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アインシュタインの戦争 の商品レビュー

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4件のお客様レビュー

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2021/10/27

副題見ずに勝手に原爆の話だと思ってたら、全く違ってた。 世界大戦の中で相対論なるものが考え出され、認められるまでの、アインシュタインを中心とした科学者達のお話。 現代でも国別の論文数がどうのとニュースになるけど、国の威信が叫ばれる時代、しかも戦争中に、国際協力で研究を続けること...

副題見ずに勝手に原爆の話だと思ってたら、全く違ってた。 世界大戦の中で相対論なるものが考え出され、認められるまでの、アインシュタインを中心とした科学者達のお話。 現代でも国別の論文数がどうのとニュースになるけど、国の威信が叫ばれる時代、しかも戦争中に、国際協力で研究を続けることの困難さといったらないだろうなと。 ローレンツ、エディントン、ボッシュ、プランクと名前は知ってる科学者たちがいっぱい出てきて、オールスター感あった。 科学と政治が結びつかざるを得なかった時代だからこそ、トップ層の科学者は分野は異なっても協力/反発関係があったようで。 なお、相対論の理解は進んだようで進みませんでした。

Posted byブクログ

2021/05/10

相対性理論を検証するために、第一次世界大戦でドイツの敵だったイギリスの科学者たちが中心になって活動した記録だ.重力によって光が曲がるという現象を日食の際に観測することを企画したエディントンの奮闘が素晴らしい.1919年5月29日の皆既日食をアフリカとブラジルで観測している.当時イ...

相対性理論を検証するために、第一次世界大戦でドイツの敵だったイギリスの科学者たちが中心になって活動した記録だ.重力によって光が曲がるという現象を日食の際に観測することを企画したエディントンの奮闘が素晴らしい.1919年5月29日の皆既日食をアフリカとブラジルで観測している.当時イギリスではクエーカー教徒は良心的兵役拒否を認められていた由.クエーカー教徒のエディントンが担当職務も合わせて兵役を回避できたことが、相対性理論が注目される大きな要因だと感じた.また、スペイン風邪で戦争が早く終わったことも幸運だったようだ.

