歴史学の慰め の商品レビュー
ビザンツ皇帝アレクシオス一世の治世を対象とする歴史書「アレクシアス」を著した、皇女アンナの実像に迫る一冊。その生涯と作品検証を通して、歴史学というもの自体について考えさせられる内容。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
西洋中世の女性歴史家、アンナ・コムニナの生涯と作品を一冊にまとめている。第一部では、彼女の生涯を辿り、第二部ではギリシャ以来の歴史学の伝統、作法を踏まえて、アンナ・コムニナが『アレクシアス』を書いた内容を精細に分析する。 歴史学が男性の学問であるが故に、歴史学の正統を標榜しつつも、歴史学から逸脱し、そして歴史学に名を残すことになったアンナ・コムニナの偉大な業績を知ることができた。 特にアンナ・コムニナの誤謬とされている年号についての誤りを、史料から丹念に辿り、アンナ・コムニナの執筆態度、執筆方針、そしてギリシャ以来の戦法とトルコ人の戦法までも絡めながら、一つ一つ読み解いていくのが、歴史学の奥深さを感じられて面白かった。 いつか、この本を持ってイスタンブールに行ってみたい。
Posted by
予備知識なしでも興味深く楽しめる、しかも専門的な内容だった。ビザンツ帝国の皇女アンナの思い、考え方、歴史学に対する姿勢とそれをどう実践したかが語られる。著書の個人的な思いが含まれるのも、そうとわかって読めるので、むしろ全体を理解しやすくしている。歴史学とは何かを、垣間見ることもで...
予備知識なしでも興味深く楽しめる、しかも専門的な内容だった。ビザンツ帝国の皇女アンナの思い、考え方、歴史学に対する姿勢とそれをどう実践したかが語られる。著書の個人的な思いが含まれるのも、そうとわかって読めるので、むしろ全体を理解しやすくしている。歴史学とは何かを、垣間見ることもできる。「アレクシアス」を通じてアンナという存在が現代のひとりの歴史家に深く理解され、その歴史家により現代の一般読者である私も、アンナという人を知ることができる。
Posted by
皇帝の娘にして西洋古代・中世で唯一の女性歴史家アンナ・コムネナーーその生涯に迫り、彼女の手になる歴史書『アレクシアス』について分析を加え、歴史学の目的や手法について考察する。 彼女は自らの不幸を嘆く。彼女の不幸とは、そして幸福とは? アンナはなぜ歴史書を記すことになったのか? ...
皇帝の娘にして西洋古代・中世で唯一の女性歴史家アンナ・コムネナーーその生涯に迫り、彼女の手になる歴史書『アレクシアス』について分析を加え、歴史学の目的や手法について考察する。 彼女は自らの不幸を嘆く。彼女の不幸とは、そして幸福とは? アンナはなぜ歴史書を記すことになったのか? 彼女は何を遺したかったのか? そのために彼女がとった手法とは? 良くある『アレクシアス』への批判にも緻密な分析が加えられる。 昨冬日本語訳が刊行された『アレクシアス』とともに読みたい内容。そして歴史学とは何かについて考える良質の一冊。
Posted by
- 1