没入と演劇性 の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
絵画は統一性を持つべきである。なぜなら、美とは観る者を魅了することであり、絵画が統一性を持てば観る者は絵画に表現されるものを包括的に理解でき、絵画の世界に入り込めるから。 「演劇」的な絵画とは、見られることを意識し、劇的な演出を加えられた絵画のことである。これは、絵画が観るものに開かれているために、統一性を損なう。 対して、「没入」的な絵画とは、見られることを意識せず、絵画の登場人物が自らの世界に入り込んでいる絵画のことである。絵画の世界が観るものに対して開かれていないために、絵画は統一性を持つ。 画家は、一方で自らの描く世界に入り込まなければならないが、他方でその絵画が見られることを意識しなければならない。この逆説の彼岸で、絵画が観者に対して閉じたものであることで、観者が絵画に入り込むことができるという、逆説的なテーゼを持ち出している点が、この著作の面白いところだと思う。
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