ピーター・パン ヴィジュアル注釈版(上) の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
当時のイラストやバリーや俳優達の写真等、ビジュアル資料が満載。 作者、バリーの他の作品や経歴、「ピーターパン」の考察など、色々載っていて面白い。 昔、読んだ時より、ピーターパンのキャラクターが見えてきて、作品自体も楽しめた。 やっぱり名作。 舞台版では、結末は違うバージョンもあったとか、バリーが小説にする事には消極的だったとか、バリーと養子になった子ども達とその両親との関係性とか、知らないこともたくさんあって興味深く読めた。 バリー自身の人物像にも惹かれる。魅力的。 無垢な人という表現されていることもあり。 アーティストだったんだろうな。 「下」も楽しみ。
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非常に有名な児童文学でありながら、じつは中身があまり知られていないものは驚くほどたくさんある。『不思議の国のアリス』が不条理極まりない世界を描いていることや、『風に乗ってきたメアリー・ポピンズ』の主人公が、つんとしてぶあいそうで怒りっぽいことや、『くまのプーさん』には新参者に対す...
非常に有名な児童文学でありながら、じつは中身があまり知られていないものは驚くほどたくさんある。『不思議の国のアリス』が不条理極まりない世界を描いていることや、『風に乗ってきたメアリー・ポピンズ』の主人公が、つんとしてぶあいそうで怒りっぽいことや、『くまのプーさん』には新参者に対するいじめが描かれていることなどは、おそらく題名だけ知っている人々には驚きであろう。 そのなかでもこの『ピーター・パン』は、もっとも誤解されている、もしくは知られてすらいない物語なのではないか、とわたしはこの『注釈版ピーター・パン』を読んで思っている。ジェイムズ・マシュー・バリーが創作した「ピーター・パンもの」が『小さな白い鳥』の一部から始まり、小説版でも二通り(『ケンジントン公園のピーター・パン』と『ピーター・パンとウェンディ』)あること、戯曲として出版されたが上演版はそのつど違っていたことを知っていたにもかかわらず、読み直すたびに新しい側面に気づかされるというのが、この作品の特徴だ。 おそらくこの本を手に取る人にとって、ピーター・パンのイメージといえば、緑の服に身を包み、羽のついた帽子をかぶって短剣を腰に差して、ティンカー・ベルと空を飛ぶ赤毛の少年であるにちがいない。バリーの創作したピーターが、樹脂と枯れ葉でできた衣服をまとい、まだ生え変わらない乳歯をきりきりとかんで、大人をにらみつける子どもであることは、無視されているか、知られていないか、忘れ去られている。 ピーター・パンが、バリーの死んだ兄の面影を宿していることや、バリーが親しかった少年たちとの遊びの中から生まれてきた存在であること、片方では牧神と子どもとアルカディアの世界の裏に、ディオニソス的な混沌と狂乱と死のイメージを秘めていることが明かされる。また、この奇妙な物語に魅せられた画家たちの筆によって描かれた多様な姿とその変遷を、この分厚い本から知ることができる。 (本書「読者への案内―日本語版序文」より) ピーターパンは緑の服など着ていない。彼の服は枯れ葉だった。大人を憎み乳歯をギギギと鳴らして威嚇する。原作での設定ではこうなっている。わたしたちが知っているピーターパンは、ショーやビジネス、または児童向けに改変されたものかもしれない。この本は作者JMバリーの生涯、私生活、作品、時代背景などが満載されており、ピーターパン研究の決定版といえるのではないだろうか。ただ単に物語だけを楽しみたいのなら児童書版を手に取るべきだ。でもそれは後世に作られたスピンオフのひとつに過ぎない。本当の姿のピーターパンはここにある。
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