Posted byブクログ

2021/04/19
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

 テンソルは複雑な数学的存在で、アインシュタインにとって欠かせない性質を持っていた。その性質とは、どんなに奇妙な運動をしている観測者にとっても必ず等しい値になるというものだ。「一般共変」と呼ばれるこの性質は、特殊相対論の第一の仮定、すなわち、慣性系にいるどの観測者にとっても物理法則は同じであるという仮定を、さらに突き詰めたものにほかならない。特権的な慣性座標系は存在しないというだけでなく、そもそも特権的な観測者自体が存在しないというのが、一般共変という言葉の意味だ。テンソルで表現されるものは、すべての人にとって不変である。一般共変性は、支店や個人の違いといった落とし穴に惑わされない、真に普遍的な物理を与えるのだ。(pp.99-100)  孤立は諸刃の剣だった。アインシュタインは、世間と縁を切れば狂気を無視して研究に集中できるだろうと思い込んでいた。しかし同僚たちが国旗のもとに集結するにつれて、孤立は災いとなりかねないことに気づいた。科学は帝国と一体であると公言するハーバーやプランクと、科学に関する問題をどうやって話し合えばいいというのかプロイセンアカデミーが軍国主義の罠にはまるという可能性も、思いがけず現実味を帯びてきた。(p.154)  エディントンはその日食観測遠征を、いわば平和主義の生命ととらえていた。つまり、平和主義と国際主義が愛国主義と戦争よりも優れていることを、科学界に示す手段であるということだ。そのため、エディントンにとって日食観測は、ある意味で良心的兵役拒否と同等な行動だった。エディントンにとって重要なのは、相対論の研究とともも平和主義を表明することだった。それは「良心」の問題、エディントンが神との関係を守ることだったのだ。(p.335)  国家の和解と人類の恒久的な同胞愛にもっとも大きく寄与するものは、私の見解では、科学や芸術の創造物の中に含まれている。なぜならそれらは、利己的な性格を帯びた個人的もしくは国家的な目標よりも高いところに人間の心を引き上げてくれるからだ。・・・知識人は、人類のもっとも美しい財宝である国際主義を重視することをけっして厭うべきではない。そして知識人の団体はけっして、公的宣言などの示威によって政治的激情を煽り立てて品位を落とすべきではない。(p.427)  ポパーは、アインシュタインの「学問上の謙遜ぶり」、つまり、相対論を反証するための条件を示していることだった。重力赤方偏移が存在していなければ、相対論は間違っている。光のずれがそんざいしていなければ、相対論は間違っている。「これが私の予測だから、ぜひ確かめてほしい」と訴える大胆さと、「私の理論は暫定的なものにすぎず、いつでも間違いが証明される可能性がある」と認める控えめさとの組み合わせに、ポパーはとてつもなく強い印象を受けたのだ。(p.442)  良い理論の証は、単に予測を示すことではない。反証可能な予測を示すことである。科学理論は、それ自体が間違いでありことを証明するための厳密で厳格な検証方法を示さなければならない。重力で光が曲がらないのであれば、相対論は正しくない。(p.443) 理論を究極的に証明することはできないのだから、科学者がおこなうべき研究がなくなることはない。そのようにして徐々に真理に近付いていくのだから、「科学に休む地点はないのだ」とポパーは書いている。(p.444) 科学にはつねに政治的側面が存在していて、戦争はそれを際立たせただけなのだ。科学を政治と無縁のものにしたいと思っても、そううまくはいかない。科学の政治的側面を無視するよりも、それを認めて理解する方が好ましいだろう。(p.458)  科学と、政治や宗教や文化というもっと幅広い世界とのつながりは、けっして取るに足らないものではない。我々が科学についてどのように考えるか、自分たちの生活とどのように結びつけるかが、科学のありようを変える。科学者もそうでない人も含め我々は、科学の取組にどのような価値観と目標を当てはめるかを選ぶ必要がある。アインシュタインはそれを実践したのだ。(p.460)

Posted byブクログ

2020/10/31

読了。今年読んだ本の中では最高に良かった。 タイトルの通り、アルバート・アインシュタインとの戦争との関わりを描いた本で、ここでいう戦争とは第1次世界大戦のことだ。相対性理論を扱っていてその説明も含まれるが、基本的には科学書ではなく歴史物語であって、偉人伝と言っていい(自分は科学者...

読了。今年読んだ本の中では最高に良かった。 タイトルの通り、アルバート・アインシュタインとの戦争との関わりを描いた本で、ここでいう戦争とは第1次世界大戦のことだ。相対性理論を扱っていてその説明も含まれるが、基本的には科学書ではなく歴史物語であって、偉人伝と言っていい(自分は科学者の偉人伝が大好物なので褒め言葉として書いている)。 主役はアインシュタインと、1919年の日食観測を成功させた立役者であるエディントンだ。その日食によって相対性理論がセンセーショナルに証明されたことは(ホーキングの著書などによって)知識として知っていたものの、その詳細な裏話はかなり興味深く読むことができた。 そして第1次世界対戦を扱った歴史書としても読み応えがあり、恥ずかしながら毎日数万人もが命を落とした戦争だったということを全く理解できていなかったことを知った。 アインシュタイン自身の人物像について、マッドサイエンティストのイメージのモデルになってしまっているが、実際には社会主義者で戦争当時に政治的な活動もしていた(あまり実を結ばなかったが)ということも認識を新たにしたのだった。 文章自体も読みやすく、豊富なエピソードを紹介しながらアインシュタイン側とエディントン側を交互に出すなど、読み物としても飽きずに読める最高の読書体験ができて良かった。

Posted byブクログ