治水の名言 の商品レビュー
建設省の現場や研究所に勤めてきたというのはなかなか羨ましい人生だとおもった(冒頭の記述)。 甲府盆地の「できない話は禹之瀬の開削」には考えさせられた。狭窄部は、安易に拡げればいいという訳ではない、河川の全体をシステムとして考えろという象徴的なことば(p25)。 佐賀平野の「石井...
建設省の現場や研究所に勤めてきたというのはなかなか羨ましい人生だとおもった(冒頭の記述)。 甲府盆地の「できない話は禹之瀬の開削」には考えさせられた。狭窄部は、安易に拡げればいいという訳ではない、河川の全体をシステムとして考えろという象徴的なことば(p25)。 佐賀平野の「石井樋かけかえるな、カンスのツル掘りきるな」も、同様に、安易に手を加えるなという印象的な語だ(p31)。 各地の先人たちには治水の偉人がいて、それぞれの地に名言が残っているというのも印象的なこと。治水技術者たるもの、まずその地のそういう先人のことを学ばなければならないと思った。(p42~)。 宮本武之輔は、「(地盤の設計を間違った)岡部三郎個人の責任を追及することにより、今後多くの若者が失敗を恐れて 怯懦(きょうだ)と退嬰(たいえい)の風潮が蔓延することになれば、そのことの方が大敵である」といったと(p57)。このへんのバランス感覚にも技術経営には大事。もちろん青山士の、荒川の治水が「戦艦二艘分の予算で出来る。安いものではないか」もそう(p66)。 ただし、本書を後半に向けて読みすすめると次第に、はたして名言といえるほどのものか?という語句が多くなる。 筆者の思いや感想、なんなら造語にいたるまでが、名言として祭り上げられている箇所の多いこと。 あるいは、単に考え方を筆者がまとめただけのことばさえも、これは名言ではなかろうかと自賛していたり、逆に気に入らない政治家の発言を迷言だと一蹴するのは、なんら技術的でなく主観的、感情的に思える場面も多い。 後半は総じて不要なページではなかったかとさえ思えてしまう。
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