相模原障害者殺傷事件 の商品レビュー
その事件は2016年7月26日未明に一人の青年が、津久井やまゆり園に刃物等を所持し侵入して、死亡者19名、重軽傷者26名もの戦後最多の殺傷事件を犯した。青年は、元施設職員の植松聖(30)という。同日午前三時過ぎ、津久井警察に自首し逮捕された。 彼は小学生の頃、一学年下に一人ず...
その事件は2016年7月26日未明に一人の青年が、津久井やまゆり園に刃物等を所持し侵入して、死亡者19名、重軽傷者26名もの戦後最多の殺傷事件を犯した。青年は、元施設職員の植松聖(30)という。同日午前三時過ぎ、津久井警察に自首し逮捕された。 彼は小学生の頃、一学年下に一人ずつ知的障害者がおり、低学年の時には作文に「障害者はいらない」と記述していた。 大学の3・4年生ごろ刺青を入れ大麻など薬物を乱用するようになった。 2016年2月16日、襲撃を示唆する手紙を当時の衆議院議長公邸に提出した。事を重く見た当議長は警察に通報し、身柄を拘束され措置入院をすることになった。 手紙には何を書かれていたのか?要約すると『私は障害者総勢470名を抹殺することが出来ます(中略)保護者の疲れ切った表情、施設で働いている生気の欠けた瞳、日本国と世界の為と思い、居ても立ってもいられずに本日行動に移した次第であります。私の目標は重複障害者の方が家庭の生活、及び社会的活動が極めて困難な場合、保護者の同意を得て安楽死できる世界です。要望―逮捕後の監禁は最長2年までとし、その後は自由に人生を送らせてください。美容整形による一般社会への擬態。金銭的支援5億円。』(意味不明!)通報は適切な対処だと思うが、措置入院から解放された同日、医師の証明書をハローワークに提出し、失業給付を受領し、生活保護受給を申請し給付を受けた。☆ 2020年1月8日に初公判。裁判中の模様や、裁判前に記者が被告と面会し、遺族や被害者の口頭陳述で犯行を非難したが、被告の様子に違和感を覚えていた。 被告が遺族等に対し、謝罪しているが、亡くなった方には、代理弁護士と論争を繰り広げ、被告の論理が破綻しても謝罪には至らず結審した。判決は2020年3月16日死刑宣告、控訴期限は2週間、3月31日死刑確定。 最後に、僕自身の違和感についてー被告人と代理弁護士の論争の争点が被告人の主張と一致していない。本当の争点は、彼等(重複・重度障害者)が人かということ。被告人は、意思疎通が出来ない人は、人間ではないと言っている。
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朝日新聞取材班による被告への取材、裁判での証言、判決までを追ったルポ。このような事件についての書物は、被告の生い立ちの問題などを丁寧に取材するイメージで読み始めたのだが、実際には同じ内容の反復で被告のイメージはどこまでも空虚。事件後、判決を経て最後の接見を行うまでを見ても、どこ...
朝日新聞取材班による被告への取材、裁判での証言、判決までを追ったルポ。このような事件についての書物は、被告の生い立ちの問題などを丁寧に取材するイメージで読み始めたのだが、実際には同じ内容の反復で被告のイメージはどこまでも空虚。事件後、判決を経て最後の接見を行うまでを見ても、どこまでも被告の主張は首尾一貫している。「かっこいい」ことが全てで、今の自分にできる、世の中を良くするための最善の手段が障害者を安楽死させることであると盲信する姿に、もちろん共感はしないし身勝手な印象を持つが、これこそ「悪の凡庸」の典型にも思える。 人物像も事件の動機も、どうにも薄っぺらく凡庸である印象しか持てない。過去に、多くの社会的事件が映画化されていることから考えると、これほどまでに映画化に向かない事件はないかもしれない。しかし、これこそまさに表層に漂う時代の空気を切り取っている事件なのかもしれない、と思った。 情報に簡単にアクセスできる時代には、内面に葛藤がなくとも、自分の信念はいくらでも強化できる、そのような情報のみを取捨選択すれば良いのだから。だからこそ、裁判において事件の背景を丹念に掘り起こしていく作業と時間に耐えられなかったのかもしれない。「自分は社会に問題提起をし、自分の起こした事件が世間を覆う偽善にメスを入れ、自分は一部で英雄視される」という自己愛に満たされて彼は死刑台に立つのかもしれない、と思うと、やはり日本の裁判員裁判というのは、裁判をわかりやすくすることはあっても、その効率化によって裁判から失われたものもあるのかもしれないな、と思ったりもした。 奇しくも、医師による自殺幇助の事件が起きた。相模原事件の被告の偏った価値観は、今や日本の一部の医療関係者の間でも共有されているのかもしれない。立岩真也さんが書いていたように、そのような歪んだ価値観を持つに至るような日本の医療制度・福祉制度のシステムとしての問題点がきちんと提起され、議論される世の中になることを切に願う。
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