リベラリズム 失われた歴史と現在 の商品レビュー
「失われた歴史」とタイトルにある。 この本は、リベラルとリベラリズムの通史を描くものではない。むしろ、リベラルとリベラリズムの歴史を語り直す、もしくは歴史のなかにリベラルとリベラリズムを新たに位置づけようと試みる内容である。それが著者の考える失われた歴史である。 上でリベラルと...
「失われた歴史」とタイトルにある。 この本は、リベラルとリベラリズムの通史を描くものではない。むしろ、リベラルとリベラリズムの歴史を語り直す、もしくは歴史のなかにリベラルとリベラリズムを新たに位置づけようと試みる内容である。それが著者の考える失われた歴史である。 上でリベラルとリベラリズムを分けているが、本書でも明確に区別される。かんたんに言えば、前者は古代ローマに祖を持つ価値観や徳性のことであり、後者はそれを政治化する運動である。その始まりを著者はフランス革命としている。 現在、リベラルという言葉は一括りに語れるものではなくなっている。が、本書で紐解かれるように、それはフランス革命の時点から多様な形態を持ち合わせていた。なので、本書はリベラル/リベラリズムとはなにか、という問いに答える類のものではない。 本書のメインはフランス革命から19世紀末までである。タイトルには「現在」とあるが、触れられるのは20世紀以降に関してはごくわずかである。 そして、リベラリズムの歴史を新たに語り直すという野心は、具体的に俎上に上げられるのはフランスとドイツである。 フランスはとにかく、ドイツに関しては疑問に思うひともいるだろう。リベラリズムへのドイツへの影響を強烈なほどに主張したがる著者の欲望の理由はよくわからないが、とにかくドイツを重みづけることに躍起になっている。それなりに説得力もある。ただ、その作業に先はあるのかとも思う。
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リベラルについてこれまでどのような主張がされてきたのかを辿る。伝統的にはリベラルは公共善や道徳を追求する姿勢を重んじ、個人の救済を第一とするカトリックを批判してきた。こうした考え方はイギリスやアメリカといったアングロサクソン帝国において、世界に普遍的に浸透されるべきものと捉えられるようになり、帝国主義を正当化する。ところが全体主義の台頭を経た現代では、アメリカのリベラリズムは全体主義とは違うものであることを明らかにしようとするあまり、個人の利益や権利を擁護すべきだという主張がかえって前面に出るようになった。
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本書の主張する通り、確かに「リベラル」という言葉は安易に使われているのが現状で、定義し直す必要があるだろう。特に日本では、かつては「革新」と称していた勢力がいつの間にか「リベラル」に宗旨替えし、それについて当事者もどの程度自覚があるのか定かではない。このような状態では、確固たる政...
本書の主張する通り、確かに「リベラル」という言葉は安易に使われているのが現状で、定義し直す必要があるだろう。特に日本では、かつては「革新」と称していた勢力がいつの間にか「リベラル」に宗旨替えし、それについて当事者もどの程度自覚があるのか定かではない。このような状態では、確固たる政治勢力として存在感を示すのは無理なのではないか。
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