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日ソ戦争1945年8月 の商品レビュー

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2021/07/10

 日本側の軍記録(防衛省戦史研究所)、ソ連側の軍記録、日本側の回想記や証言なども活用し、1945年8月9日以降の各地の戦闘経過を詳細に検討した一冊。日本側の軍記録は自分たちの「戦果」を誇大に書きがちなので、軍の実態を確認するためには個々の兵士や民間人の手記も不可欠との判断からだろ...

 日本側の軍記録(防衛省戦史研究所)、ソ連側の軍記録、日本側の回想記や証言なども活用し、1945年8月9日以降の各地の戦闘経過を詳細に検討した一冊。日本側の軍記録は自分たちの「戦果」を誇大に書きがちなので、軍の実態を確認するためには個々の兵士や民間人の手記も不可欠との判断からだろう。  満洲では8月15日では戦争が終わっていなかった(日本軍の前線では敵側謀略と退けられていたし、ソ連軍もスターリンの厳命で「戦利品」を確保することに躍起となっていた)ことを明らかにしており、興味深い。具体的に取り上げられたのはムーリン、虎頭、孫呉、ハイラルの各要塞戦と満州中央部の戦闘、北朝鮮侵攻作戦。敗戦後のシベリア移送についてもデータを踏まえた検討がなされている。

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2021/06/25

1945年8月9日から始まる日本とソ連の間で行われた戦争を取り上げる。本書は日ソ両者の資料と日本軍兵士の回想から戦闘経過を丁寧に追っていく。日本史の教科書では1文で済ませられてしまうが、日本の降伏や戦後秩序に決定的な影響を与えた同戦争の全体像を示している。 戦闘経過にかなりの文量...

1945年8月9日から始まる日本とソ連の間で行われた戦争を取り上げる。本書は日ソ両者の資料と日本軍兵士の回想から戦闘経過を丁寧に追っていく。日本史の教科書では1文で済ませられてしまうが、日本の降伏や戦後秩序に決定的な影響を与えた同戦争の全体像を示している。 戦闘経過にかなりの文量を割いており、門外漢からするとイメージが湧きづらく読み進めるのが苦痛な箇所が多かった。ただ、筆者の丁寧な解読によって、日本軍の戦略のなさや人命軽視の思想、ソ連側の勝ち馬に乗ろうとする暴力的な思考や行動、それらの犠牲になる開拓民といった救い難い現実がしっかりと浮き彫りになっている。

Posted byブクログ

2020/09/28

冨田さんはシベリア抑留などの本を書いていて、もともと知っていたが、本書はその冨田さんの宿願でもあった日ソ戦争についての本である。終戦時のソ連軍の侵入は一方的なものと捉えている人が多いかもしれないが、実は、一種の戦争であった。もともと日本軍はすきあらばソ連領内に侵入しようと思ってい...

冨田さんはシベリア抑留などの本を書いていて、もともと知っていたが、本書はその冨田さんの宿願でもあった日ソ戦争についての本である。終戦時のソ連軍の侵入は一方的なものと捉えている人が多いかもしれないが、実は、一種の戦争であった。もともと日本軍はすきあらばソ連領内に侵入しようと思っていたが、南方が忙しくなり、本来いた関東軍の兵士や武器の大半を南方に移送してしまった。陣地もかなりソ連領に踏み込んでつくっていたのが、そんなわけで、後方へ引き下がらざるをえず、あわてて、後方へ武器を運び陣地を築こうとしたのだが、それがまにあわぬうちにソ連軍に踏み込まれてしまった。関東軍司令部は居留民を遺棄したと言われるが、実は末端の兵士たいも遺棄したのである。その際、前線にいた関東軍兵士たちは精鋭はすくなかったもののよく戦った。その一つをあげれば、ソ連軍の戦車の下に潜り込むという特攻が当時から取られていたのである。本書ではある戦いで上官が5人の志願兵を募ったが、だれも名乗り出るものがなく、ある兵士などはそれを拒否した。そこで、上官は5人を指名し行かせた話が出ている。行かせられた兵士は生きて帰れる可能性などない。そういうむごいことがここでは行われていたのである。また、ソ連軍は攻め込んだ街で収奪と暴行、強姦をくりかえした。これを細かく記述したのも本書の特徴である。日本人たちの多くは、その中で集団自殺をしている。また、ソ連の捕虜になり、投降を薦めに行った日本軍兵士を日本軍将校が斬殺したりしている。こうした負の部分はこれまで日ソの記録には出てこなかったものだという。戦闘の記録はやや煩雑な感じもするが、すべて証拠を踏まえたものであることを物語る。労作である。

Posted byブクログ