やまゆり園事件 の商品レビュー
ていねいな取材から浮かび上がってくるのは、植松聖という男の「官僚的な」良心とでも呼ぶべきものだ。「良心の欠如」ではない。植松はフラットな歴史認識や基礎教養に基づいて(なにせ優生思想のことだって知らなかったくらいなのだ)あんな凶行を働いたのだろう。ならば、その「フラットすぎる良心」...
ていねいな取材から浮かび上がってくるのは、植松聖という男の「官僚的な」良心とでも呼ぶべきものだ。「良心の欠如」ではない。植松はフラットな歴史認識や基礎教養に基づいて(なにせ優生思想のことだって知らなかったくらいなのだ)あんな凶行を働いたのだろう。ならば、その「フラットすぎる良心」に関してぼくたちはどう対峙するべきなのか。書評から離れてしまうが、俗流のニーチェ哲学やダーウィニズム以外に植松にどんな哲学・文学が届き得たのか。そんなことを考えさせる。命の重みを訴えるだけではなく、もっと根源的な思想が必要とされる
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★★★ 今月2冊目 かの有名事件。 喋れない障害者は世の中に必要ないと19人殺害、26人負傷させた植松。その動機背景は。 この本後半はだらだらでいらん
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
2016.7.26未明、神奈川県相模原市の「津久井やまゆり園」で入所者19人が殺害され職員2人を含む26人が重軽傷を負わされた、元職員植松聖による事件は記憶に新しい。事件の概要、植松聖という人物について、匿名での裁判のほか、優生思想、障害者(児)の教育や暮らしの問題などについて書かれている。事件後、そして現在でも植松の行為について称賛的な意見が少なくないのは事実。以下本文より(P337) 「当事者は差別されている存在であることを自覚した上で差別に対してもっと声を上げていく必要がある。一方、健全者(健常者)は自らが障害者を差別する存在であることと向き合うべきだ」(p356 ) 「地域に密着した生活ができないから息子を園に入れた。重度の知的障害のある子の親からは地域の『地』の字も出ないと思う」(P360)現状を変えていくには教育のあり方が大きな鍵を握っている
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インクルーシブ教育といいつつ、地域に知的障害者の施設は作らないでと言う。 植松がネット上では正しいと考える人が、とてもとても多くいることが分かる。 自分はどうか、読んでいてずっと自問自答させられ、答えが出ないような気持ちになった。 一つ不満は、入居者、家族への言及はたくさんあった...
インクルーシブ教育といいつつ、地域に知的障害者の施設は作らないでと言う。 植松がネット上では正しいと考える人が、とてもとても多くいることが分かる。 自分はどうか、読んでいてずっと自問自答させられ、答えが出ないような気持ちになった。 一つ不満は、入居者、家族への言及はたくさんあったが 施設従業員への言及は少なかったように思う。介護のブラック労働かつ低賃金を無視して、この問題が進むとは思えない。
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人の尊厳を、 その生産性や効率性といった主観的合理主義からのみ測るのは虚しい。 理屈では語れない愛おしさが、 生命にはあると信じている。
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元ライターです。 膨大な取材量かつ非常にわかりやすい文体。神奈川新聞記者の能力に感動。 植松聖を通して、社会の問題と矛盾を突いた一冊です。 ・「生きる価値なし」と命の選別をした植松は、生きるべきではないと死刑をくだす矛盾。 ・世間では命の価値は平等と謳いながら、出生前判断で染色...
元ライターです。 膨大な取材量かつ非常にわかりやすい文体。神奈川新聞記者の能力に感動。 植松聖を通して、社会の問題と矛盾を突いた一冊です。 ・「生きる価値なし」と命の選別をした植松は、生きるべきではないと死刑をくだす矛盾。 ・世間では命の価値は平等と謳いながら、出生前判断で染色体異常が見つかると9割は中絶する矛盾。 ・障害がある人にとって必要な支援が受けやすいようにする特別支援学校が、健常者と障害者の分断を促進しているというジレンマ。 「どうして優生思想に傾倒していったのか」を裁判で掘り下げなかったことは、第二の加害者を生む問題に繋がりかねない。 我が心にもいる小さな「植松聖」と向き合わなければ、差別や偏見の呪縛から抜け出せないだろう。
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各章立てを一人、あるいは数人のチームで取材したもので構成しているためか前半は内容の重複や繰り返しが多く読みにくく感じた。 取材したものをふんだんに盛り込もうとしてこういう構成になったのだろうがもう少し内容を整理した方が良いのではないかと感じた。 後半はこの事件から見える社会の障...
各章立てを一人、あるいは数人のチームで取材したもので構成しているためか前半は内容の重複や繰り返しが多く読みにくく感じた。 取材したものをふんだんに盛り込もうとしてこういう構成になったのだろうがもう少し内容を整理した方が良いのではないかと感じた。 後半はこの事件から見える社会の障害者に対する問題について前半よりは内容の深まりを感じた。 終章とまとめは新聞記者らしく前向きに、障害者に対する差別や排除のない社会の実現を目指して取材を続けて行くと言うように締めているが、まとめとしてはそうなるかも思うものの残念ながら実現は難しいと思う。 今のコロナ禍の中で罹患した人たちに対する差別や排除の様相を見てもそれは無理だと考える。 本書にも書かれているが、新出生前診断で障害の可能性のある子どもが生まれる率が高いと診断された妊婦、家族の9割が妊娠中絶を選択するという現実を考えても、今の社会が障害者が社会で「普通に」生きるには困難な現実があると考えている人が大多数であることを示していると思う。 絵に描いた餅という例えがあるが現実はそれ以上に希望が持てない現状だと思う。 この犯人を死刑にしたならば「生きるに値しない命はある」と主張するこの犯人の考えを支持することになる、という視点は死刑制度について考えを深めるきっかけになった。(自分は死刑制度については、そのような考え方で向き合うことではないと思うが) この事件や障害者が社会で「普通に」生きていくということについて、自分には関係のない遠い話だと考える人たちが大多数だと思う。生きづらさを抱えた人たちに対する関心を持つ人が少なすぎるということがそもそもの大きな問題なのではとも思う。 どうしたらそういう世の中を目指せるかの前に、自分ごととして関心をもってもらうことから考えないとならないのでは。 この本を最も読むべき人たちにとってこの本は、残念ながら最も遠い一冊なのだと思う。
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狩猟生活から農耕生活。農業から工業。機械制御、電子制御、AI。進化とともに人は自らが生産しなくてもよくなる。と同時に文化を発展させ心が豊かになる。書籍や絵画では飢えや風雨を凌げないが、遠かった存在の思いが身近に感じられる。人自身が生産しなくてもよいために生産性はある。人には生産性...
狩猟生活から農耕生活。農業から工業。機械制御、電子制御、AI。進化とともに人は自らが生産しなくてもよくなる。と同時に文化を発展させ心が豊かになる。書籍や絵画では飢えや風雨を凌げないが、遠かった存在の思いが身近に感じられる。人自身が生産しなくてもよいために生産性はある。人には生産性は求められない。生産性はデフレで調整され減らされる。莫大なお金がかかるものこそ今の日本に必要なのだ。重度障害者の存在こそ必要なのだ。その思いを身近に感じることで文化も発展する。お金は無限。生産性は人が消費することで向上するもの
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