壁に取り囲まれたような閉塞感と、その外に出てもなおひろがる荒涼とした風景。 息苦しさの先に晴れやかな景色はなく、そん...
アゴタクリストフや多和田葉子のように、母語ではない言語で執筆された著作で、この著者の場合は、韓国語を母語とする一方、この処女短編集は仏語で書かれたもの。 四方を壁に取り囲まれたような閉塞感と、その外に出てもなおひろがる荒涼とした風景。 息苦しさの先に晴れやかな景色はなく、そんな景色からでも越境者は何かを見出だしていく。
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